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80,000HITありがとうございます!
本当に嬉しいです。
これからも頑張ります☆

最近『夫婦』という漢字を見ると『ふうふ』ではなく『めおと』と読んでしまいます(笑)
『めおと』の方が何となく可愛くて好きだったりします。

今回も近藤さんが暴走しているというか土方さんが暴走しているというか…。
千鶴まで暴走したというか…。
まあ、取り敢えず君達落ち着こうよと思って頂けると本望です(苦笑)

小説は右下からどうぞ。

 

 


「あ、あの」

 突然の近藤からの求婚。
 もとい、近藤の口から告げられた土方からの求婚?に千鶴は戸惑う。
 それは確かに戸惑ってしまう事なのだが。

「トシも君のような女子と所帯を持ちたいと言っておってなぁ」
「近藤さん近藤さんっっ」

 流石の土方も焦りを隠せない。
 しかし当の近藤は土方の静止などに聞く耳を持たず…。

「君のように可愛くて若くて、何よりもトシの世話を焼ける娘などこれから探してもそうはいない。是非、トシの嫁になってくれ」
「あの、えと、その…」
「雪村君はトシが嫌いかね?」

 近藤に詰め寄られ千鶴はぶんぶんと首を横に振る。

「そんな事っ。御迷惑をおかけしているのに、何かと良くして頂いております。感謝こそすれ嫌うなど!」
「という事は好いているという事でいいのだね?」
「近藤さん暴走しすぎだっ!ちょっと落ち着けよっ」
「トシは黙っていろ。雪村君正直に答えて欲しい」
「黙ってろってそれおかしいだろ!無視しろ千鶴っ」
「トシが好きかい?」

 あまりにも直接的な質問に、とうとう千鶴は顔を俯かせてしまった。
 顔が真っ赤なのだろうという事は、耳まで赤く染まっている事で見て取れる。

「俺は君がトシの嫁さんになってくれたら嬉しいし、安心なんだが」
「だから近藤さん、あんたは」
「トシ、考えても見ろ。雪村君はお前が先程言っていた理想の女性像にそのまま綺麗に当てはまる女子ではないか!」
「そ、れは…」
「そんな女子がいたら絶対惚れると言ったろう?」
「絶対とは言ってねぇ。…間違いなくとは言ったが…よぉ」
「間違いなくも絶対も同じだろうに。だが、嫁に貰っても良いとは言ったな?」
「うっ………言ったよ」
「ではトシお前にも聞くが」

 近藤は千鶴の手を解放して土方に向き直る。
 土方にも座れと指で示し、彼がそうすると真剣な眼差しで問いかけてきた。

「トシは雪村君が嫌いなのか?」
「そういう聞き方はずるいだろ…」
「嫁が雪村君では何か不満があるのか?」
「あのな近藤さん」
「こんなに可愛らしいお嬢さんなんだぞ!次に何時こんな良縁があるか分からんのだぞ!」
「……だから」
「据え膳は頂かんか!」
「言葉の使いどころ違うだろっ!!」

 目の前で繰り広げられる舌戦を千鶴は纏まらない頭で眺めていた。

(私が…土方さんの……お…お嫁さ、ん?)

 近藤の言葉は何もかもが驚く事ばかりで、それが本当に真実なのか、それともこれ自体が夢なのか分からなくなってくる。

(お嫁さん…お嫁…さん…………よ…め?)

 新選組の土方といえばそれなりに名の知れた人で、父親の事がなければきっと言葉を交わす事すらなかったのだろう。
 色々と縁があって、彼らの元へ身を寄せていはいたが。
 まさか、縁談が持ち込まれるとは、予想すらする事はなかった、のに。

(土方さんの…わた、しが?お嫁さん??)

 女として生まれたからには、いつかはどこかに嫁ぐのだろうとは思っていた。
 幼い頃の夢はと問われれば『お嫁さん』と答えるかもしれない。

「千鶴!お前からも近藤さんに何か言ってやれ!」

 一生懸命考えていた所に、突然発言権が渡される。

「は、はいっ!?」
「お前だって言いたい事あんだろうが!」
「え、えっと、あのっ」
「雪村君。トシの嫁にっ!」

 押し迫ってくる二人の勢いに千鶴の思考が落ち着く事も、纏まる余裕もなかった。

「雪村君!」
「千鶴っ!」

 さぁ、答えをとばかりに名を呼ばれ…。
 慌てた千鶴が言った言葉は、

「ふっ不束者ではありますが、末永く宜しくお願い致しますっ!」

 だった。
 部屋の中が静まり返る。
 静かになった事で、慌てていた心が少し落ち着きを取り戻した。
 落ち着いた心が疑問に思った事は、自分がたった今言った言葉。

(あ、れ?)

 近藤と土方に返事を迫られて、慌てた自分は何と答えた?

(わた…し?)

 恐る恐る顔を上げる。
 そこには対照的な表情の男が二人。

「雪村君!」

 よくぞ言ってくれたとばかりに満面の笑顔で頷く近藤。

「……………っ」

 酸素を求める金魚の様に口をパクパクさせている土方。

「……あ、れ?」

 そして、言った千鶴本人さえも固まってしまう始末。

「有難い。ああ、本当に有難い!」
「あ…え、と…」
「そうか、うんうん。これでトシもようやく所帯持ちか!」

 感極まって涙ぐむ近藤に、

「「………」」

 土方も千鶴も揃って何も言えない。
 と言うか、言葉が出て来ないのだ。
 今、自分達が置かれている現状に思考がもう追い付かないでいる。

「そうとなれば今夜は赤飯だな!目出度い事は皆で祝わねば」

 今夜の当番は源さんだったな、と言いながら近藤は部屋から出て行ってしまった。
 本当なら近藤を止めるべきなのだろうが、頭も身体も動かない。

「あ、のっ!」

 そんな中で先に発言し動き出したのは千鶴だった。

「わ、私っここを片付けます!」

 先程まで生けていた花達の切り取った茎や葉が千鶴の周りに散らかっているのだ。 
 バタバタと片付け始めた所為で一緒に鋏があった事を忘れていた。
 鋏の先が千鶴の手のひらに触れる。
 ちくりとした感触があり、

「痛っ」

 思わず持ち上げた鋏をカシャンと畳の上に落してしまった。
 その音と声で土方も我に返る。

「怪我、したのか?」
「い、いえ、いいえ。大丈夫ですっ」
「馬鹿、刃先を握ったんだろっ。見せてみろ!」
「へっ平気ですっ!」

 ちくりと感じた右手を、土方が伸ばしてきた左手から逃げるようにスッと後ろに引く。
 逃げられた事になぜか軽く腹が立つ。

「見せてみろって」
「大丈夫ですと申し上げました!」
「だったら見せろっ!」

 座っていた土方が身を乗り出して千鶴の手を掴もうと右足の膝を立て、足の裏を畳みにつけた。

「手を見せっ…うわっ!?」
「平気でっ…ふぇっ?」

 足を踏ん張ろうとしたそこには、千鶴が切っていた花の茎が。
 円柱形のそれは硬さもあり、小さい物がいくつかあった。
 つまり、足の裏の下でころりと転がるわけで。
 という事は、

  ドサッ

 踏ん張りが利くはずも無く、土方はそのまま前のめりに倒れてしまった。
 伸ばした手で千鶴の手首を捕まえたままである。

「いってぇ」
「………っっ!」

 そして、必然的にこういった体勢になってしまった。
 それに気が付いていない土方と、どうしていいのか分からない千鶴。
 身体を起こした土方と千鶴の目が合った時、お互いの顔がありえないくらいに近かった。

「…っ?」
「ひ…ひじ、かた…さっ」

 二人の体勢はどこからどう見ても、押し倒し、押し倒された様にしか見えない。
 まぁ、事実そうなのだが。
 土方は千鶴の手首を掴んだままなので無理やり組敷いている様にも見えない事も無い。

「大丈夫…か?」
「うあ…え、あの…はい」

 こういう体勢で、この状況で、何故だか冷静になってしまう。
 
「悪い」
「いえ」
「手、本当に大丈夫なんだな?」
「本当に大丈夫です」

(土方さんって本当に綺麗だなぁ…)

 間近にある顔を思わずまじまじと眺め、千鶴が瞬く。

「何だよ?」
「いえ…その、こんなに近くで土方さんのお顔見るの初めてだなぁって…」
「お前…押し倒されて思う事がそれか?」

 妙に落ち着いてしまった二人は、離れるという行動をとったのが少し遅かった。
 お互いに顔を見合わせたまま苦笑し、土方がもう一度悪かったなと告げ千鶴の上から離れようとした、その時。

「大きな音がしましたけど近藤さん何かあ……ったみたいですね?」

 第三者の声が掛けられた。
 それは土方と千鶴が共通して最も見られたくなかった男の声ではなかったか?
 二人仲良く声のした方へ顔を動かすと。
 やはりそこにいたのはニヤリと笑う、一番組組長沖田総司の姿が。

「ふ~ん。そういう事なんですか」
「総司…ちょ」
「近藤さーんっ!土方さんがお小姓を襲ってますよーーーっっ!」
「総司ーーーっっ!!」

 慌てて土方が起き上がり、沖田を止めようとしたが間に合うはずも無く。
 彼は大きな声で叫びながら走っていってしまった。 
 土方もそれを追いかけて部屋から出て行ってしまう。
 残されたのは何とか起き上がり、呆然と座り込んだ千鶴のみ。

「ええっと…」

 色々な事が一度に起こり過ぎて、何がなにやら収拾が付かない。
 ただ1つ。
 はっきりとしている事が千鶴の心を占めだした。

「私が…土方さんの………お嫁さん……」

 口に出していってみると、落ち着いていた心の臓がまた騒ぎ出す。

「うわわわ…え、ええーーーっっ!」

 近藤の自室で真っ赤になった千鶴が片付けを始めたのは、それからまた暫く経ってからの事だった。

 

 

続く

 



 

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