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遅くなりました、花鏡想慕4話目をお届けします。
え~っと、確か怪談系の怖い物を目指していたのですが、やはりどうも間違いなく道を踏み外してしまったようです。
もうそろそろ物語りも佳境なので、ここからは一気に進めたいかなぁと思ってます。
もう怖くもなんとも無い(汗)そんな物語は右下からどうぞ。


雪華録第二章、見ました。
斎藤さんすごいですね、いっぱい喋ってました!
山崎忍法…何時あんなの練習してたんでしょうねぇ(苦笑)
でもそこはかとなく土千のカホリが(笑)
EDも曲だけでなく、ちょっとした仕様も変わっていて凝ってるなぁと思いました。
雪華録、後3話ですね。
次は9月末かぁ。

 

 


「夜が明けちゃいましたね」

 ふあぁと大きな欠伸をしながら沖田がそう言った。
 今現在、土方の部屋の中にいるのは四人。
 部屋の主の土方。
 土方の側を離れない千鶴。
 壁に背を預け刀に凭れかかる様にしながら、退屈そうな沖田。
 背筋を伸ばしたまま微動たりともしない斎藤。

「物の怪の活動時間って日が暮れた後って言うけど、今回もそうだと思います?」
「知るか」
「ずっとこうして気を張ってて、いざという時に動けないのは情けないでしょ」
「かと言って今俺達がこの場を離れる事ほど彼女にとって危険な事はないだろう」
「…分かってるよ」

 ムスッとした沖田は短くそう言うと、視線を動かした。
 彼の視線の先には自分達が守ると決めた娘が、彼女にとって今一番安心できるのであろう場所で眠っていた。
 正直面白くない。
 確かに自分が言った言葉が彼女の心の支えになってしまったのかもしれないのだが。
 やっぱり納得がいかない。

「土方さん疲れてるでしょ?千鶴ちゃん僕が膝枕します」
「こいつが寝たのはついさっきだろうが。別に疲れてねぇよ」

 沖田の申し出に、土方が溜め息混じりに答えた。
 大分前に『側にいるから寝てろ』と言ったのだが、自分だけが眠るわけにはいかないと必死に起きていた千鶴。
 しかし、やはり疲れが出たらしく土方に寄りかかるようにして眠ってしまった。
 暫くはそのままにしていたのだが、ゆっくり休める様にと土方がその膝を提供した形となったのだ。

「総司」
「何ですか」
「前からちと聞きたかったんだがよ」
「はい?」
「お前は、こいつを可愛がりたいのか?それともただ苛めたいのか?」
「えーーー…」
「えーって…お前なぁ…」

 膝を付いたまま沖田は土方と千鶴の側ににじり寄ってくる。

「僕、最初の頃に言ってたと思いますけど?」

 手を伸ばし、千鶴の顔にかかっている前髪をそっと払ってやりながら沖田が言った。

「お前が言っていたのは『斬る』だの『殺す』だの、彼女を怯えさせる言葉ばかりではないか」
「だってこの娘の事何も知らなかったんだから当然の事だと思うけどなぁ。それに一君だって別に反対しなかったじゃない」
「で?」
「でって、土方さんが言ったんでしょ『どう思う?』って」
「………あれか…」
「そ。『可愛いんじゃない?僕は嫌いじゃないけどな』そう言ってたと思いますけど」
「あれはお前の本心ではなかろう」
「思ってもいないこと口にするほど暇じゃないよ、僕」
「だったら何故嫌がらせを続ける」
「嫌がらせって、失礼だな。ただ僕は千鶴ちゃんが退屈しないように暇な時は構ってあげているだけ」
「構うのは悪くねぇが、問題はその方法だ。泣かせてどうする、怖がらせてどうする」
「だって、笑顔だけじゃ厭きるじゃないですか。泣き顔見てみるといいですよ。きっと土方さんだって癖になるから」
「…ならねぇよ。……こいつは笑っている方がいい」
「そりゃ笑顔は可愛いと思いますよ?でも一生懸命睨んでくるのも可愛いんですって」
「お前な…」

 心底呆れた様な土方と斎藤がそろって溜め息を吐いた時、

「……ん…」

 土方の膝の上に頭を乗せて眠っていた千鶴が、眉間に皺を寄せたかと思うと何故か涙を流し始めた。

「千鶴ちゃん?」
「…千鶴、千鶴っ」

 千鶴の肩を揺らし起こしにかかるが、なかなか目を覚まさない。

「千鶴ちゃんっ!」
「ん…」
「千鶴っ」
「……ひ…じかた…さ…?おき…たさん?」
「何か夢を見ていたのではないか?」
「さいと…さん…?」

 心配げに自分を見下ろしてきている3人の男達をぼうっとした表情で千鶴は見上げる。

「大丈夫か?顔色が悪ぃぞ」

 土方はそっと千鶴の頬に流れる物を拭ってやる。

「もうちっと寝ていろ」
「私…?」
「夢の中までこえぇ思いしてたのか?」
「……ゆ…め?」
「おい、大丈夫か?千鶴」
「あ…はい。大丈夫、です。私…夢…を…みました」

 そう言いながら千鶴がゆっくりと身体を起こした。

「怖い夢なんだろ?」

 土方の言葉に千鶴は首をゆっくりと横に振る。

「鏡の…夢です」
「鏡?…今回の事と関係のある夢なのか?」

 斎藤が自分の手拭を千鶴に渡しながら尋ねる。
 それをお礼を言って受け取りながら千鶴が頷いた。

「鏡の物の怪の事を…聞きました…」
「聞いたって、誰に?まさか夢の中で聞いたとか言うの?」
「はい。それが…とても………悲しくて…」
「悲しい…?」
「あの鏡の物の怪を…鏡を助けて欲しいのだと…頼まれました」

 千鶴の言葉に3人が顔を見合わせる。
 彼女の生き胆を、つまり命を狙ってきている物の怪を助けるとは一体どういうことなのか。

「斎藤さん」
「何だ」
「斎藤さん達が行かれた神社で、何か拾いませんでしたか?」
「何か、とは?」
「…欠片。鏡の欠片です」
 
 千鶴に言われた事で、着物の袂に入れっぱなしだったあの日の夜に拾ったそれを取り出した。

「すっかり忘れていた。何故あんたがこれを知っている」

 斎藤の掌には小さな欠片が乗っている。
 確かにそれは鏡の欠片のようだ。

「夢の中で、教えてもらったんです。私の側に、欠片を持っている人がいると。欠片が有るからあの人は私の夢の中にくる事ができたのだと」
「あの人?」
「……夢の中で聞いたことを、お話します」

 千鶴が背筋を伸ばして座る。
 昨日あれだけ怯えていた事が嘘の様にしゃんとした姿に土方がふっと笑みを零し、

「斎藤、皆を集めてくれ」

 そう指示を出した。

「ですが」
「大丈夫だよ一君。千鶴ちゃんの側には僕とついでに土方さんがいるし、なんか千鶴ちゃんも落ち着いてるみたいだし」

 沖田の言葉に呆れつつも斎藤が千鶴を見れば、まだどこか本調子ではない様だが、それでも眠りに付くまでは見られなかった笑顔がそこにあった。

「承知しました」

 千鶴の笑顔に斎藤は小さく頷き、土方に頭を下げると部屋から出て行った。

「千鶴」
「はい、土方さん」
「俺の左手はもうお役御免か?」
「ふぇ?」

 驚く千鶴に、土方が左手を握ったり開いたりして見せた。
 その様子に千鶴は思わず自分の右手を見下ろし次いで土方の左手を見る。
 そして、そうだったと思い出す。
 恐怖のあまり思考回路が混乱していたのかどうかは分からないが、自分はずっとこの手を握っていたのだ、と。
 とても大きくて、力強い男の手。
 離れるのが怖かった。
 でもそうして握っていると本当に心強かったのだ。

 そういえば。

 いま自分は何を枕にしていた?
 視線を上げれば土方と視線が交わる。
 そのとたんに頬が熱を持ち始めた。
 
「あ、ああああのっ」
「何だよ?」
「わたっわっ私っっ」

 慌てふためく千鶴に、

「土方さんのが嫌になったんなら僕の左手貸してあげるよ」
「ひゃぁぁ!」

 直ぐ側にいた沖田が耳元に息をわざと吹きかけるようにして囁けば、その耳を押さえて千鶴が飛びのいた。

「あははっ、元気になったみたいだね千鶴ちゃん」
「…沖田さん」

 千鶴の瞳に映るのは悪戯が成功した時の笑みではなく、本当に珍しいほどに優しい笑顔だった。
 思わず目を瞠れば、とたんに怪訝そうな表情へと変わった沖田に尋ねられる。

「なに?」
「いえ、あの…」

 流石に本人を前に『優しい笑顔なんて初めて見ました』と言えるほどの度胸はない。
 だが。

「もう怖くは無いとは…言えません…けど、元気、です」
「ん~?何でしどろもどろなわけ?」
「え…あああの、えっ…と」
「やましい事でもあるのかな?」
「や、やましい事なんて!」
「ほんとに?だったら僕も目をみて言ってごらんよ」
「言う?」
「うん、僕の目を見たまま『総司さんが大好きです』って。そしたらもっと大切に護ってあげる」
「―――…え?………ふえぇぇええっっ!?わっ??」

 沖田の言葉に声を上げる千鶴を、その背後から土方が両肩を掴み自分側に引き寄せる。

「いい加減にしやがれ総司っ。黙って聞いてりゃ、散々怖がらせといて勝手なこと言ってんじゃねぇよ」
「何言ってるんです、好きな子ほど苛めたいって言うじゃないですか。って言うかさっきも同じ話をしたじゃないですか、もう呆けたんですか?」
「だーかーらっ!おめぇのは度が過ぎてんだっつっただろっっ!」
「そんなの土方さんの尺で計らないでもらえます?」
「誰が見たってそう言うぞっ!」
「それだって土方さんの主観じゃないですか!」

 自分の頭の上で、いつの間にか兄弟喧嘩の様相になってきた二人を千鶴はぽかんと見上げていたが、

「ふふっ」

 と、とうとう笑い声を出してしまった。

「「?」」
「ふっ、ふふっ」

 一度に土方と沖田の視線を感じ千鶴は困った様に、でもやはり笑ってしまう。
 そこへ、

「何だ、トシも総司も雪村君に笑われるとは情けないぞ」
「やれやれ、本当に子供の兄弟喧嘩だねぇ」

 襖が開かれそう言いながら笑顔の近藤と井上が中へと入ってきた。

「近藤さん、源さんもどういうこったよ、そりゃ」
「土方さんも総司と同じ様なもんだって言う事だろ」

 続いて原田や永倉、藤堂達も入ってくる。
 最後に斎藤が中へ入り、襖を閉めた。

「……ご苦労だったな斎藤」
「いえ。…副長」
「んだよ」
「雪村を、そろそろ解放された方が良いのではないかと」

 先程までは笑っていた千鶴も、一見土方に抱き寄せられている様に見えるその姿を皆に見られて今は顔を真っ赤にしていた。

「ああ、悪ぃ」
「い、いえ」

 土方から離れた千鶴は姿勢を正し、部屋にいる男達に向かい頭を下げた。

「ご心配をおかけしました」

 そういえば、ポンと優しくその頭の上に手が乗せられた。

「ああ、心配したぞ」

 千鶴の頭に手を乗せたのは近藤で、そう言ったのも近藤だ。

「君を大切に思うからこそ心配をする。だからそれは君が頭を下げることではないのだよ」
「近藤さん」
「さて、何やら話があるのだと斉藤君から聞いたのだが」
「あ…はい。聞いて頂きたい事があります」
「うむ」

 顔を上げ、力強く頷く近藤の姿を見た千鶴は小さく頷き返し、先程の短い睡眠の間に見た夢と託された事を、語りだした。

 

続く

  

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