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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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お久しぶりでございます。
あ…ああああ…間がかなり空いてしまいました…。
本当に申し訳ないです。
お盆前まではこんな感じかもですが、出来るだけ頑張ります。
お盆にはまとめて更新するかもしれない予定です。
9月に入ればサイト開設1周年が待ってますし…やりたい事はいっぱいあります。
頑張るぞ!!

で、更新は久しぶりの騒動録です。
別宅編も佳境です、多分。
小説は右下からどうぞ。

 

 


 絹の作ってくれた昼餉を食べ終えた後、千鶴と絹の二人はその片付けの為勝手場へ膳を下げていった。
 残された土方と喜助は、千鶴の淹れたお茶を啜りながら縁側に腰を下ろしている。

「千鶴の淹れたお茶は美味しいなぁ」
「あいつの茶ぁが、いつの間にか屯所に定着しちまった」
「なんや、歳三はこんなに美味いお茶を毎日飲んどったんか」

 食事の途中の話の流れで、喜助は土方を歳三と(歳三はんと呼ばれた土方が渋い顔をして呼び捨てて良いと言った為)千鶴を千鶴と(土方を呼び捨てにするのなら私の事もそうして下さいと千鶴が言った為)そして絹は歳はんと千鶴はんと呼ぶ様になってしまった。
 そこに殆ど土方の意見は出ず周りの3人の笑顔の中で決定していった事だった。
 まぁ、嫌ではないから止めもしなかったのだが。

「初めて頼んだ時は…3回目でようやっと茶を淹れてきた」
「3回目?」
「緊張して湯飲みをひっくり返して大変だったんだけどよ、今じゃあいつの茶が一番うめぇ」
「なんや、惚気かいな」
「惚気ねぇ…」

 喜助に言われた言葉を繰り返し、

(惚気るような間柄に千鶴となるたぁなぁ)

 ふっと笑ってしまう。
 それを見た喜助が、

「歳三、思い出し笑いするんは助平な証拠やってゆうで」

 と言えば、

「男ってのは総じてそういう生きもんだろ?」

 土方は飄々とそう言ってのけた。
 
「………こりゃ、千鶴も大変そうや。…あんなええ娘はんを嫁に頂いたんや、悲しませて泣かせたらあかんえ」
「仕事の面じゃあいつに苦労をかけるのは目に見えてる。だから、私生活では悲しませる様な真似はしねぇよ、親父殿」
「それを聞いて安心したで。…歳三、お前散々女遊びで浮名を流しとった口やろ?」
「っっ!んぐっごほごほっっ!」

 突然言われた事に茶を飲みかけていた土方が思い切り咽る。
 何を言うんだとばかりに涙目で喜助を見やれば、

「そやろなぁ」

 と喜助が呆れた様に笑う。

「………今は遊んでねぇよ」
「女遊びが悪いとは言うとらんで。何も知らんまま嫁を貰った方が浮気率は高いらしいしなぁ」
「んだよ、それ」 
「女房以外の女をもし知ってしもうたら深みにはまってしまうんやと。まぁ、皆が皆そうやあらへんやろうがな」
「へぇ」
「どんな女よりも今腕の中におる女が一番や最高やって思えば思うほど、愛しゅうてかなんやろ」
「その言い方だと、親父殿も結構浮名を流してたんだな」
「お絹には内緒やで」
「なら、親父殿も千鶴には内緒にしといてくれよ」

 お互いに顔を見合わせ声を上げて笑う。
 暫くそうやって二人で談笑していたのだが、


「ごめん下さい」


 玄関の方から声が聞こえてきた声に中断された。

「客か?」

 店の者かと玄関の方に喜助が顔を向け立ち上がりかけたが、土方がそれを制する。

「多分うちの隊士だ」

 聞こえてきた声に聞き覚えのあった土方がそう言った。

「なんや仕事か?」
「いや、今日は近藤さん公認の臨時非番なんだが…ちと行って来る」

 立ち上がった土方は喜助をひとり残し玄関のある土間に向かった。
 食事をとっていた部屋から廊下に出て勝手場の隣の部屋へと入る。
 勝手場のある土間に視線を向ければそこには女達の姿はなく、変わりに今朝屯所の副長室で話をした男達が立っていた。

「山崎に島田じゃねぇか」
「突然の訪問お許し下さい、副長」
「我々は局長の命でこちらに伺いました」

 それぞれの手に何やら大きな荷物を抱えている二人が土方に向かい頭を下げた。

「近藤さんの?……嫌な予感しかしねぇんだが。つかなんだよその荷物は」
「副長とご内儀のお荷物です」
「はぁ?」
「局長より副長ご夫妻が本日からこちらに移るのだと伺いました」
「んだよそりゃ、今日は見に来ただけであって移るなんざ一言も言ってねぇぞ」
「ですがご内儀のお荷物は全てこの行李の中に入っておりますし副長のお荷物も屯所で使いそうな物以外この中に入っていると」
「誰が」
「局長と井上組長が仰っておられました」

 そう言って島田が手にしていた行李を軽々と上に上げて見せた。
 呆気に取られていた土方だったが、肺の中の空気を全て吐き出すような溜め息を吐いた後。

 ………突然頭を抱えて屈み込んでしまった。

「ふ、副長!?」

 具合でも悪くなったのではないかと心配する島田の横で山崎が苦笑する。

「申し訳ありません副長。多分こんな事ではなかろうかとは思ってはいたのですが、あまりにも楽しそうに近藤局長と井上組長が準備を始められていたものですからお止めする事が出来ませんでした」
「やーまーざーきーーー」
「俺は一隊士に過ぎません。局長や組長のなさる事に口出しなど出来ませんから」
「…その割には総司の奴には色々と口出ししてるじゃねぇか」
「あれとこれとは別です」
「お前な…」

 新選組一番組組長を【あれ】呼ばわり出来るのは幹部を除いてこの男しかいないだろう。
 生真面目な山崎と不真面目な沖田のそりが合う筈も無い。

「ったく…仕方ねぇな」

 取り敢えず中まで運んでくれるか、と土方が二人に頼もうとした時。

「歳三さーん」

 家の奥から自分を呼ぶ声がしてそちらの方へ視線を向けた。

「どちらですかぁ?」
「千鶴、土間にいるぞ」

 返事をしてやればパタパタという足音と共に千鶴が姿を見せた。

「こちらだったんですね。すみませんが少し手を貸して…山崎さんそれに島田さんも」

 勝手場の片付けが終わった後、おそらくどこかの部屋の掃除でも絹と共に始めていたのかもしれない前掛けを付け手拭を頭に巻いた千鶴の姿に、土方が目を細めた。

「歳三さん?」
「ん…なんでもねぇよ」
「?」
「………そう言った姿は初めてだからよ、新鮮だなってぇ思っただけだ」
「新鮮、ですか」
「色んな姿が見れるってぇのは楽しいもんだな」
「えと…」

 土方の言葉に千鶴は恥ずかしそうに俯くが、直ぐに赤く染めた頬はそのままに顔を上げ見上げてきた。

「私も色々な歳三さんのお姿を拝見できる事を楽しみにしてます」

 にっこり笑ってそう言った千鶴は、文句なしに最強だろう。

「山崎、これは据え膳だろ」
「…そうかもしれませんが、せめて日が暮れるのを待たれた方が良いかと」
「拷問だな」
「お得意の分野でしょう?」
「するのとされるのとでは違うだろうが」
「あ…あの?」

 土方と山崎の間で交わされる、何だか立ち入ってはいけない内容の会話に千鶴は戸惑い、正面にいる島田を見た。

「お気になさらくて良い事ですよ」
「そうなんですか…。あ、あのお二人は何かご用事…なんです?そのお荷物」
「俺たちの荷物だと」
「はい?」

 島田が手に持ったままの行李を見た千鶴が首を傾げると、山崎との話は終わったのか土方がそう言った。

「だからな、近藤さんや源さんが俺達の荷物をまとめて二人に運ばせたって事だ」
「………ええ!?」
「どうもあの二人は俺達を屯所から早く追い出したいらしいな」
「………」
「副長、その様な事は」

 慌てて島田が屯所の二人を庇おうとしたのだが、

「分かってるよ、あの二人が誰よりも祝福してくれてるってぇ事はよ。でもな、ちっとぐれぇ愚痴りたくもなるんだ。それぐらい許せ、そして聞き流しとけ」

 苦笑しながら土方がそう言った。

「ご内儀のお荷物は井上組長がお一人で纏めておいででした。風呂敷などに包んでいる物はそのまま行李に移している。決して開いたりはしていないからと伝えて欲しいと仰っていらっしゃいました」

 島田から伝えられた井上の言葉に、彼の気遣いを心から嬉しく感じた千鶴は胸の上を両手で押さえる様にして土方を見上げた。

「近いうちに井上さん、それにもちろん近藤さん達もこちらでおもてなしをしたいです」
「お前の手料理でもてなしゃ皆喜ぶさ」
「お母さんに沢山お料理を教えて頂きませんといけませんね」
「ま、そ言う事だからよ、千鶴」
「はい」
「親父殿とお袋殿からの了承はもう得ている事だし、今日からここで二人だ」
「あ…は、はい」
「屯所を出て、夫婦としてここで二人で暮らすぞ。……いいな?」
「はいっ」

 瞳に涙を浮かべながら千鶴が嬉しそうに、幸せそうに返事をする姿を見て土方も微笑む。
 そんな二人を見ながら、

(沖田さんや永倉さん、藤堂さんがここにいなくて良かった。何だかんだと難癖をつけたりああだこうだと文句を言っていたに違いないからな)
(副長の穏やかな笑顔はきっと彼女の前でのみ見せられるのでしょうね。本当に良かった)

 良かったと思う点が違いながらも、2人とも胸を撫で下ろしていた。

「そういや千鶴、お前俺に何か用事があったんじゃねぇのか?手ぇ貸して欲しいって言ってなかったか?」

 千鶴がここに来た時の事をふと思い出し尋ねると、千鶴はああっと口元を押さえしまったとばかりに家の奥の方を見た。

「どうした」
「あの、奥で、納戸でお母さんとお掃除をしていたんですけど」
「けど?」
「お父さんが先程いらして、何か上の方の物を下ろそうとなさっていたんです。それが結構重そうな物でしたからお父さんが無理をなさる前に歳三さんにお手伝いをと。それで私っ」
「納戸…一番奥だったな。あー悪ぃ荷物は千鶴に聞いてどこか適当な部屋まで運んでくれ。俺はちと行ってくる」
 
 ポンと千鶴の頭に手を置いてそう言うと土方は小走りに奥の方へと行ってしまった。

「ご内儀」
「え?…あ、え…あ、は、はいっ」
「この荷物はどちらにお運びしましょうか?」
「あ、あの…ご内儀だなんて…その今まで通りでも」
「貴方は我々が尊敬する新選組副長の奥方様です。お名をお呼びする事は憚られます」
「そういう…ものですか?」
「大丈夫ですよ、直ぐに慣れます」
「はぁ」
「ではご内儀」
「は…い」
「お荷物を運ばせて頂きますので、お部屋を指示して頂いても宜しいですか?」
「では…えっと……こちらにお願いします」

 戸惑いながらも千鶴が先頭を歩き、大きな箪笥があった部屋の方へと案内する。
 彼女の後ろを付いて行きながら、先程の副長夫妻の会話の中に気になる名称があった事を思い出し、山崎が口を開いた。

「そういえば」
「はい?」
「お父さん、お母さんとは?副長も親父殿、お袋殿と仰っておいででしたが」
「こちらのお屋敷をお譲り下さった泉屋のご夫妻の事です。お二人が京にいらっしゃる間はそう呼ばせて頂けるようになりました」
「それで副長も」
「はい。私達にとっての京の両親になって頂いたというか…。私、母を早くに亡くしていますから、その、お母さんにお料理とかお掃除の仕方とか他にも色々教えて頂こうと思いまして」
「そうですか」
「はい。あ、こちらのお部屋にお願いします」

 千鶴が案内したその部屋には大きな箪笥がいくつか並べられていた。

「立派な物ですね」
「お母さんのお嫁入り道具なのだそうです。でも江戸には持っていけないので良かったら使って欲しいとお譲り頂いたんですよ。他にも色々な家具とかお布団とか本当に沢山」
「でしたら本当に今日からこちらに住まわれても問題ないのですね」
「近藤さんは昨日こちらにいらしてますし…きっと全てをご存知なのだと思います」
「局長らしい」
「はい」

 部屋の隅に荷物を下ろしてもらい、千鶴がありがとうございましたと頭を下げているところへ何かを手に持った土方が姿を見せた。

「悪かったな二人とも」
「いいえこれしき。…それは、碁盤ですか?」

 土方が手にしている物を見て島田が言う。

「ああ、親父殿はこれを下ろしたかったらしい。ったく無茶をする」

 溜め息混じりにそう言えば、土方の後ろから来ていた喜助が顔を出し眉間に皺を寄せる。

「無茶やあらへんやろ、私やってこれくらいまだまだ」
「年を考えろ」
「…歳三、ほんまに遠慮が無くなってきおったな」
「親父殿がそうしろっつったんだろうが。あんな高い所にある重いもんを下ろして腰に来たらどうする。春先に江戸へ発てなくなるぜ」
「そんなへまはせぇへん」
「親父殿…」
「お父さん、歳三さんはただ本当にお父さんの事を心配なさっているだけです。折角若い男手があるのですから、お願いなさった方が良いと思いますよ?」
「あなたのまけやよ。千鶴はんまで困らせたらあかんえ」
「お母さん」
「お袋殿、それは俺は困らせても構わねぇってことか?」

 喜助の後から姿を見せた絹が土方の言葉に微笑む。

「歳はんは新選組をまとめとるお人やもの。うちの人くらい上手に動かさはるやろ」
「確かに新選組は曲者の集まりの様な組織ですからね」

 小さく頷いたのは山崎だ。
 その横では島田が苦笑している。

「新選組の方?」
「ん、ああ。こいつ等は俺直属の部隊の隊士で髪の長い方が山崎、大きい方が島田。ちょくちょくここに出入りする可能性がある二人だ」
「山崎と申します」
「島田です」
「泉屋の主の喜助や。これは私の妻の絹。京に居る間は私等もここに顔を出させてもらうさかい、よろしゅうな」

 喜助達が頭を下げるのに合わせ山崎と島田も頭を下げる。

「二人は歳三に仕事を持ってきたんか?」
「…俺達の荷物を持ってきた」
「なんや、そやったら今日からここに住んでくれるんやな?」
「そうさせてもらう」
「家は人が住まんと朽ちて行くだけやさかいなぁ。そやったら千鶴はん、寝室やら湯殿やら、そうそう。お勝手場の横の部屋の囲炉裏も使えた方がええやろうし。あちこち掃除せなあかんから頑張ろな」
「はい、お母さん」

 張り切る絹と共に千鶴は男達に頭を下げて部屋を後にした。

「そかそか。そやったら今日は私等も日が傾く前にはお暇せんとな」

 そう言った喜助に臀部を叩かれ、土方が怪訝な顔をする。

「何が言いたいんだよ、親父殿」
「今夜はこっちに移って初めての夜やろ?」
「そうなるな」
「屯所じゃあ手ぇ出せへんやったろ?」
「手…ああ、そうか…」
「今夜は初夜や。二人で仲良うきばりや」

 喜助の言葉に山崎と島田は顔を見合わせ、頷きあう。

「副長」
「んあ?」

 懐に手を入れ、山崎が一通の書状を取り出す。

「お二人が出られた後に所司代より届けられた物です。局長が副長に渡して欲しいと」
「ああ、分かった」

 土方が書状を受け取ると、監察方の二人は揃って頭を下げた。

「では我等はこれで」
「忙しいのに悪かったな」
「いえ。失礼します」

 土方に頭を下げた後、喜助にも一礼をして二人は屋敷を後にした。

「二人ともええ顔をしとった。歳三は部下に恵まれとるな」
「日頃から身に沁みて分かってるさ」

 喜助の言葉に土方は誇らしげに笑った。

 


続く

 

 

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