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突然何なんだと言う感じではあります…が。
お待たせしました、不思議な千鶴ちゃん16話をやっとのやっとでお届けします。
15話を何時書いたんだ、と調べて7月という現実に倒れそうになりました…。
本当にお待たせしました。
この辺りから話が急展開?え、そうでも無い??そんな感じで進んでいきます。
色んな意味で楽しいです…私が。
そんな感じの千鶴ちゃんは右下からどうぞ。
「い・りょ・は」
「りょじゃなくて、ろ、だよ」
「う~」
「ほら、脹れてないでもう一度、いろはにほへと」
「いりょはにほへちょ」
「ぷっ」
「しょぉじわやっちゃめでしょっ!」
「ごめんね。でも可愛くて可愛くて堪らないんだもん」
自分の方に向かうようにして膝の上に座らせた千鶴を沖田は堪らず抱きしめる。
小さな千鶴は可愛らしい頬をぷくりと脹らませたまま彼を見上げた。
「しょぉじ」
「なぁに、千鶴ちゃん」
「あじめは?」
「一君?一君だったらもう直ぐ戻ってくると思うよ」
「あじめねもどっちぇきちゃやちじゅとまたあしょぶの」
「え~。一君じゃなくて僕が一緒に遊んであげるよ」
「しょぉじちじゅのこちょわやっちゃもん」
「だって千鶴ちゃんが可愛すぎるから。そう思いませんか土方さん?」
沖田は千鶴を優しく抱きしめたまま背後に立った土方を見上げて笑った。
笑顔の沖田に対し、土方は頬を引き攣らせたようにしてこちらを凝視している。
「あ~!あじめっ!!」
土方の直ぐ後ろには斎藤の姿もあり、千鶴に名を呼ばれて目を細め微笑んだ。
「しょぉじはなちて」
そんな斎藤の元へ行こうと千鶴がもがけば、
「やだ」
沖田がますます千鶴を抱きしめる。
「え~ちじゅもやだぁ」
「千鶴ちゃんもなの?だったら僕達おそろいだね」
「……おしょよい?」
「うん。だって僕と千鶴ちゃんの気持ちが一緒だから、おそろいでしょ?」
「おしょよいかぁ」
「総司の口車に乗るな、千鶴」
「あっ!もう、ひっどいなぁ」
沖田の腕の中から引き上げられた千鶴の身体はふわりと宙に浮き、そのまま斎藤の腕の上に腰をかけさせられた。
「あじめ、おかえいなしゃい。ごよーおわっちゃ?」
「ああ」
「じゃあねちじゅとぉあしょぶの」
「だがおはじきは飽いたのだろう?」
「へーしゅけがまいもっちぇくゆっちぇ。だかや、おしょとであしょぼ」
「鞠か。しかし、外はもう冷えて来ている。日も時期に暮れてしまうだろう」
「えぇ~」
「千鶴に風邪を引かせるわけにはいかぬ」
「確かにそうだよな」
斎藤の言葉に相槌を打つように頷きながら藤堂が広間に戻ってくる。
その手には赤い鞠が乗っていた。
「へーしゅけ」
「千鶴、外は風も出てきてるし止めた方がよさそうだぞ」
「おしょと、め?」
千鶴が悲しそうに言えば斎藤と藤堂がそろって困った様に息を吐いた。
「夕餉の支度が始まるまでだったらここで遊んでも問題ないと思うよ」
そう言ったのは、立ち上がり斎藤の腕に抱かれている千鶴の頬に手を当てて笑う沖田だ。
「おへやでまいちゅきちていいの?」
「別に高価な物なんて置いてない部屋だし、構わないでしょ?」
後半は今だ固まっている土方のほうに視線を向けて言う。
斎藤と藤堂も土方の返事を待つ様に視線を向けて来る。
ただ、千鶴一人は土方の顔を見て首を傾げていた。
「あじめぇ」
「どうした?」
千鶴の小さな人差し指がスイッと伸びて、土方を指す。
「こえは?」
「こえ?」
「こえはなぁに?」
「こえ…これ、か?」
「うん」
「これ、ではない。副長だ」
「ふくちょ?」
「そうだ。それに千鶴、人に向かい指を指してはならぬ」
「こえ、め?」
土方を指していたその指をちょこちょこと動かしながら斎藤を見上げる千鶴に、
「そう。めっ、だ」
優しく諭すように言ってやれば、千鶴はごめんにゃしゃいとそう言って斎藤にぴったりとくっ付いてきた。
叱られたと受け取ったのかその表情はどこか落ち込んでいる。
「千鶴。一君はさ、別に千鶴の事叱ったわけじゃないんだぞ。でもな人に向かって指を指すのはいけない事だから気を付けなさいって言ってるだけ」
「俺に叱られたと思ったのか?」
「…うん…」
「そうか。叱ったつもりではなかったのだが、もう少し言葉を選ぶべきだったな。すまん」
「あじめ、いちゃいの?」
斎藤が顔を顰めるのを見て千鶴が小さく首を傾げる。
その表情は彼を心配しているのだと如実に見て取れる。
「痛いわけではない。心配無用だ」
「いちゃいない?」
「ああ」
「あじめ、いちゃいないのね、よかっちゃあ」
斎藤の返事を聞いて千鶴が、正に花が咲くという言葉の通りの可愛らしい笑顔を彼に向けた。
それが、本当に安心してこぼれた笑顔だと分かり、どちらかというと明るい表情の乏しい斎藤でさえも眦を下げて、こつんと、額と額を合わせた。
「千鶴は優しいな」
口から出たのは心からの思い。
間近に見えるきょとんとしているきれいな瞳が、本当に愛らしい。
「あじめ、ちじゅやしゃし?」
「ああ、俺はそう感じている」
「やしゃし、いいこ?」
「?」
「あじめちじゅ、いいこちやう?」
「あ、否。良い子だと思う」
良い子だと告げれば千鶴の笑顔が大輪の花へと化してゆく。
喜びながら千鶴は斎藤の首へとその小さな両腕を回しぎゅっと抱きついてきた。
そんな千鶴を優しく抱きとめてやる斉藤の表情は何処か険しい。
その表情のまま沖田に視線を送れば彼も何処か腑に落ち無い、そんな表情でこちらを見ていた。
近くにいる藤堂も然り。
千鶴の言った言葉に、引っかかる物があった。
『良い子』
それが微妙に気になる。
「なぁ千鶴」
最初に口を開いたのは藤堂だった。
「なぁにへーしゅけ」
藤堂の呼びかけに千鶴は斎藤から少し離れ、顔を向ける。
「…良い子だと、何かあるのか?」
「うばやがいいこちてたやかかしゃまあいにきてくえゆっちぇ」
「母様が?」
「うん」
「ねぇ千鶴ちゃん」
沖田がにっこりと微笑みながら手を伸ばすと、先程同様に千鶴の頬を優しく撫でる。
「良い子にしないと千鶴ちゃんは母様に会えないの?」
「しょうよ。どおちたの?しょぉじ」
「千鶴ちゃんは乳母に育てられてるの?」
「?」
質問の意味が分からないのか千鶴が首を傾げる。
「えっと、…千鶴ちゃんは誰と暮らしてる…いつも誰と一緒にいるのかなぁって」
「かお!」
「かお?」
「かおちょうばやちょちよーに」
「ちよ…ちよーに?」
「ちよーにはねぇちじゅちょぉかおのゆーこちょきくの!」
「言う事を聞く…ねぇ。………千鶴ちゃん」
「なぁにしょぉじ」
「土方さんがね、千鶴ちゃんの父様のお名前聞きたいんだって」
「いじかちゃしゃ?」
「あ~…副長」
「ふくちょが?」
「うん。教えてあげて?さっき僕達に教えてくれた様に」
急に話を振られた土方が怪訝そうに眉間の皺を増やす。
そんな土方に向かい千鶴は不思議そうに瞳を瞬かせながらも、
「ととしゃまのおなまえねぇ、とーりょーいうのよ」
笑顔でそう口にした。
「だそうです。どう思います?」
すかさず沖田が土方の問いかける。
「ちなみにとーりょーは大工の棟梁ではなく、千鶴ちゃん曰く一族を護る偉い人…つまり頭領という意味らしいですよ」
「…鋼道さんが何処かのお偉いさんだってーのか?」
「僕にはそうは見えなかったんですけどねぇ」
「……あ~ったく。全っ然話が見えねぇっ」
「え~~」
「え~があるか!大体なぁ、千鶴は一体どうしちまったんだよっ!こりゃどこからどう見ても普通に小せぇ子供じゃねぇか!!」
「可愛いですよね」
「あぁ可愛いなっじゃねぇっつってんだろーが!何があったのかちゃんと話せっ」
「一君に何も聞いてないんですか?」
「千鶴の様子がおかしいから見てくれとしか聞いてねぇ」
「にしては遅かったですね」
「俺にも仕事があるんだよ」
「はぁ。…めんどーだなぁ。僕、千鶴ちゃんと遊びたいのに」
「あぁんっ!?」
「良い事思いついた!」
「はっ?」
「ほら、新選組の副長なんですから勝手に想像して結論を出してですねぇ」
「出来るかっ!!」
「出来ない事をやってのけるのが副長としての手腕の見せ所でしょうに」
「無茶言ってんじゃねぇっ。あーっ面倒くせぇっ!斎藤っ」
これ以上沖田に何を言っても無駄だと踏んだ土方は千鶴を抱いたままの斎藤を呼びつける。
「はっ」
「お前が話せ。昼餉の後何があったのかを。総司と話してたんじゃ埒がいかねぇ」
「俺が…ですか」
「………何でお前ぇまで不服そうなんだよ」
「い、いえ、俺は別にそんな…不服など」
「あじめ?」
「すまぬ千鶴。もう少し俺は副長と話がある故、総司と平助と遊んでやってくれぬか?」
「あじめ、おちごちょ?」
「ああ」
「しょっか…ちじゅいいこにちてたやしゅぐおわゆ?」
「千鶴が良い子にしていなくとも、楽しく遊んでいてくれれば直ぐに行こう」
「いいこちやくちぇも?」
「ああ」
「わかっちゃ!ちじゅしょぉじとへーしゅけとあしょんでゆね!」
元気良く返事を返してきた千鶴を床に下ろすと、斎藤は小さな頭を一撫でして微笑んだ。
「怪我はせぬようにな」
「あーい!」
右手を上げて返事をした千鶴の頭をもう一度撫でてやる斎藤を見ながら、
「…なんか、妙に一君に懐いてるよなぁ千鶴」
鞠をポンポンと手の上で弾ませながら藤堂が言う。
「平助もそう思う?」
「思う、つか見ててそう思わねぇ方がおかしいって」
「だよねぇ」
「ま、普段の行いが~ってやつじゃねぇの?総司は千鶴の事からかってばっかだけど、一君は結構気にかけてるみたいだしね~」
「何それ」
「だから、構うとからかうは全然違うって事。な、千鶴」
「う?」
ちょこちょこと近付いて見上げてきた千鶴に藤堂が笑いかけると、千鶴はちょこんと首を傾げた。
「なぁに?」
「鞠つきってどうやって遊ぶのかなぁって思ってたの。千鶴、手毬歌知ってるか?」
「うん!」
「じゃぁ、ほいっ」
千鶴の手に鞠を乗せてやれば、きゃあ、と嬉しそうな声を上げる。
そんな千鶴を見下ろしていた沖田が両膝に手を付き少し身を屈めるようにして千鶴の瞳をじっと見詰めた。
「…しょぉじ?」
「千鶴ちゃん。僕の事好き?」
「しゅき」
「一君は?」
「しゅき」
「ふぅん」
千鶴の答えに取り敢えず納得したのか屈めていた身体を元に戻す。
「ならいいや」
「総司何言ってんだよ…」
「思いの外、僕と一君に違いがないって事が分かったからそれでいいの」
「はぁ?」
「良いから良いから。千鶴ちゃん遊ぼ!」
「うんっ!」
千鶴の愛らしい声で、男達にはあまり馴染みのない手毬歌が音に乗って紡がれ出すのを見ていた斎藤が小さく息を吐く。
「で?」
同じ様にその様子を見ていた土方に話を促され、小さく頷くと昼餉を終えた後に自分が見ていた事を話し始めた。
続く