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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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90,000HITありがとうございます!
ありがたい事に10万HITも夢ではなくなりそうですので、感謝&お礼小説を今ちょこっと考え中です。
楽しみにして頂けると頑張り甲斐があります!

そういえば薄桜鬼の舞台『炎舞録』のDVDが来たので見ました。
土方さんの(早乙女君の)殺陣が本当に綺麗で凄くて見惚れました!
千鶴が戦える設定も何気に気に入ったし、つか、千鶴が可愛い。
役者さん皆いい味出してて満足しました!
生で観たかったなぁ…。

夫婦騒動録ですが、そろそろ他の幹部も巻き込んで大騒ぎになりそうです。
何というか、土方さんがもう別人です。
先に謝らせて頂いときます、スミマセン。

そんな小説は右下からどうぞ。

 

 


 近藤が暴走した事で、何故だか土方と千鶴の縁談がとんとん拍子に進んでしまった日の夕刻。
 板張りの広間には夕餉の膳が並べられ、幹部達も集まりだしていた。

「源さん、近藤さんは?」

 いつもの上座に近藤の膳が無い事に気が付いたのは藤堂だった。

「何でも急ぎの用事が入ったとかで、勇さんは出かけてしまってね」
「ふーん。土方さんと……あと、千鶴の膳もないけど」
「ああ、トシさんと雪村君の分はこちらに運ぶ前に勝手場にトシさんが来て、大事な話があるから部屋で食べると持っていってしまったよ」
「千鶴の分も?」
「ああ」

 井上の言葉に怪訝そうに首を傾げる藤堂。

「大事な話って、何なんだ?」
「さてねぇ。私もよく分からないんだよ。ただ」
「ただ?」
「お昼過ぎに勇さんが私のところに来たんだが…」

 井上は昼過ぎに、突然満面の笑顔で自分を訪ねてきた近藤に驚いた事を話し出す。


『どうしたんです、勇さん』
『今日の夕餉の当番は源さんでしたな』
『ええ、そうですよ。何か召し上がりたい物でもあるんですか?』
『赤飯を炊いてはもらえんだろうか?』
『赤飯?……小豆を一晩水に浸してしておかないといけないので今晩は無理ですよ?』
『無理か?』
『ええ。何かお祝い事でも?』
『ああ、とても良い祝い事なのでな!では、明日ならば赤飯が炊けると思っても?』
『大丈夫ですよ。当番の人に伝えて…ああ、確か明日の朝は雪村君ですね』
『ん?否、雪村君はいかんよ。そうだなぁ明日は当番を誰か代わってやってくれないだろうか?』
『祝う相手は雪村君ですか?』
『もう一人いるが…おっ!そうだ。こうしては居られん。すまんが源さん』
『はい?』
『俺は大事な用があるので出かけてくる。夕餉は外で済ませてくるので俺の分は必要ない』
『承知しました』


 終始にこにこ笑顔だったよと、自分の膳の前に腰をおろしながら井上が言った。

「近藤さんが祝いたい事って何だ?」
「千鶴と、もう一人って…?」

 話を聞いていた永倉と原田も首を傾げる。

「千鶴になんかいい事あったのかな。一君何か知らない?」 
「俺も何も聞いていない。…局長と副長が戻られる少し前に雪村に会ったが、別に何も変わった様子は無かった」

 いつもの顔触れが揃って上座の方へ視線を向ける。
 大事な用事で居ない近藤に、何故か副長室で食事を取っているらしい土方と千鶴。
 何事だ?とそれぞれが首を傾げたり眉を寄せていた時。

「僕、何となく分かるかも」

 そう言って縁側から入ってきたのは沖田だった。

「総司!え、なになに?何か知ってんの?」
「僕見ちゃったんだよね~」

 ニヤニヤ笑いながら、いつもの場所へ沖田が腰を下ろす。

「おい総司。何を見たんだよ」
「もったいぶってねぇで話せって」
「……いい加減な事ではなかろうな?」
「あ、一君酷いなぁ。僕だって何時もいつも土方さんをからかって遊んでるわけじゃないんだけど」
「総司…」
「一君今はそれはいいじゃん。それより、何を見たんだよ総司」
「ん~。普段絶対見れないもの?」
「そーじぃ…」
「だから」

 お猪口に注いだ酒をくぴっと一度あおってから沖田は言う。

「土方さんが千鶴ちゃんを押し倒しているところ」

 爆弾とも言えるその発言に、広間内が瞬時に静まり返り。

「「「ええええぇえええぇええっっ!!!」」」

 その次の瞬間には耳を塞ぎたくなる様な、叫び声に近い驚きの声が響き渡った。

 

 

 と、広間で騒ぎが起こる少し前。
 土方の部屋には二人分のお膳が置いてあり、それぞれがその前に座っていた。
 いただきますと食べ始めたのはいいが、ただ黙々と食べ続けるばかりで会話の1つも何も無い。

(ど…どうしよう…)

 少し話がしたいと土方に言われ、彼の部屋で二人きりで食事を取っている。

(言われるままお部屋にお邪魔しちゃったけど…お料理の味が全然しないよ…)

 ちらりと目の前の土方を見れば、彼はやはり黙々と食事を取っている。
 だが、話があると言ったのは彼だ。
 話とは、やはり昼間のあれだろう事は予想が付く。
 このままでは食事の味がしないどころか喉さえ通らない。
 意を決した千鶴が口を開きかけたが…。

「お前は」

 そんな千鶴の決意を止めたのは、土方その人だった。

「さっきのどう思ってんだ?」
「どう、ですか…?」
「突然降って沸いた様な話じゃねぇか。近藤さんの勢いもあったけどよ」
「えっと…私は…その」
「こんな年が一回り以上離れた男なんてよ」

 土方はそう言って味のしみ込んだ里芋を口に含んだ。

「それを言うなら…私だって…一回り以上も年の離れた……土方さんからすればただの小娘です…」

 千鶴は食事を口に運ぶ気分にはなれず、膳の上に箸を置いた。

「急なお話ですけど…いつかは…どこかに嫁ぐものだと思っていました…」
「覚悟はしていたって事か…?」
「覚悟とか、そういうのではないです。ただ小さい頃から父様…父によく言われていたので」
「鋼道さんに?」
「お前の相手は私が見つけてやるからなって。父は必要以上に私が外に出たり人と係わる事を嫌っていましたから…」

 千鶴の口から出た言葉は、土方も初めて聞く事柄だった。

「江戸にいた頃、好いた奴とかいなかったのか?」
「そんな人はいません。友人すら…居ないんです…」

 寂しそうに目を伏せる千鶴に驚きを隠せない。
 千鶴の様な娘はきっと男にも女にも好かれるのではないかと思う。
 恋人と呼べる者が居ないというのはまだしも、友人が居ないという事には驚いた。

「見たことも無い、どこの誰かも分からない人の元へ嫁ぐのは…こんな時代ですから、きっと私だけではないと思いますし…。ですからどんなに急なお話であっても、好いた方の元へ嫁げる事はきっと凄く幸せなんだと思います…」

 そう言った千鶴は湯飲みを持ち、食事の前に淹れたお茶をゆっくりと含んだ。
 そんな千鶴を見ながら土方はまた里芋を口に入れる。

(気付いてねぇんだろうか……気付いて…ねぇんだろうな) 

 千鶴が言った言葉は要約すれば『自分は好きな男の元へ嫁げるのだから幸せだ』ということであり。
 つまりは『貴方が好きだから嬉しいです』という事であって。
 
(何だ…俺はこいつに好かれてたのか)

 そんな風に思っていた時突然千鶴が顔を赤らめ俯いてしまった。
 どうやら自分の発言に気が付いたらしい。

(顔真っ赤にしやがって…確かにこいつは可愛いんだよな…)

 袴をぎゅっと握り締めて恥ずかしさに耐えている千鶴を観察する。

(料理も洗濯も裁縫も掃除も殆どそつなくこなすし、よく働く。護られてるだけじゃなく自分で何とかしようとする性格も、俺からしちゃあ好ましい…。見た目はまだ幼さは残るがそれでも将来はかなりの有望株だ。少し高めの声も嫌いじゃねぇし、まぁ身体付きは今後に期待しつつ育てるもよし)

 真剣な顔付きで千鶴を見ながら、後半は結構失礼で際どい事を考えている土方だが千鶴はそれを知るよしもない。

(今回の縁談は…俺にとっても悪いもんじゃねぇんだよな…けど)

「千鶴」
「はっはい」

(悪くねぇって思えるからこそ)

「今回の話は無かった事にしてくれ」

(流されて纏まるのは絶対によくねぇ)

「悪い」
「……土方さんが…仰るのでしたら…」
「あのな千鶴」
「そう…ですよね。土方さんにはもっと素敵な」
「そうじゃねぇんだよ」

 段々と落ち込んでいく千鶴に土方が待ったをかける。

「あのな正直な話、近藤さんが勢いで纏めかけてるこの縁談なんだがよ。俺からしても悪いもんじゃねぇんだ」
「え?」
「近藤さんが言ってたろ?お前は、その何だ…俺の理想としている女そのものなんだよ…どんぴしゃだ」
「…っ!」

 突然の告白めいた言葉に千鶴は呼吸が止まりかける。

「ただ…今まではお前の事をそんな対象としてみてなかったからよ…意識して見てみりゃあ、確かにそうなんだよな…」
「あ、の…」
「だからだ」
「?」
「勢いのまま、こんないい加減に纏められちゃあ…男としても情けねぇっつーか」
「土方さん…」
「それに何で突然こんな話になったのかも話してねぇしな」

 どこか困ったように笑う土方に、千鶴も漸く落ち着きを取り戻しこくりと頷いた。

「何か理由がおありなのでしたら…お聞きしても宜しいですか?」
「ああ。…実はな」

 島津屋であった会話の事を包み隠さず話す。
 持ち上がったお見合いの事、近藤の大胆な嘘から始まった攻防戦。
 そして、茶会の事。
 全てを話し終えた後で、土方は千鶴に頭を下げる。

「悪かったな、巻き込んで」
「や、やめてください土方さん。悪い話じゃなかったというお言葉だけでも私は…嬉しかったです…残念では…ありますけど……」
「千鶴」
「その、お茶会では土方さんの奥さん役が必要なのですよね?私でお役に立てますか?」
「千鶴」
「私に出来る事でしたら喜んでお手伝いを」
「千鶴」
「私は…」
「俺が正直に話したのは後からこれを知ったお前が傷付くのが嫌だったからだ」
「土方さん…?」

 土方が自分お膳を横に除け、膝を付いたまま千鶴の前に来ると千鶴の膳も横に除けた。

「後からの方が傷付くだろ、お前は」
「………」
「だから…。…言ったよな、俺にとっても悪い話じゃねぇって」
「っ?!」

 袴を握っていた手を土方に持ち上げられ、千鶴は驚いて顔を上げる。

「もう1つ正直に言やぁお前を他の誰かに渡すのは勿体ねぇって思っちまってる」
「……本当…ですか?」
「けど、今日こんな事があるまでお互いを男と女として意識してなかったろ?」
「…優しい方だとは…思っておりました…」
「…それはありがとよ。で、だ」
「はい」
「婚姻だなんだという前に、お互いをそういう風に意識する期間を設けねぇか?」
「…意識する…期間?」
「将来添い遂げる相手に相応しいか、千鶴も俺を見定めろ」
「わっ私は」
「千鶴。俺だってお前を嫌ってるわけじゃねぇんだ。だから、茶会までお互いの気持ちが変わらないようなら、その時は」

 握っていた千鶴の指先に土方がチュッと口付ける。

「正式に求婚させてもらう、どうだ?」
「あ…あっあのっ」
「うん?」
「私は、土方さんが望んで下さるのでしたら…それで…」
「千鶴」
「は、はい!」
「ったくお前って奴ぁ」

 顔を赤らめながらもしっかりと自分を見詰めてくる千鶴の頬に、土方がそっと触れる。

「兎に角、宜しく頼む」

 土方の見せた笑顔がとても柔らかくて優しくて。
 それがとても嬉しかった千鶴は、はいっと同じ様な笑顔で答えた。

「宜しくお願い致します」

 落ち込みかけていた千鶴に笑顔が戻った事で安心した土方が、彼女から離れようとした。
 その時。

「土方さんっ!千鶴を押し倒したってどういう事だよっっ!!」

 広間で沖田から話を聞いた藤堂が思い切り襖を開けて怒鳴り込んできた。
 二人が離れる暇などやはりどこにも無かった。
 土方の左手は千鶴の手を握り、右手は頬に宛がわれ。
 そして何より藤堂が見た瞬間の二人は何故だかとても幸せそうに微笑みあっていた。

「……………そういう関係…だったんだ……。土方さんの破廉恥めーーーっっ!!」

 少なからず千鶴の事を想っていた藤堂は涙ぐみながら走っていってしまった。
 土方の部屋にいた二人は固まったままだ。
 そして思う。

((またこの展開…))

  

 

続く



 

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