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花鏡想慕3話目です。
昨日は更新できず申し訳ありません。
御盆参りに親戚の家に行ってました。
で、やはりお盆の間には終わりませんでしたので、もう少しこののまま続けさせて頂きます。

そ・し・て!!
300,000HIT!
本当に、本当にありがとうございます!!

これからも薄桜鬼に萌え続けていきますのでお付き合い下さると嬉しいです。
お礼はまた何かの形で。
…まず10万HIT御礼を消化します。

ヒンヤリ話が、ちょっと方向性を間違い妖怪話になりつつありますが。
そんな物語は右下からどうぞ。

 

 


「やっと、見付けたんだよ。…特別な一族の娘」

 朽ちかけた拝殿の中から声がする。

「何度もいろんな人間の血を使ってきたのに、君は蘇らない…でも…あれの血だったら…しかも生き胆だったら」

 その声音はどこかうっとりとしている様にも聞こえる。

「斉藤という男がここに来たのは運命だったんだよ。君に与えるべき物を、そいつが教えてくれた」

 闇の中に響く笑い声は本当に楽しそうだ。

 

「もう直ぐだよ、もう直ぐ…逢える」

 

 

 左利きの沖田が消えた後、土方達は一先ず畳の広間に戻った。
 後から駆けつけてきた近藤と井上もそれに加わっている。

「最初にあいつを見た時は、一君の姿だったんです」

 そんな中で、小さな溜め息と共に沖田が語り始めた。


 千鶴が土方の部屋でお茶を持って来過ぎだと呆れられていた頃。
 喉が渇いた沖田は勝手場にある水瓶の側にいた。
 きちんと湯飲みに移してから飲めとよく注意をされてはいるのだが、面倒でもあるし、今は誰も見ていない。
 瓶の中から柄杓で水を掬いそのままその柄杓で喉を潤す。

 カタン

 ふいに近くから聞こえた物音に、柄杓から口を離し沖田は顔を上げた。
 物音がするまで気付かなかった事に驚きながらも、完璧に気配を消せる人物ならそれもありかもしれないと思いつつ勝手場から廊下に顔を出してみる。
 そこにあった姿はやはり沖田が予想していた人物だった。
 彼ならば沖田が気付かないほど完璧に気配を消せるだろう……悔しいが。 
 ただ彼はこちらに背を向けており、

「何してるの?」

 声をかけても振り返ろうとしない。

(屯所で気配を消す必要なんてあるのかな?千鶴ちゃんを驚かすわけでもない…のに…?)

 千鶴が聞いていれば『絶対止めて下さい』と半泣きで訴えそうな事を考えながらも違和感に気付いた沖田は、左手で鯉口を切り背後に忍び寄る。

「君、何してるの?一君の真似して何か得する事でもあるなら教えて欲しいなっ」

 瞬時に刀を抜き放ちそのまま斬りかかるが、その男はゆらりとその攻撃をかわしてしまう。

「真似するんだっから完璧にしなよ?一君の左差しなんて気持ち悪い」

 即座に次の攻撃に入り今度こそ捉えたと思ったのだが、やはりその切っ先はその者には届かなかった。
 しかし、攻撃を避けた際に、正面がこちらを向いた。
 屯所に入り込む為かもしれないとはいえ、新選組の幹部である組長のふりをするなど、あまりにも短絡的で馬鹿馬鹿しすぎる。
 だが、そのある意味勇気ある行動をした人物の顔を拝んでやろうと、睨みつけたのだが。

「は…一君?」

 沖田の目に映ったのは、三番組組長斎藤一、その男だった。
 違うのは左利きであるはずの彼の刀が右ではなく、左側に差してある事。
 刀を振るう際に邪魔にならぬようにと、いつも右側で結わえている髪が左側で結わえてあるという事。
 そして何よりも…その笑顔だ。

「何者だ?」
「お前も強そうだな」
「何者かって聞いてるんだけど」

 沖田の問いにその斎藤は鼻で笑い、沖田を置いて歩き出しスイッと角を曲がる。

「待てっ」

 その後を沖田が追いかけ間を開けずその角を曲がったのだが、

「えっ!?」 

 そこで見たのは斎藤の後姿ではなく、

「何、これ…鏡……?」

 抜き身の刀を握りたった今正に角を曲がったばかりの自分の姿がそこにあったのだ。 
 小さな手鏡などは良く見知っている。
 しかし、こんな全身を映すような鏡は見た事がない。
 というか、何故そんな鏡がこんな廊下においてあるのだ。
 訝しげにその自分の姿を見たとき、鏡の中の自分がにやりと笑った。

「は?うわっ」

 突然旋風の様な物が巻き起こり、一瞬目を逸らしてしまう。
 しかし慌ててその鏡のあった場所を見やった沖田は、ごくりと生唾を飲み込んだ。

「な…え、はぁ?」

 自分の目を疑いたくなるその光景。
 そこにあったはずの鏡は消え、代わりに先程鏡に映っていたままの姿をした自分が…そこにいた。

「へぇ、そう」

 自分の姿をした男はそう言って左手で刀を抜いた。

「君もあの娘を護りたいんだ?」
「意味が分からないんだけど。って言うか…僕、物の怪とか初めて見たよ」
「僕は君が思っているような物の怪じゃないよ」
「口調まで真似されるとはっきり言って腹が立つんだけど」
「仕方がないでしょう。それが僕なんだから」

 沖田が刀を構えれば、左利きの沖田も同じように刀を構える。

「斎藤も君も、同じ娘が同じ場所にいる」
「何のこと?」
「だからこそ僕はすぐに分かったんだよ。だっていつでも特別に護られる血筋の、娘だから」
「だから何を言っているんだって聞いてるだろうっ」
「探していたんだよ、彼女の為の娘をね」
「………もういいや。君は僕が斬ってあげる」
「ありがとう。でもそれはきっと無理だから」
「やってみなきゃ分からないよ」
「分かってるよ、だって君も君の中にいる娘も僕が斬ってあげるんだから」

 でも、そう言って左利きの沖田は刀を納めた。

「今は君の相手してあげる暇ないんだよね」
「っ!?」

 今の今まで目の前にいた男が消えてしまう。
 沖田は周囲を探ったが近くには何の気配もない。

「あいつ、本当になんなわけ?」

 考えて答えが出るようなら悩まない。
 だがふと思い出す。

 【娘】と言っていた。

 それがここで誰を示すのか、これは考えずとも直ぐに分かる。

「千鶴ちゃん?」

 彼女の名前を口にした時にはもう足は前へ進んでいた。
 とても嫌な予感がする。
 どんなに辛くてもそれを愚痴ったりしない変わった娘だと、認識している。
 最初は面倒くさいと思っていた。
 それこそ殺してしまった方が良いと本気で思っていた。
 だが今は彼女ならここにいても良いんじゃないかと、そう認めるほどに自分の中に入ってきている娘。
 
「…今あんなのが行ったら余計に怖がっちゃうよね」

 怖い物に対してとても敏感になってしまっている千鶴。
 原因を作ったのは自分だと自覚しているつもりだ。

(だって、可愛いよね…あの泣き顔も、一生懸命睨んでくるのも)

 千鶴は可愛いお気に入りなのだ。
 どこの馬の骨とも知れない男に渡すのも、ましてや物の怪なんかに渡すのなんて以ての外だ。

「総司…お前何時から左利きになったんだ?」

 自分の姿をした物の怪を探して屯所の中を走っていると、土方の声が聞こえてきた。
 直ぐ近くからだ。

「僕だって一応あの子の兄貴分になるんだよね。こんな身体だけど妹を護る気概はあるつもりだから、覚悟してよね」

 抜き身の太刀を握り締めてそこへ飛び出す。
 視界に入ったのは今にも目の前の男を仕留めんと突き技の構えを取った左利きの沖田と、千鶴を護る様に背に庇う土方。

「貴様、何もんだっ」

 土方が怒鳴るのと、

「人の姿で勝手に遊ばないでもらえるかなぁっっ!」

 そう叫ぶ様に言い、沖田が右手で刀を薙いだのはほぼ同時だった。
    


「とまあ、僕が分かっているのはそれくらいですね」

 自分が見た事と体験した事を沖田は広間にいるもの達へ掻い摘んで話し終えた。
 近藤と井上は半信半疑な様で顔を顰めてはいるが、実際に左利きの沖田を見たその他の6人はこくりと息を飲む。

「トシ…」
「信じがてぇ話だと思う。だがよ、俺達の前にいたんだ」

 そう言った土方は自分の左腕に縋ったままの千鶴を見下ろす。
 震えは先程に比べれば些か落ち着いては来たのだが、それでも土方の手や着物を掴む手は緩んではいない。
 大丈夫だといって聞かせても言葉を紡げないほどに怯えている千鶴を無碍につきはなすことなど出来ず、そのままにさせている。

「斎藤」
「はい」
「昨日、おめぇ拝殿の中に人の姿を見たってぇ言ってたな」
「はい。暗かった故その者の容姿を確認する事はできませんでしたが」
「多分その時に見たのが僕が見たのと同じ、鏡の物の怪に映った自分の姿だったんだよ」
「鏡に映った姿をとられたって事か?」
「そっか。だからあの総司は左利きだってわけ」
「多分とられたのは姿だけじゃない。僕の剣術もきれいに取られてるみたいだった」
「総司が本当の意味で…二人…おいおいおい、どうすんだよ」
「どうするも何も、あいつを倒さねぇといけねぇって事だろ。でなきゃ」

 原田の言葉に永倉や藤堂が怯える千鶴を見る。
 あの物の怪は千鶴の生き胆が欲しいと言っていた。
 生き胆などを渡せばそれは千鶴の死を意味する事になる。

「千鶴は多分、朝方、総司が言っていた鬼に敵う物の怪はいないんじゃねぇかって言葉を心の拠り所にしてんだと思う。もちろん総司が揶揄してた様に鬼は土方さんを指してんだろうし」
「だったら土方さんはそのまま千鶴ちゃんの側にいてやってくれ。周りの警護は俺等がやるからよ」
「だよな。けど消えるって事はまた突然姿を見せるって事もあるんだろ?」
「僕と一君が土方さん達と一緒の部屋にいるよ。あいつは映ったままの姿しかとれないみたいだったし」
「確かに、それっぽい事は言ってたな。それが自分である所以だってな」
「副長」

 静かに仲間達の話を聴いていた斎藤が突然頭を下げる。

「何の真似だよ斎藤」
「呪いなど、物の怪など下らぬと隊士の言葉を切捨て、あの廃神社に迂闊にも近付いた俺の未熟さ故の事態です。申し訳ありません」
「あのな、この中の誰がその場に居たって」
「そうだよね、一君の所為だよね」

 同じ事をしたさ、という土方の言葉を遮って沖田が斎藤に向かいそう言った。

「総司」
「だってそうでしょ土方さん。一君があの鏡に姿を取られなきゃ僕だって追いかけたりしなかった」
「確かに、その通りだ」
「本当に悪かったって思うんだったら命を賭けて千鶴ちゃんを護る事だね」
「そのつもりだ。千鶴、あんたは必ず護る。怖い思いをさせてすまない」
「ったく総司」

 土方が沖田にもっと言葉を考えろと言いかけるとまたもやその言葉を遮り彼が言う。

「ま、怪しいと思ってたのに迂闊にもあいつを追いかけて姿をとられた僕も君と同じだからね」
「総司」
「僕も、全力で君を護るよ千鶴ちゃん」

 それまで土方の腕に縋りっぱなしだった千鶴が、ゆっくりと顔を動かし斎藤と沖田の方を見た。
 目が合うと二人とも力強く頷いてみせる。
 次いで、ゆっくりと視線を動かせば同じ部屋にいる男達が同じ様に、笑顔で大丈夫だと頷く。
 最後に腕をずっと掴んだままの土方を見上げる。

「すみ…ません…」
「うん?」
「手…を…離さなければと……思っているのですが…離すのが…こっ…怖くてっ」

 瞳が潤み始めた千鶴に土方はばーかと、そう言って右手でその額を弾いた。

「いたっ」
「んなこと、気にしてんじゃねぇよ。こんな剣だこばかりの硬い手で安心すんなら好きなだけ握ってろ」
「ひ…土方さんっ」
「物の怪だろうが何だろうが関係ねぇ。信じて側にいろ。もう絶対近付けさせやしねぇから」
「はいっ」

 千鶴が頷くのを見て、

「土方さんだけ役得ですよね」

 と沖田がからかうが。

「でも今回はそっちの方がいいよね、一君」
「…そうだな」
「言っとくけど、あの物の怪を斬るのは僕だからね」
「俺は俺のすべき事をするだけだ」

 そう言ってはいるが、根本は同じ。
 千鶴を護りたいという気持ち。
 それに今まで自分が何年も努力をして積み上げてきた物を、簡単に掠め取られた様で気分が悪すぎる。
 
「「必ず斬る」」

 二人が同時に発した言葉に近藤が己の膝を叩く。

「あい、わかった。事態が終息するまで、巡察以外の幹部は雪村君の警護並びにその物の怪とやらの情報収集に励んでくれ。決して気を抜かぬように。雪村君も気をしっかり持って、良いね」
「…はい」
「彼女の一番近くにいるのはトシお前だ。雪村君を任せるぞ」
「ああ、分かってる近藤さん。いいか、新選組を敵にまわす事がどれほど愚かな事か、いい機会だ。物の怪の世界にも浸透させてやれ」

 土方の言葉にその場にいた全員が力強く返事をした。

 


続く


 

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