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ちょっと更新するまで日にちが開いてしまいましたが、お待たせしました千鶴ちゃんシリーズ7話です。
と、その前に。

30,000HITありがとうございます!!

あまりにも早いカウンターの回り具合に、正直驚きが隠せません。
以前近藤さんが『大佐』と呼ばれていた頃に(笑)HPを持っていたのですが、その時でさえこんなに早く回ったことありませんでした。
どれだけ皆さんの薄桜鬼熱が強いのか!
私も例に漏れずなのですが。
もっと沢山更新できればいいなとは思うのですが、どうも遅くて申し訳ないです。
ちまちまとながらも書いていきたいと思いますのでこれからも宜しくお願い致します☆


千鶴ちゃん:7ですが、ほぼ土方さんしか出てきておりません。
しかも土方さんが若干危ない人になりかけている(滝汗)
しかも何だかちょっと甘い?
そんな内容ですが宜しければ右下の方からどうぞ。


 

 


「こんどぉしゃん」

 襖の向こうにいると思われる人に声をかける。
 すると返事が帰ってくる前に、足音が近付いてきてその襖が開けられ笑顔の近藤がそこにいた。

「どうした千鶴君」
「えと、ひじかたしゃんとへーしゅけくんとはんちぇいまれおでかけちてきましゅ」
「…は、はんちぇ?」
「あいじゅはんちぇいでしゅ」
「ああ、会津藩邸か」
「あい」

 そうかそうかと近藤に頭を撫でられ、千鶴も目を細める。
 土方に頭を撫でられるのはどちらかというと嬉しさと恥ずかしさが半分ずつ。
 だが、近藤に撫でられるのは何だかとても安心してしまう。
 その安心感の根底にあるものはやはり父親と同じ優しさと偉大さだろうか。

「トシと平助と共に行くのか」
「あい。ひじかたしゃんがこんどぉしゃんにもちゅたえちぇおけちょおっしゃいまちた」
「ははっ。成程、確かに今の君を預かっているのは俺だからな」

 ぽんと頭を撫でていた手で千鶴の頭を軽く叩き、近藤が立ち上がる。
 備え付けの箪笥の前まで進みゆっくりと屈むと、その引き出しから小さな布袋を取り出した。
 そして千鶴にその袋を渡す。
 かしょんと音を立てたそれは、多分間違いなく金子だ。

「こんどぉしゃん?」
「すまんが、出かけたついでに饅頭でも買ってきてくれんか?」
「おまんじゅうでしゅか?」
「ああ。それから残った金で君の好きなものも買って構わんよ」
「のこっちゃやっちぇ…こえ…」

 饅頭を買うのはもちろん構わない。
 お使いを任されるのは千鶴にとっては嬉しい事だ。
 だが、この重さ。
 饅頭を隊士全員に買ったとしても十分有り余る。
 永倉達が島原で贅沢三昧で遊んでもきっと足りるだろう。
 いくらなんでも多すぎだ。

「君くらいの女子なら、鞠つきなどして遊ぶのではないか?買っておいで」

 にこにこ笑う近藤に、何も言う事ができないのはきっと許されることだ。
 この笑顔には土方だって敵うまい。

(近藤さん…私を本当の幼子としてみていらっしゃるのね…)

 どうしよう、と悩んでいても仕方がない。
 余ったら土方から近藤に返してもらえば良い。
 ここは素直に受け取って、お礼を言っておこうと千鶴は金子の入った袋を胸に抱きしめた。

「あいがちょおごじゃいましゅ」
「こんな時にしか自由にさせてやれんからなぁ。あ、先程の茶も旨かった。ありがとう」
「こんどぉしゃん、おいちいおまんじゅうかっちぇきましゅ。しょのちょきにまちゃおちゃもおいれちましゅね」
「おお、それは楽しみだ。気を付けて行っておいで、トシ達の側から離れん様にな」
「あい、いっちぇまいりましゅ」
「いってらっしゃい」

 もう一度優しく近藤に頭を撫でられて、千鶴は自分の部屋に戻った。
 外は少し風が吹いていて肌寒い。
 帯に合わせた黄色い羽織を手に取ると、それを纏った。

「ほんちょ、かやいいよねぇ」

 羽織の裾の部分には何匹かの蝶が色とりどりの糸であしらわれており、羽織自体が『高価なんだぞ』と自己主張している。
 鋼道にもとても大切に可愛がられて育った自覚はあるが、こんな高級な着物は着た事がない。

(汚さない様に、本当に気をつけなきゃ)

 そう思いながら、小さな小物入れを開ける。
 これも昨日平助から渡された物だ。
 髪結いの紐や小さな櫛、手鏡まで揃っている。

「へーしゅけくん…ひちょちょおりしょよえちぇくゆんやもんなぁ…」

 苦笑をその顔に浮かべながら、いつも自分が使っている鏡の前に座る。

(ああ…本当に幼子だ)

 昨夜、自室に戻ってきてこうして鏡を覗いた時にも同じ事を思った。
 信じられないけれど、確かにそこに映っていたのは幼い少女。

(あ、急いで準備をしなきゃ。土方さんと平助君をお待たせしてしまう)

 沖田に挿してもらっていた簪をするりと外せば、さらさらとした髪が落ちてくる。
 その髪を櫛で梳いて、細い結い紐できちんと纏め上げた。

(良かったぁ、これくらいなら自分で何とかなった)

 着物は帯を締めるには力が足りず困ってしまったが、髪を結い上げることは何とかできた。
 頭の上の方で小さな山を作り紐で纏める。
 その山に沖田からの簪を挿そうとしたところで、

「千鶴、まだいんのか?」

 と障子戸の向こうから声が掛けられた。

「ひじかたしゃん?」
「開けるぞ」
「あい」

 簪を挿しかけていた手をそのまま下ろしそちらを見れば、障子戸を開けて落ち着いた色合いの羽織を纏った土方が姿を見せた。

「しゅみましぇん、もういきましゅ」
「女ってぇのは幾つになっても支度に時間がかかるもんなんだろ」

 気にすんな、と言いながら彼が部屋に入ってくる。
 千鶴の手にしていた簪に目をやり、千鶴の背後に膝を付く。
 簪を千鶴の手の中から取るとそっと髪に挿してやった。

「どうだ?」
「あ、あいがちょおごじゃいましゅ」

 鏡の中の土方に尋ねられ、千鶴も鏡の中の彼に微笑んで見る。
 んじゃ行くかと立ち上がりかけた土方の袖を千鶴は振り返りざまに引っ張った。
 そんな事で均衡を崩しこけてしまう土方ではないが、少々驚いた様子で視線を向けてくる。

「どうした」
「あの、こえを」
「声?」
「こえでしゅ」
「…ああ、これな」

 千鶴が差し出してきたのは、先程近藤から貰った金子の小袋。
 それを土方が受け取り、手の上でぽんぽんと軽く投げる。

「随分入ってんじゃねぇか。お前、こんなに持ってたのか?」
「ち、ちやいましゅよ。しゃきほどこんどぉしゃんにいたやきまちた。おまんじゅうをかっちぇきちぇほちいと。そえから…」
「それから?」
「いまのわたちくらいのこはまいちゅきちたりちてあしょぶものやりょおとおっしゃっちぇ」
「まいちゅき…?……ああ、鞠つき、な」
「こんどおしゃんのなかではおしゃなごとちてていちゃくちてちまっちぇいるようでちて…」
「良いんじゃねぇか?元に戻っても、鞠は邪魔になるもんでもねぇし」
「しょえはしょおでしゅけど」
「近藤さんがそう言ってんだろ?だったらそうしとけ」
「う…」
「元の姿のときもな、近藤さんはお前の事をいつも不憫に思っていたんだ。年頃の娘に男装をさせて屯所の奥に閉じ込めて、ってな」

 膝に手を付き、土方は立ち上がると千鶴を見下ろしてきた。

「今の姿なら大っぴらに可愛がっても不思議はないし不自然でもねぇだろ。ま、娘さんをお前に重ねて見ているのかも知れねぇけど、近藤さんの厚意だ。受けとけ」
「……まいちゅきをちているしゅがちゃをおみしぇちたや、よよこばえゆでしょおか?」
「きっとな。満面の笑顔で喜ぶぜ?」
「しょうでしゅか」

 千鶴がふふっと笑うと、

「取り敢えずこれは俺が預かっておく。ほら、遅くなる前に出るぞ。平助も玄関で待ってるしな」

 土方がそう告げ部屋を出る。
 千鶴は頷くと小物入れの中にあった小さな手提げに、櫛や桜色の手拭などを入れ込み土方の後を追った。
 部屋を出て縁に出れば、すぐ近くに土方が待っており千鶴が側に来るとひょいと左腕に抱き上げた。

「ひじかたしゃん…?」
「さっきみたいな事があっても面倒だしな、大人しくしとけ」

 息のかかるほど間近で、そう言われる。

(……ひ、土方さんまでもが笑顔…子供の力ってすごい…)

 微笑みかけられているのは自分だが、それはいつもの千鶴ではなく幼くなった千鶴にだ。
 それを思うと何故だか胸の奥がちくりと痛んだ気がした。

(新選組の皆さんは私ではなくて、小さな子供に接していらっしゃるんだってちゃんと分かってなきゃ変な誤解をしてしまいそう…)

「千鶴?何だ、具合でも悪ぃのか?」
「い、いえ…ちやいましゅ。みなしゃん、ちいしゃくなったわたちをよくこおちてだっこちてくだしゃゆんでしゅが、かゆがゆとだっこしゃえゆのでしゃしゅがやなぁっちぇ」
「お前ぐれぇのガキを抱き上げるのに力なんざ必要ねぇって」

 廊下を進みながら言う土方の肩に千鶴はこてんと頭を乗せる。
 それは意識して取った行動ではなかったらしく、本人も特に気にしていない様子だ。
 だが、その仕草から普段見せる事の無い千鶴の本質を見た気がして、土方はちらりと横目で千鶴を見た。

(こいつは本当は意外なほど甘えたなのかもしれねぇ)

 それを思うと、鬼と云われし土方でさえ罪悪感を感じてしまう。
 普段は何があっても泣かないし、挫けたり諦めたりする事がない千鶴。
 暇さえあれば何かすることはないか、お手伝いできることはないかと尋ねてくる。
 それは彼女の性格でもあるのだろうが、そうやって新選組に溶け込もうとしている彼女なりの処世術なのかもしれない。

(父親が戻らず、不安で寂しくてどうしようもねぇから一人で京までやって来てんだよな)

 普通の子供ならきっとそんな事はせずに、大人しく帰りを待っているのではないだろうか?
 寂しさに耐えられなくて、京まで探しに来たのだとすれば。

「なぁ、千鶴」
「あい?」

 小さな瞳が上目遣いに見上げてくる。

「今日の外出では鋼道さん探しはちぃっと忘れてみねぇか?」
「わしゅえゆ?」
「本当に、ただの子供として、自由に楽しんでみろって言ってんだ。鋼道さん探しはまた明日から、元に戻ってから始めりゃいい」

 普段はきっと甘えさせてやる事など出来はしない。
 だから、こんな時だからこそ、何もかも忘れて自由に楽しませてやりたいと思ってしまう。

「折角その幼い姿なんだ。そりゃ、お前にとっちゃぁ複雑な心境かも知れねぇけどな、思い切って俺達に甘えてみろ」
「あ、あまえゆ?」
「思い切り我侭言ってもいい。普段我侭に付き合ってやれる暇なんざねぇし甘やかしてやる暇もねぇ」
「ひじかたしゃん」
「いつものお前を構いすぎてりゃ他の隊士も不自然に感じるだろうしな。けど、今は微笑ましいくらいにしか見えねぇだろ?」
「けど…」
「お前が、俺達に甘やかして欲しいたぁ思ってねぇのは分かるんだがよ、男としちゃあ…」

 ああ否なんでもねぇ、と危うくらしくない事を口走りそうになった土方はゴホンとわざとらしい咳払いをして話を続ける。
 
「なぁ千鶴。これはお前への休憩と褒美だって思ってみねぇか?お前は一人でこんなとこまで来て、無骨で無頼な野郎ばかりの中でそいつらの世話をしてくれるだろ」
「きゅうけぇとほおび…?」
「感謝してるんだよ、俺らもな」
「しょんな、わたちのほおこしょ」
「ほら、それだ」
「ふえ?」
「お前はいつも自分自身よりも回りを立ててくれんだろ?今日は、俺達の感謝の気持ちを真正面から受け止めろ。それ以上は考えなくていい」
「ひじかたしゃん…」
「今日は思い切り遊んで甘えて楽しんで、その小さな姿を武器に満喫しろ」
「ひじかたしゃん」
「今日ぐれぇは俺も付き合ってやるよ。急ぎの仕事も入ってねぇしな」
「ひじかたしゃんっ」

 普段は見せる事のない優しい笑顔と、温かな言葉に千鶴の涙腺がゆるむ。
 小さくなってちょっと泣き虫になってしまったのかもしれない。
 でも土方に貰った言葉が嬉しくて、思わずその首に抱きついた。

「ひじかたしゃんひじかたしゃん」
「んだよ?」
「あいがちょおごじゃいましゅ」
「ったく、お前は巻き込まれてんだろうが」

 ぽんぽんっと背中を叩いてやりながら土方は苦笑する。

「おこちょばにあまえちぇ、きょおはこのしゅがちゃをたのちましぇていたやきましゅ!」
「ああ、そうしてくれ」

 身体を離して、嬉しそうに笑う千鶴がその笑顔のまま、

「ひじかたしゃんも、ほかのたいちのみなしゃんもきっとすてきなおとおしゃまになられましゅね」
 
 という。

「みなしゃんのやしゃちいあたたかしゃが、しゅごくしゅごくあんちんしゅゆんでしゅ」
「そ、そうか」

 涙目で潤んだ綺麗な瞳を幸せそうに細める幼子。
 両の手で赤くなった頬を挟み、えへへと笑う千鶴。
 その笑顔を前にして土方は自分と戦っていた。

(あぁぁ、総司の気持ちがいてぇほど分かる…)

 可愛い可愛いと連呼し、暇さえあれば膝の上に座らせたりその腕に抱きしめたりしていた沖田。
 成程。
 きっとあいつもこんな気持ちなのだろう。
 むぎゅっと音がしそうなほど、堪らず思い切り抱きしめる。

「ひ、ひじかたしゃん??」
「うるせぇ。…黙って抱かれてろ」
「あ、あい」

 そう返事をすると千鶴は力を抜いて土方に擦り寄ってきた。
 甘えても良いと許可を貰ったという事もあって、何だか自然とそうする事が出来る。

(総司、今回ばかりは俺はお前を止める事はできねえし叱り付ける事も出来ねぇよ)

 擦り寄ってきた千鶴からは子供特有の甘い匂いが仄かに漂い、土方の鼻腔をくすぐった。

(何なんだ、この可愛い生きものはっっ!!)
(ふふっ、土方さんから墨の匂いがする)

 あまりにも来るのが遅い二人を藤堂が呼びに来るまで。
 後にも先にもきっとこの時だけだろうあまりにもありえない光景が、その場で繰り広げられていた。
 
 とか。

 

 

続く… 

 


 

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