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大分間が開いてしまいましたが、今回は病気とかではありません。
はい、元気です。
ただオフの仕事が忙しくて…ちょこっとちょこっと書いていたらこんなに間が開いてしまいました。
頂いた拍手やコメントにもお返事出来ていないままで申し訳ないです。
小説を書けるのは大体夜なんですけど、最近の忙しさからか22時以降は起きているのが辛い…(涙)
我が職場は一足早く師走が訪れております。
パソコンの前に座っても眠気に負けて電気つけっぱなして寝ちゃっていたことしばしば。
節電はどうしたって…ホント思いますが。
12月に入ればこの忙しさも落ち着くと思うんですよね。
オフの仕事関係で一言言っておきたい事があります。
皆さん、歯の治療はお早めに!!
年末ギリギリだとお正月に間に合いませんよ!
痛みや違和感を感じたら怖がらずに来てね!!
(一言じゃないな…)
で、今回の金色望月ですが。
土千と言ってもこの二人が主軸ではなく娘の千歳が主軸になっております…多分。
そして…ハイ、これは読んでいただければ。
実は不思議な~を書き進めていたんですが『なんか突拍子のないもの書きたいな』とそれこそ突拍子も無く思い立って、不思議~と同時進行でこちらを先に仕上げちゃいました。
疲れとちょっと溜まりだしたストレスからの暴走です(苦笑)
連載という形ではなく、時々思い出したようにシリーズ物として書けたらなぁと思ってます。
(要は私の逃げ道です…)
では、右下からどうぞ。
今年4つになったばかりのまだ幼い我が娘が、自分に良く似た顔でちょこんと首を傾げてこちらを見上げる。
そんな娘の言った言葉に父親である歳三は縁側で胡坐を掻いたまま固まった。
母親である千鶴も同じだ。
夫の隣りで淹れたての茶が入った湯飲みをお盆に乗せたまま庭先にちょこんと立つ娘、千歳を見下ろしている。
「ととさま、かかさまだめ?ちとせ、ちゃんとおせわします」
言葉も無く固まってしまった両親に不安を感じた千歳の瞳がうるりと揺れ、無意識に両腕に力を入ると、
『な~ん』
苦しいとばかりにその腕に抱かれていた存在が一声鳴いた。
「ととさまぁ」
「は…、あ?あぁ…」
「ちとせ、いいこにします。かかさまのおてつだいもします」
千歳は腕に抱いたそれの頭に頬を摺り寄せて歳三を見上げた。
「千歳」
「はい、ととさま」
「……いや、ちと待て。千鶴…茶をくれ」
「え、あ、はい」
歳三に言われ、火傷しますよと一応声をかけながら湯飲みを渡した千鶴もまだどこか動揺しているようだ。
ゆらりと湯気が揺れて見える熱々の湯飲みに口を近づけて、いつもと変わらぬ美味いそれを一口分喉に流す。
そしてコトリと湯飲みを縁の板張りの上に置き、もう一度娘を見下ろした。
「何だって?」
そう尋ねてやれば千歳は腕に抱いたそれと共に一歩前に進み、
「ちかげ、いっしょにすみたいです」
おねがいしますと懇願する様に千歳は言った。
「ち…かげ…だと?」
「はいっ」
頬を引き攣らせて尋ねれば元気な声が返ってくる。
「あ…のね千歳」
「はい、かかさま」
何も乗っていないお盆を胸に抱きしめて、頬を引き攣らせたまま言葉を失った父親に変わり母親が尋ねる。
「何で…ち…ち………ちかげ…なの?他の名前じゃ…駄目なのかなぁと思って」
千鶴の疑問と視線の先はきっと歳三と同じだろう。
娘の腕に抱かれているのはまるでお天道様の様な金色の毛並みに赤い宝石の様な瞳をした…雄猫であった。
その風貌は過去に何度も衝突した男性と嫌なほど重なる。
二人の視線とその猫の視線がバチリと合ったと思われるその瞬間。
赤い瞳がにやりと笑うかの様に細められ、それとほぼ同時に母親の質問に答えた娘の声が明るく響く。
「ちかげがいったの。おれは、えと、か…かじゃ…」
「……風間」
「あ、うん!ととさまそう!かじゃまちかげだっていったの」
茶を飲んでいなくて良かった、湯飲みを手に持っていなくて良かったと歳三は思う。
口に含んでいたら噴出していただろうし、湯飲みは落としていただろう。
そんな事態になっていればきっと目の前のこの愛くるしい我が娘にも怪我をさせていたに違いない。
ああ良かった助かったと、そう考えている時点で既に現実から逃避しているのだと気が付きたくは無いそんな心情の両親をよそに娘は更に懇願する。
「ちかげね、ちとせのおともだちなの。さくらのきのしたであったの。ちかげね、あぶないところおしえてくれて、ちとせまもってくれました。でもおはなしてくれたのはおなまえおしえてくれたときだけです」
ね、そう言って千歳はますます猫のちかげを抱きしめる。
それを目の端に映しつつも歳三と千鶴は顔を寄せ合ってひそひそと話し出した。
「千鶴」
「は、はい」
「お前千歳が腹に宿るちぃっと前に、会ったって話したよな…あいつに」
「会ったといいますか…歳三さんのいらっしゃる場所を教えて頂きました…けど」
「あいつは桜の精をやめて猫になったのか?…まさか…だよな?」
「桜の精ではなかった…と思いますよ?」
「そこは突っ込まなくていいんだよ…。で?どう思うよ」
「まさか…だとは思いますけど………どうしてでしょうか…あの人なら、あの人だからで解決してしまいそうな気がします」
二人して千歳の抱く猫を見やり、
「風間?」
「風間さん?」
と同時に呼びかける。
そうすると、
『なぁん』
短く猫が鳴いた。
「…………………冗談だろ」
「うわぁ…本当に風間さんなんですか?」
『なぉん』
「ととさまとかかさま、ちかげしってるの?」
「知って…るっつーか……千歳、そいつはここに置いて手を洗って来い」
「でもぉ」
「捨てやしねぇから」
「…はぁい」
父親に言われ千歳はちかげ…否(恐らく)千景を彼の隣りに置いて、
「おててあらってくるから、いいこでね」
猫の頭を一撫でするとパタパタと走っていった。
娘の走って行った先に千鶴も家の中から向かい出した為、残ったのは家の主の歳三と猫の千景のみとなってしまう。
そこに流れるのは微妙な空気だ。
どちらも何も言わない。
というか、本当にそれが夫婦の知る人物であった者の姿とは限らない。
…限らないの、だが。
「………おい、風間…なのか?」
一応また問いかけてみる。
しかし猫は正面を見据えたままこちらを見ようともしない。
「だ…よな…。さっきのは偶然鳴いただけか」
どこかほっとした様な面持ちで湯飲みを取ると少し冷め始めたお茶に口を付けた。
『…魂は繋がった様だな』
「???!!んぐっ、ごほっっ!ごほごほっっ!!」
突然聞こえてきた覚えのあるその声に驚き、口にしていたお茶がいつもと違う場所に入りかけ思わず咽てしまう。
声のした方を見下ろせば金色の毛並みの猫が紅い目でこちらを見上げ、パタンパタンとその長い尾で床を叩いていた。
『久方ぶりだな、薄桜鬼よ』
「かっかっ…風間ぁぁああ??」
『愚問だな』
俺以外に誰がいるというのだとばかりに、その猫、風間は鼻先で笑った。
猫が鼻先で笑うという奇妙なものを見た歳三はどうしてよいか分からず、取り敢えず湯飲みを今一度縁の上に置いた。
「冗談だろ…?」
『何だ、貴様は冗談で猫が口をきくとでも思っているのか?』
「そのいちいち頭にくる物言いは確かにそうだな覚えがあるぜ」
『ほう?余程その着物で爪研ぎをされたいようだな』
猫の風間(以降風間)は右の前足を上げて鋭利な爪をきらりと光らせる。
『この身では何も出来ぬなどと思うなよ、薄桜鬼』
「…あのな。猫は猫だろうが」
『ふっ我が爪は童子切安綱と同等の力を秘めておるのだ。その身に受けた傷の痛み、忘れてはおるまい』
「冗談…だよな」
『当たり前だ』
「……………」
『なっ!放せっ』
無言で歳三は風間の首根っこを摘み上げると、暴れる風間をそのままに大きく深い溜め息を長々と吐いた。
『薄桜鬼』
「…喧しい」
『だが、お前は薄桜鬼であろうが』
「俺は雪村歳三だ」
『土方の姓を捨てたか』
「それが俺の選んだ…否、千鶴が与えてくれた生きる道だ」
掴み上げていた手から力を抜くと風間は足音を立てることもなく床に降り立った。
「新選組と共に生きた土方はあの日お前ぇと戦った時に死んだ。刀を振るう事も軍の采配をする事も二度とねぇ…今の俺は…何も出来ねぇ男さ」
『ふんっ笑止』
「んだよ」
『戦わずとも今のお前でも家族を護る事はできよう?先はまだあるのだ。ゆっくりと考えればよいだけの事』
「羅刹の身に…先ねぇ」
『そのうち分かる』
「………」
『何だ?』
無言の視線を感じた風間が見上げれば驚いた様な歳三がこちらを見下ろしていた。
「いや…風間」
『だから何だと聞いている』
「お前ぇ猫になってちっと性格が丸くなったんじゃねぇか?」
『どういう意味だ』
「そういう意味に決まってんだろ」
『馬鹿にしているのか』
「別に、そんなつもりはねぇ…が、まぁそうかもな」
『そうか、やはり爪研ぎの的になりたい様だな』
再び爪をきらりと出して見せたその時、
「…本当に風間さんなんですね……」
「ちかげ、いっぱいおはなししてる!」
千歳と共に千鶴も戻って来た。
パタパタと駆け寄った千歳が風間をよいしょと抱き上げる。
「どぉしてちかげはちとせとおはなししてくえないの?」
『…理由など別に無い』
「ちとせはちかげいっぱいおはなしすりゅのうえしいよ?」
『何故俺がお前を喜ばせねばならんのだ』
「え~、ちとせがぁうえしいから」
背後から抱き上げられた風間はぶっきら棒な言葉とは裏腹に、暴れて腕を飛び出すような事はせず千歳の腕に抱かれたまま尻尾の先をゆらゆらと揺らし、後ろ足はぷらりと投げ出していた。
(見た目は猫だな…中身はあれだが…あれっつーか問題大有りだがよ…)
(はぁ~世の中色々な事があるものなのね…)
「ととさま、かかさま」
「ん…ああ?」
「ちかげ、おうちおいてもいいですか?」
ちょこんと首を傾げて自分を見上げる愛娘は文句なしに可愛い。
だが、これは中身が問題大有りの猫なのだ。
「……………」
歳三と千鶴は無言でお互いの顔を見合わせふっと笑みを零す。
「千歳が世話するんだな?」
視線を娘に戻し歳三が言えば千歳は元気良く頷いた。
「ったく、仕方ねぇな」
「ととさま?」
「お前の護衛とでも考えりゃあな。ちったぁ役に立つだろうさ、なぁ風間」
『…下らん。が、まあ良かろう』
「この家の主は俺だぞ」
『だからといって媚び諂う理由は無かろう?千鶴』
「は、はい、風間さん」
千歳の腕に抱かれたまま大人しくしている風間は千鶴を見上げ、
『今宵、望月が昇る頃に酒とつまみをこの縁側に準備しろ』
そう言いながら尻尾を揺らす。
「だからなんでお前ぇはそういちいち偉そうなんだ」
「ふふ、承知しました」
目の前の愛娘が大切に抱く金色の猫は歳三や千鶴からすれば仲間の仇でもあった男だった。
恨み辛みが消えたかといわれればそれはきっとこの先も消える事はないといえる。
それでも、あの戦いの中。
最後の最期。
太刀に己の魂を籠めてぶつけ合った、好敵手とも言える相手。
だからこそ今は、こうして言葉を交わす事が出来るのかもしれない。
その日の夜。
食事を摂り風呂も済ませた千歳が風間を抱いて布団に潜った後。
ぐっすりと眠っていた千歳の耳にカツンという聞き慣れない音が聞こえてきた。
意識が少し浮上した千歳はまず自分の傍で寝ていた暖かな存在を探したが、それに触れることは無かった。
触れたのは手触りの良い羽織のような物。
それが何なのかは分からないが、抱いて眠っていた猫と同じ匂いがした事に安心感を覚えそれをきゅっと抱きしめる。
それからぼんやりとした眼を必死に開いて、光が差し込む縁側に視線を向けた。
(ととさまとかかさま…わらってる)
ふわふわとした夢心地の中で千歳の目に映ったのは大好きな両親が大好きな笑顔で笑っている姿。
そして…
(ちかげとおなじいろ…)
そんな両親と同じ縁側に座っている人物の後姿もあった。
初めて見るその姿は今日から一緒に暮らせる様になった猫と同じ色をしているように見える。
金色の髪に白い着物。
(だぁれ…かなぁ?)
まん丸お月様の優しく降り注ぐ淡い光に包まれた両親と金色の人物。
(ちとせもいきたいけど……おめめあかない…)
「ちかげぇ…あちたも……あしょぼぉねぇ」
必死に紡いだ言葉が言い終わるかどうか。
千歳は夢の中へと戻っていった。
そんな娘の言葉が届いた縁側にいた3人は穏やかな視線を部屋の中に向ける。
「随分と気に入られちまったな」
「お前達の娘に気に入られたとて、それがどうなる訳でもない」
そうは言いつつも満更でもなさそうな表情の風間の言葉に呆れたと言う視線を投げる歳三。
そんな二人を見て千鶴はふふっと笑った。
(望月の夜だけ人の姿を取れるのならお酒の準備を忘れない様にしておかなくちゃ)
昔は命を取り合った間柄
宿敵として対立した間柄
そして
今は酒を酌み交わす間柄
月日が過ぎて。
随分と変わったお互いの距離に月明かりの下で男達は笑う。
不思議で奇妙なこの関係は
まだ始まったばかり
終わり(かな?)