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本当は5月5日にUPしたかった物語だったり…。
4日・5日とウロウロしてたら書き上げる体力が残らなかった現実…。

本当は土方さんお誕生日(旧暦)おめでとう話も考えたんですけど、子供の日なので(だった、か)子供話を。
つまり今回はED後(長女のみ)のお話です。
これの続きで書きたいものもあるんで、それもまたいつかUP出来たらなとは思いますが、まだきっと暫く後ですね。

そんな親子話は右下からどうぞ。


 

 


「なぁにやってんだ、女房殿」

 苦笑混じりにその背中に言ってやれば、小さなその肩が震える。
 そしておずおずといった感じにこちらを振り返った。

「…と、歳三さん…い、何時からそちらに?」
「そんなに前じゃねぇけどよ…」

 そう言って彼女に近寄りすぐ傍に膝を付いた。

「お前、これ持って来てたのか?」

 歳三が指す【これ】とはとても懐かしい浅葱色で、今それは彼女が纏っていた。

「あの…ちゃんと御許可は頂いてたんですよ?…近藤さんに」

 何となく気まずいのか、言い訳をする様に上目遣いでこちらを見上げて来る。

「私も忘れていたんですけど…行李の中を整理していたら…その…」
「隊服が出てきたんで、懐かしくて着てしまったと」
「…はい…その…申し訳ありません。新選組の大切な物なのに…軽々しく着てはいけないとは思ったんですけど…どうしても、憧れてて…」
「憧れ?」

 夫の言葉に千鶴が頷く。

「浅葱色の隊服は新選組の団結の色で覚悟の色で…新選組にいても私は着る事ができなくて…」

 実はちょっと寂しかったんですよと、千鶴が笑う。

「お前を隊士として認めた時にはもう洋装になってたしな。別に着たからって咎めやしねぇよ」
「…はい、ありがとうございます。あ、でも」
「?」

 千鶴は纏っていた羽織を脱ぐとそれを歳三の方へ差し出した。

「んだよ、着ろってのか?」
「はい!お嫌でなければ…歳三さんの隊服姿を拝見したいです」

 最愛の妻に笑顔でお願いされて断れるはずがない。
 何年も前に脱いでしまった隊服だが、何だかこうして見ると感慨深い。
 千鶴から受け取った隊服を歳三はしばし眺めた後、すくっと立ち上がり手にした隊服を翻し、袖を通した。
 久しぶりとは言えど、これに袖を通すと気が引き締まる感覚になる。

「どうだ?」
「とても素敵です。けれど何だか不思議ですね」
「うん?」
「髪の短い歳三さんの隊服姿はこれが初めてですから」
「まぁそうなるな」
「………あの」
「何だ?」
「えっと…歳三さん」
「どうした?……んだよ、ほら遠慮すんな…来い」

 ゆっくりと立ち上がり自分の正面に立った千鶴の視線の意味を正しく理解した歳三が、笑って両手を広げる。
 夫のその行動に何だか嬉しいのと恥ずかしいのと入り混じった気持ちになったが、やはり嬉しいという喜びの方が勝った。

「歳…土方さん」

 そう言ってその腕の中に飛び込む。

「これも初めてです」
「これ着てた頃はお前の事は小娘だって思ってたからな。…今思えば勿体無い事をしたよな」

 隊服姿の自分の腕に飛び込み抱きついてきた千鶴。
 彼女の細い腕がしっかりと背中に回される。

「副長の腕の中は安心しますね」
「なんだなんだぁ?夫の腕の中よりもか?」
「黙秘します」
「おいこらまて」
「ふふっ」

 腕の中の千鶴を見下ろせば本当に楽しそうに笑っている。
 そんな姿は本当に愛おしい。

「千鶴」
「はい?あ…んっ」

 顔を上げた彼女の唇に歳三のそれが重なる。
 優しく触れたり、時に深く口付けたりを繰り返しているうちに千鶴の息が上がってくる。

「歳三…さん」
「千鶴、お前本当に堪らねぇぐらい可愛いよ」

 そう告げた歳三の手が千鶴の襟元にかかる。

「あ、駄目…です」
「嫌だ」
「いや…って…あ、やっ」
「千鶴」
「だめっ待ってくださ…やぁ」
「煽ったのはおめぇだろうが、責任取りやがれ」
「だ、だって、もうっ」
「千鶴、観念しろ」
「そうじゃな…」
「千鶴」
「歳三さん、待って…んっ」
「待てねぇ。…お前が」

 欲しいと歳三が続けかけた時。

「ととさまぁ、かかさまぁ?」

 小さな声が背後からかけられた。
 その声に二人してびくっと身体を揺すり、硬直してしまう。

「ととさま?………ふあぁぁ…おめめさめました」
「ち…千歳…。昼寝はもう終ぇなのか?」
「だから…待ってと申し上げたじゃないですかぁ…」
「…かかさまぁ…ちとせ、おのどかわいてます」

 寝起きの目を擦りながら二人の元へ寄って来た幼い愛娘に慌てて二人は離れる。
 しかし千鶴の着物は歳三によって乱されており、流石に娘に見られたくはないのか千歳に背中を向けた。

「す、直ぐにお白湯を持ってきますから、父様と待ってて下さいね」
「はぁい」
 
 娘が返事をするのとほぼ同時に千鶴は小走りで部屋を出て行った。

「千歳、父様と待っていような」
「はい…ととさま?」
「ど、どうした?」
「おかおあかいですよ?」
「―――っっ!」
「…おねつですか?」
「えええっっとだな」
「ととさまぁ」
「んん?」
「このおきもの…はじめてです」

 千歳はそういうと歳三が纏っている隊服の裾をちょこんと引っ張った。

「これは…大切な思い出の…羽織だ」
「たいせつ?」
「そうだな」
「たいせつはたからものですか?」

 自分を見上げちょこんと首を傾げる娘の姿は、妻である千鶴に良く似ていると思う。
 仕草は千鶴似なのだが容姿は驚くほどに父親である歳三そっくりだ。
 そんな娘をそっと抱き上げこつんと額同士を合わせる。

「宝物とは違うな」
「ちがうですか?」
「こいつは大切だが思い出であって宝物じゃねぇよ」
「ととさまのたからものってなぁに?」
「今のとこ、この世に二つしかねぇな」
「ふたつ?」
「ああ。千鶴とお前だ、千歳」
「かかさまとちとせ、ととさまのたからもの?」
「何があっても失いたくねぇ、大切な大切な宝物だ」
「じゃあ、ちとせもふたつです。ととさまとかかさまがちとせのたからものです」
「嬉しい事言ってくれるじゃねぇか」

 娘の可愛くも嬉しい発言に思わずぎゅっと抱きしめる。
 浅葱色のだんだら羽織。
 これを隊服として身に纏っていた頃は、自分がこんな幸せな生活を送れるなど考えもした事がなかった。
 だが、その過去が妻である千鶴と出会い想いを育む糧となったのも事実。
 辛いことが多かった。
 もちろんそれだけじゃなかった。
 だが、今以上の幸せがあったかどうかは分からない。

「お白湯持って来ました…どうなさったんですか?」

 お盆の上に白湯の入った茶碗を乗せて戻って来た千鶴が首を傾げる。

(ああ、やっぱりそっくりだな)

「ととさまとかかさまはちとせのたいせつなたからものなんですよ!」
「あらあら、すごく嬉しいわ。母様にとっても父様と千歳は大切な宝物ですよ」
「ととさまもかかさまもちとせもたからものふたつずつ、なかよしです」
「千鶴」
「はい歳三さん」
「うちの娘は世界一だな」
「はいっ」

 両親揃って親馬鹿なのは如何なものかと突っ込む者がここにいない事は果たして幸か不幸か。
 だがそんな両親の愛情を一杯注がれて娘はすくすくと育っていく。

「ととさま」
「ん?」
「ととさまのたからものはまだふえるですか?」
「……そうだなぁ…ま、母様の頑張り次第だな、な?」
「はい?…歳三さん?」
「つーわけだ。今夜辺りにさっきの続きに励まねぇとな」
「……―――――っっ!!!なっっ何をっお、仰ってるんですかぁ!!」
「何って、宝物増やす話だろうが、なぁ千歳」
「…う~んと…かかさまがんばったらたかたものふえるですよ!」
「ええぇーーーっっ!!」

 動揺のあまりお盆を落としかけた千鶴の代わりにそれを受け取り、歳三が悪戯小僧の笑みを浮かべた。


 歳三と千鶴が出会って早数年。
 二人の愛娘である千歳が生まれて4年が経った。

 三人暮らしももう直ぐ終わり家族が増えることになるのだが。

 それはまた別の物語。

 

「俺もまだまだ現役だ、安心しろ」
「げんえき?」
「元気って事だ」
「歳三さんっっ!」

 本日も雪村(土方)家は幸せ一杯です。


 

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