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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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まず、皆様には大変御心配をおかけしました。
しっかり回復し元気になりました。
お気遣い頂きまして本当にありがとうございました!
休んでいる間に沢山のお見舞いのお言葉を頂き、本当に嬉しくそしてありがたく思っております。
頂いたお見舞いのお言葉にレスはいいですよと言って頂く方が多かったので、今回はそのお言葉に甘えさせて頂きます。
本当にありがとうございました!
これからも改めて頑張っていきますので何卒宜しくお願い致します。
小説へのご感想に関しましては改めてお返事させて頂きますのでもう少しお待ち下さいね。


で、今回は題名にもありますように以前書いた【思い出と宝物】の番外編…というか、番外編の番外編といいますか、そんな内容となってます。
これがああなってそうなって行くので、番外編の本編(分かりにくい…)もお待ち頂ければと思います。

それでは、回復第一弾の物語を右下からどうぞ。


 

 


 ここは、蝦夷共和国陸軍奉行大鳥圭介の寝室。
 その部屋の寝台の中から、

「…面目…ない……っ…ごほっごほっ」

 申し訳なさそうな声と共に、苦しそうな咳が聞こえて来る。

「お気になさらず、今はゆっくりと休まれてください」
「ううっ…情けな…ごほっ」
「情けねぇって思ってんだったらさっさと寝ろ」
「土方さん…」

 ぶっきらぼうな土方の物言いに、千鶴が困ったように笑う。
 だが彼の小姓を務めてきた千鶴はよく知っている。
 これは彼なりの優しさだという事。
 蝦夷共和国の高官がこれ以上倒れられては困るからと、本当はここへの立ち入りも大鳥自身が拒否していたが。

「あんたは俺ほど鍛えちゃいねぇんだろうが。自分の限界を見極めるこったな」
「ううっ…ゆぎむらぐ~ん…」
「はぁ…。大鳥さん、土方さんは仕事の事は気にしなくていいから今はゆっくりと休んで身体を治して下さい、そう仰っているんです」

 昼過ぎ、朝から調子の悪かった大鳥が高熱を出して倒れたという報告を受けて落ち着かなかったのだと言うことを、千鶴はちゃんと気付いていた。

「誰もそんなこたぁ言ってねぇだろーが」
「目が、そう仰っています」
「はぁ?」
「目は口ほどにものを言う、と申しますよ?心配なら心配と仰ればよろしいんです」
「なっ…別に俺はっ」
「はいはい、土方さんはもう執務室にお戻り下さい」

 千鶴は素直にならない土方の腕を引き、そして後ろに回ると背中をそっと押した。

「お、おいっ!」
「仕事の方は鉄君にお願いしていますから」
「って、お前も戻れ」
「私は大鳥さんの看病に付きます」
「駄目…だよ…ごほっごほっ………君にうつしでもたら…ごほっ…ひじがだぐんに…ごろざれるぅ~…」

 熱と喉の痛みの所為で見上げてくる大鳥の目は潤んでいた。

「ほら、大鳥さんもそう言ってんだろ」
「私は大丈夫です。元々身体のつくりが強い様で、滅多な事では寝込みません」

 暗に自分は鬼だから怪我や病には強いんだと土方に言っているのだが。

「…仙台で倒れたじゃねぇか」
「あっ、あれは病気ではないです!」
「同じだろ」
「違います!土方さんはお仕事に戻って下さい!」

 彼女を一人の女性として必要としている土方にとっては人間だろうと鬼だろうと全く持って関係のない事柄なのだ。
 
「千鶴」
「病気の方を看病したり怪我した方を手当てしたり、そう言った医療行為は私が出来る数少ない事なんです」
「少ねぇだぁ?お前なぁ俺の小姓としての仕事だけじゃなくこの大鳥さんの書類整理や厨の手伝い、それに最近は榎本さんに頼まれて資料集めなんかもしてるそうじゃねぇか」

 それのどこが少ねぇってんだと睨めば、

「私に出来る事をさせて頂いているだけです」

 そう千鶴は言って、その頬をぷくぅっと膨らませた。

(…痴話喧嘩は他所でやってもらえないかなぁ…なんて言えないよね…)

 二人の様子を寝台に横たわったまま見ていた大鳥はそう思いながら小さく息を吐いた。

「兎に角、土方さんは夕方までに提出しなければならない書類がありましたよね?」
「だからなんだよ」
「必要な文献や資料は鉄君に頼んで捜しに行ってもらってますから、きちんと終わらせて下さい」
「…きちんと終わらせたら褒美でも出んのかよ」

(ああ……土方君がどんどん子供に見えてきた………)

「もうっ!言動が沖田さんになってますよっ!」
「俺は総司みたいに子供じゃねぇっっ!」
「いいえ。同じです。沖田さんも良く仰られてたじゃないですか。お薬飲めたらご褒美頂戴、とか。きちんと寝てたらご褒美頂戴とか、ご飯を食べたら膝枕してとか」
「あれは中身が餓鬼だった総司の我侭だろうが!つか、ちょっと待て。んだよその膝枕ってのは!?」
「い、いいいま土方さんが仰ってる事はそれと同じ事でしょう?」
「こら、流すんじゃねぇよ」
「も、もうもうもうっ土方さんはお仕事に戻って下さい!」
「ちょっ押すなっ」
「はい、お仕事頑張って下さいね」
「千鶴っ」

 千鶴は抵抗する土方を無理やり追い出しドアをきちんと閉めてしまった。

「ふぅっ」

 千鶴が思わず漏らしたため息に、

「仕事が終わったらきっちり話を聞きだすからな、覚悟しとけ」
 
 土方の機嫌の悪そうな声が重なった。

「え!?」
「お・ぼ・え・と・け!」
「えぇ!!」

 慌てて戸を開けて廊下に顔を出しても土方の姿はそこにはなかった。

「……そんな前の事気にしなくてもいいじゃないですかぁ…」

 もう一度溜め息を吐きながら千鶴は再度戸をきっちりと閉めてボソッと呟いた。
 二人の様子を一部始終布団の中から見ていた大鳥が思わず苦笑する。
 その笑う声が聞こえた千鶴は慌てて振り返り、寝台の側へと戻った。

「も、申し訳ありません…私ったら……」

 こほこほっと咳をしながら彼は首を小さく横に振った。

「ほんとに二人は…仲が良いね」
「えと…そう…見えますか?」

 遠慮がちに問う千鶴に大鳥は笑顔でもちろん、と掠れた声で答えてやる。

「…おきた…そうじ…確か……新選組…の」
「はい、一番組組長で…土方さんの大切な…弟の様な方です」
「京…での新選組の…こと、あまり…知らないんだよね…」
「沖田さんには良くから…構って頂きました。時々きつい事を仰ったり冷たい態度をとる方…でしたけれど」

 昔、と言っても数年前の事なのだが、屯所での事を思い出すように千鶴が目を閉じた。

  『妙な事したら斬っちゃうから』

 口は悪かったけれど。

  『土方さんの事は千鶴ちゃん、君に任せたよ』

 近藤や土方、そして共に歩んできた仲間達の事を深く思っていた。

「沖田さんはとても優しい方でした」

 そう言って目を開けた千鶴は、どこか寂しそうに微笑んだ。

(僕が新選組と合流した時には彼はいなかった…という事は…)

「…えっと…んっ、ごほっごほっっ」
「大鳥さんっ」
「だ、だいじょおぶ」

 言いながらもごほごほと咳をする大鳥の姿と、あの頃の沖田の姿が重なる。
 苦しそうに咳き込む姿。
 ただ、大鳥は労咳ではなく風邪なのだ。
 栄養を取ってしっかり休んでいれば元気になる。
 拗らせない限り、命に係わるものではない。

「今はゆっくりと休んで下さい」

 大鳥の首元までしっかりと布団を引き上げて千鶴は静かに言うと、ぽんぽんと布団の上から優しく叩いた。
 子供をあやす様なそれが何だか心地よく感じる。

「後でお薬を持って参ります」
「…薬…嫌い…」
「駄目です。きちんと飲んで頂きます」
「……雪村君の…」
「はい?」
「…君の…お父上も…お医者様だったよね…」
「あ、はい。…も?」
「うん…僕の父も…医者だったんだ……」
「そうなんですか」
「………僕も…医者になると…思ってたんだけど…ごほっ」
「そのお話、お元気になられたらお話しして下さると嬉しいです」
「僕ね…昔から…風邪……引き…やす…く…て………」
「…大鳥さん?」
「薬は…嫌い……だった…けど…」

 大鳥の声が段々と小さくなっていく。
 どうやら眠りかけているようだ。

「母…う…えの…だい……おろ…の……おか…ゆ…………」
「大根おろしの…おかゆ…」

 眠りに就く前に大鳥が漏らした言葉に、思わず目頭が熱くなるのを感じた。

  『おかゆがいい。大根おろし入れた奴』

 食欲が無いと言っていた沖田が、それでも良く口にしてくれた食事。

  『美味しくなかったら食べない。だから頑張って作ってよ?』

 まさかまたそのおかゆを作れる日が来るとは思わなかった。

「頑張ってお作りしますね」

 溢れそうになった涙を手の甲で拭い、千鶴は優しく微笑んだ。

 

 


 大鳥が次に目を覚ましたのは千鶴が丁度おかゆを作り終えた頃だった。
 
「ほら、口開けろ」

 そう言った土方の手には匙が握られており、

「………(おかしいなぁ)………」

 匙に乗ったおかゆは大鳥の口元に差し出されていた。

「さっさと食って薬を飲め」

 ほら、と更に匙が大鳥の口元に近付く。

「……うん」

 土方の押しに負けて大鳥が口を開ければ丁度良い加減に冷えたおかゆが口の中に入ってきた。

「あ、美味しい」
「あったりめぇだろ。千鶴が作った飯が不味いわけがねぇ」

 そう当然の様に言いながら空になった匙にまたおかゆを掬う土方は、大鳥の寝台の端に足を組んで座っている。
 手には千鶴特製のおかゆが入った碗と匙が握られていた。
 もぐもぐとゆっくり口を動かしながら大鳥は不満に思う。

(大体さ、こう、あーんってしてくれるのは女の子の方が良いと思わないのかな…。違う…思ってるからさせないんだ…病人相手にまで心が狭いなぁ…って)

「あ…れ?」
「んだよ」
「これ……大根おろし入ってる」
「大鳥さんがお休みになられる前に、お母様が作って下さったという様な事を仰ってましたから…お母様の味には及びませんが喉を通しやすい物をと思いまして…」
「……(覚えてないや…)………すごく…食べやすいよ…美味しい」
「良かった」
「大根おろしのおかゆ、か…。総司もこれは食ってたな」
「はい」

(あれ…また沖田総司さんの話かな?)

「苦いのは嫌だから葱は入れないでと…よく仰ってました」
「だから餓鬼だって言ってんだ、総司はよ」

(沖田さんの話をすると二人とも寂しそうな顔になるんだよね…でもどこか優しい)

「なんだよ」

 沖田の事を話す土方の顔をいつの間にか凝視していたらしい大鳥に、訝しげに尋ね土方が眉間に皺を寄せる。

「…京にいた頃の新選組に…会ってみたかったなぁって思ったんだよ。…それだけ。ほらほら土方君あーん」
「なに言ってやがんだよ。つか、気持ち悪ぃからあーんとか言うな」
「えー、でもこれってあーんだよね、雪むっごほっごほっ」

 いつもの調子で話し始めた大鳥が咳き込んでしまうと慌てた千鶴が、

「大鳥さんっ」

 土方の反対側から側に寄り背中を擦ってくれる。

「ったく、大丈夫かよ陸軍奉行さんよ」

 そう言いながら土方が白湯を差し出してくれる。

(鬼副長はそれなりに知っているんだけど)

 二人に介抱してもらいながら大鳥は思っていた。

(この二人の馴れ初めって知らないんだよね)

 咳が落ち着き差し出された白湯を飲み干しながら土方の顔をちらりと見る。

(土方君は基本面倒見が良くて優しい…と思う)

 飲み干した湯飲みを千鶴が受け取り、その白い掌が大鳥の額に当てられる。

(雪村君は心が強くて彼女の中にも武士の生き様が見える…と思う)

 ひんやりとした千鶴の手の温度に目を細め、

「僕はね」

 大鳥はゆっくりと息を吸う。

「君達二人に会えて本当に良かったって思うんだ。ありがとう」

 突然の感謝の言葉に土方と千鶴が顔を見合わせる。

「僕は、二人の仲睦まじい姿を見てると安心するよ」
「おい大鳥さん、あんた熱が上がってんじゃねぇか??」
「ふふ、そうなのかな?」
「………千鶴、薬」
「は、はい!」

 千鶴が慌てて薬の準備を始め、土方は手にしていた碗をお盆の上に戻す為に寝台から立ち上がる。

「千鶴これはこっちでいいのか?」
「はい、そこに置いておいて下さい。あ、土方さんお白湯を注いで頂いてもいいですか?」
「おう」

 こちらに背を向けた二人の姿に大鳥は微笑を浮かべる。

(会えて良かったって思うからこそ、もっと早くに出会いたかったんだ)

「大鳥さん、お薬です」
「ん」

 千鶴が薬の乗った匙を口元に差し出すので大鳥は素直に口を開けそれを飲んだ。
 ドロドロとしたその物体はとても苦い。
 思わず顔を顰めると、

「ほら、白湯」

 土方がまた湯飲みを渡してくれる。

「もう二口ですよ」
「……うん」
「薬くらいでしかめっ面してんじゃねぇって」
「だって…苦いんだよ」

 そう言った大鳥に、

「良薬は口に苦し、ですよ」
「我侭言うんなら石田散薬口に突っ込むぞ」
「………土方さん、悪化しちゃいます」
「……………斎藤限定で、良く効くんだよ」
「だったら大鳥さんには効きませんよ。でも…あれが効く斎藤さんって不思議です、ね」
「あれって何だあれって」

(あ、斎藤君は知ってる)

 最後の一掬いを飲み干しその苦さを白湯で流す。

(僕の知らない二人の時間、大切な新選組)

「ん?飲んだな、だったら寝ろ」

 大鳥の背中に当てていた大きな【くっしょん】という物を土方が取り除き、その手を借りてゆっくりと寝台に横になる。

(どれだけ大切な思い出と宝物の様な時間がそこにあるんだろう)

「今夜は就いていますから、ゆっくり休んで下さいね」

 優しい笑顔と共に温かな言葉がかけられる。

(僕もね君達が大切だと思うから…)

「僕も…新選組だったら…土方君にいつも怒られてたのかな」
「はぁ?なぁに言ってんだあんたは」
「土方君は…厳しい言葉の裏で……皆を守ってる」
「大鳥さん。…私も、そう思います」
「だよね。僕も……そうありたい、な」
「人にはそれぞれ役目ってもんがある。誰が何を演じて生きていくかは己自身とその時の時世が決める。あんたは、大鳥さんは大鳥さんのやり方でいいんだよ。俺の真似をする必要はねぇんだ」
「僕は、鬼には向かないか」
「ったりめぇだ」
「ふふ、鬼の様な大鳥さんは想像できませんね」
「…くだらねぇ事言ってねぇで寝ちまえ」
「うん、そうさせてもらう。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさいませ」

 目を閉じれば直ぐに睡魔が襲って来る。
 大分体力が落ちている様だ。

(早く元気にならなくちゃ……)

 大鳥が眠りに就きかけた時、

「お前がここに残るなら俺も残るぞ」
「土方さんはお部屋でお休み下さい」
「あのな、病人とは言えどこいつは男だぞ。男の部屋に女一人残せるか」
「……何を仰ってるんですか」
「俺が…嫌なんだよ。…察しろ」 
「土方さん…はい」
「それから、総司の膝枕の件だが」
「まだ覚えてらしたんですか…」
「ったりめぇだ」

 そんな二人の会話が聞こえて来る。

(いちゃつくのも…他所でやってくれないかなぁ……)

 そう思ったのも束の間、眠りの底へと落ちていった。

 

 


『これは?』
『あのね、ととさまのたいせつなおもいでです』
『へぇ』
『かかさまとちとせはととさまのたからもので、このおきものはたいせつなおもいでで、たからものちがうです』
『ひじ…歳君は幸せなんだねぇ』
『ちとせもしあわせです!しあわせ、いっぱいわらうことってかかさまいってます』
『そっかぁ。じゃあ笑顔の千歳ちゃん見てると僕も幸せだなぁって思うのは素敵な事なんだね』
『はい、すてきです』
『じゃあそんな幸せをくれる千歳ちゃんにアメリカのお土産』
『あめりか?』
『うん。これはね―――――っていうもので』
『きれぇです』
『大鳥さん何だよそれ』
『うわぁ、とても綺麗ですね』
『ととさま、かかさま!』
『歳君と千鶴さんも一緒にどうぞ。これはね―――……』



 

 その夜、高熱に浮かされながら見た夢は、とても暖かな物だったと思う。
 何だかとても現実味のある気がしたのだが、朝起きたら熱が下がったのと共にその記憶もあやふやになり消えてしまった。
 ただ1つだけ鮮明に残っているものがある。

 可愛らしい幼い女の子が笑顔で身に纏う身の丈よりもずっと大きな浅葱色。

 その他は忘れてしまったのに。 
 その笑顔と色だけは消えなかった。


「僕もそれを着てみたかったなぁ」


 呟いてしまうのは
 
 呆れた顔で溜め息を吐かれる事になるのは


 これからまだずっと先の…未来
 

終わり
 

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