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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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最近はめっきり秋めいて朝晩が寒いくらいですが、皆さん体調は大丈夫ですか?
私は何とか元気です。

今日もとても天気が良くて、
『いい天気だな~。気持ちのいい午後は、お昼寝だよね・・・お昼寝っていったら…』
そんな感じで浮かんだのがこれ【薫風の好む場所】です。
土千前提っぽく沖千ではないけど…オール……まではいかないなぁ。
そう悩んで結局カテゴリーはオール扱いで(笑)
薫風は初夏の風のこと。
その時期の頃の事で書きたいネタがあったので、それにお昼寝を混ぜて、こうなりました。
またもや史実や妄想が混在してますが、宜しければ右下から覗いて行って下さいね。

 

 


 ―――慶応元年5月10日


 新選組屯所、西本願寺。
 その敷地内の北に位置する北集会所と太鼓楼をほぼ強制的に借り受け、丁度2ヶ月前に壬生村の郷士邸からの移転。

 表に裏に…色々理由と必要性があって慌しくそれは行われた。
 移転当初は片付けや何やらに追われていた隊士達もどうにか落ち着きつき始めていた、そんな麗らかな午後。
 爽やかな風が通り抜けるとある一室で、小さな音が繰り返される。


 ぷつり、しゅる

 ぷつり、しゅる

「………」

 ぷつり、しゅる

 ぷつり、しゅる


「ふあぁ…」
「沖田さん?」
「もう駄目…」
「はい?…って、えぇ??沖田さんどこかお具合でも「ああ、違う違う」悪……え?」

 同室で顎の下に交えた腕を敷いた状態でうつ伏せていた沖田の発した声に、少女は驚き、思わず作業をしていた手を止めて声をかけた。
 しかしその男はあははと笑い、そのままゴロリと仰向けに転がった。

「悪いかどうかで答えるなら、…そうだね、千鶴ちゃんがね悪いんだよ」
「私が、ですか?」

 沖田にそう言われ釈然としないまま千鶴は首を小さく傾げる。
 特に自分は何もしていないはずだ。
 している事といえば今手にしている着物の繕いくらいで。
 それが何か彼の気に障る様な事だったのだろうか?

「違うよ」

 千鶴の心の声を読んだかの様な沖田の物言いに、ますます訳が分からなくなる。

「ここ、この部屋って凄く日当たりが良いよね」
「あ…はい」
「こっちに移転する前にさ、皆で色々話し合ったんだよ。君は何処に置くべきか、ってね」
「はぁ」
「幹部の部屋の側って言うのは皆一致してたんだ…けど、…まぁこれはいいか。で、近藤さんがね、君には窮屈な思いをさせてるからせめて部屋は日当たりが良くて風通しの良い場所でなければ許さんって言い出しちゃって」
「そんな事が…」

 沖田が言いかけた言葉も気になったが、それよりも近藤の心遣いがとても嬉しい。
 千鶴に当てられた部屋は、近藤を始めとする試衛館の面子のどの幹部の部屋からも近い場所で、尚且つ一般の平隊士達の部屋からは遠い。
 彼女の部屋に行くには幹部の部屋の前を通り過ぎないと行けない。
 監視という名目ではあるが、ただ単に彼女の身を守る為という意味合いが最近では強くなってきた上での暗黙の了解の部屋割りだった。

 千鶴本人には伝えていないが。

 それだけ彼女の存在がこの新選組にとって大きなものに、そして意味合いも変わりつつあるのだ。
 主に食事。
 そして掃除、洗濯、裁縫などの点においては彼女に勝る者はいない。

「ここってさ昼寝には最適な場所なんだよ」
「それで何が駄目、なんですか?」
「それ」
「それ…?」
「君がやってる事」
「これ(繕い物)ですか?」

 沖田が言った言葉で、千鶴は何となく先程彼が発した言葉の意味が分かった気がした。
 時間が空いたので自室で繕い物をしていた時、やはり暇だからと言って沖田が尋ねて来た。
 暫くは何やら本の様な物を読んでいたのだがそれも厭きた様で、気が付けばうつ伏せになって千鶴の仕事を眺めていたのだが。

「お昼寝のお邪魔をしてしまいましたか?でしたら」
「それも違う」
「え?」
「邪魔じゃなくて…って言うか、邪魔って言うなら僕の方だと思うんだけど…」
「沖田さん?」

 後の方が聞こえなかった千鶴がまた首を傾げる。

「針を刺して糸を引いて、針を刺して糸を引いてっていう音が規則正しくてさ、眠くなっちゃうって事」
「え…ふふっ。そういう事なんですね」
「ここは流石にお寺だけあって元々静か…でもなかったけど今は静かだし」
「………ええっと…」
「いくら必要な事だからって、あれは武田さんを恨みかけたよ。昼寝の妨害もいいところだったしね」

 移転が終わり、頃合を見計らって武田観柳斎を師範に置いた軍事訓練が再開された。
 それは西本願寺の広い境内を使って行われた大砲の訓練で。
 いくら空砲であっても昼日中から聞こえる轟音に千鶴は身を震えさせていたのだ。
 しかし訓練は必要な事なのだからと千鶴自身は辛抱していたのだが、西本願寺の僧侶達は堪りかねたらしい。
 その訴えを受けた会津藩より洛中での訓練を中止する様注意を受けた為、それ以降は境内で轟音が鳴り響く事はなくなった。

「お坊さん達にちょっと感謝かな?」

 そう言って沖田が笑うと、口元に手を当てた千鶴もくすくすと笑った。
 大砲の訓練自体は月に2回ほど壬生寺の方まで出向いて行われる事になったのだが、会津藩から御達しであればそれは仕方がない。

「では、私は繕い物を続けてもいいのですか?」
「ん?ああ、どうぞ。あ、でも待って」
「はい?」

 仕事に戻りかけた千鶴に待ったをかけた沖田は、仰向けからまたうつ伏せ状態に戻る様に転がりもぞもぞと這い寄って来る。

「沖田…さんっっ!?」
「ちょっと低いけど、まあ良いか」
「いっいいっ良いかって、あ、あの!」
「もう、煩いよ。君まで僕の安眠妨害する気?斬っちゃうよ?」
「ふっふぇぇっ!?」

 正座をしていた千鶴の腿の上に再度仰向けになった沖田の頭が、遠慮無しに置かれた。
 所謂、膝枕と呼ばれるあれである。

「あ、言っとくけど針を落としたりしたら、本当に斬っちゃうからね」
「は…はいぃ」
「馬鹿な子だね。冗談だよ。だけどまぁ、気を付けてくれる?」
「は……はい」
「じゃあ、おやすみ」
「お…やすみなさいませ」

 千鶴の声を聞くのとほぼ同時に沖田は目を閉じてしまった。
 そして数度頭を動かし、収まりの良い場所を見付けたのかそれからは動く事もなく。
 固まった千鶴を一人置いて、どうやら本当に眠りに入ったらしい。

「……………え…と…」

 熟睡する気はないだろうが、それでもこうして側にいる事を許されるのは…なんだか嬉しい。
 何かあればこの男は千鶴の事を躊躇いなく斬る事が出来る人だ。
 それは分かっているつもりだ。
 でも。

「(猫に懐かれた感じ…なんて言ったらそれこそ斬られちゃうかな)…続き、しよう」

 なんだかちょっと心がほこほこしてしまう。
 ほんのりと頬を染めながら、千鶴は繕い物を再開した。

 

 それから、半時(一時間)程たった頃だろうか。
 千鶴の足の痺れはとっくに感覚ごと麻痺し立ち上がる自信が全く無いほどだ。
 それでも彼女は沖田を起こす事は無くせっせと繕い物を進めていたそんな時。
 太鼓楼のある屯所の入り口の方が少し騒がしくなった事に気が付いた。

「?」

 気にはなったが今自分に課せられた枕という役目を疎かにするわけにもいかず。
 そしてもう少しで終わる繕い物の手を休める事も出来ず。
 結果としてそのままの状態で手を動かす事になった。
 少し早いが巡察に出ていた隊士達が帰ってきたのかもしれないと思う。
 だから暫くして近付いて来たいくつかの足音に、千鶴は特に何を思うわけでもなく顔を上げる。
 ただこちらに気が付いたなら、お帰りなさいとお疲れ様ですと告げようとしたのだが。

「…………ひじ…かたさん?」

 そこにあったのは久方ぶりに会う者達の姿だった。

「土方さん、斎藤さん、それに…平助君!」

 声は控えめだがそれでも嬉しそうに彼等の名を呼ぶと千鶴はにっこりと笑った。
 屯所の移転が一段楽した頃、土方は新入隊士募集の為、斎藤とそして伊東甲子太郎らと共に江戸へと向かっていた。
 昨年の秋より先に江戸に行っていた藤堂等と合流し、隊士募集の任を終えて帰って来たのだ。

「皆さん帰りなさい。ご無事のお帰り何よりです」

 千鶴の笑顔とその言葉は疲れが飛ぶと、最近幹部の間ではよく言われている。
 確かにそうだと思いつつも彼女の今の状況にそこに居た三人は眉を顰めた。
 藤堂に置いてはわなわなと口が動いている。

「あの…?………あ、沖田さん。沖田さん、江戸に行かれていた土方さん達がお帰りになられましたよ」

 彼等の視線の意味が分かった千鶴は、今だ自分の膝に頭を置いて目を閉じる男の肩をそっと揺すった。

「……うん…?」
「お目覚めですか沖田さん」
「ん………千鶴…ちゃん?」
「はい」
「千鶴…ちゃん?」
「はい。あの、土方さんが」
「………土方…さん?」
「あの…沖田さん?」

 膝の上から千鶴を見上げていた瞳がぼんやりとした寝起きのものから段々とはっきり見開かれていく様を、千鶴は小首を傾げたまま見ていた。
 沖田の瞳が帰ってきた土方の姿を捉えたとたん。

「っっ?!」

 勢い良く身体を起こし、彼らの姿を見た後千鶴の驚いた顔を見て両手で顔を覆った。

「あの、お、沖田さん?」
「僕どれくらい…」
「え?……あ、あぁえっと…半時ほどですよ?」

 沖田の言わんとした事を読み取った千鶴が告げる。

「良く眠っておいででしたし、今日は非番だとお聞きしていましたので」

 起こさなかったんですけど、と尻すぼみに千鶴の声が小さくなっていく。

(うわあぁぁああ、最悪っ!本当に寝る気なんて無かったのにっ)

 心の中で沖田は叫ぶ。
 しかも土方等が近付いた事にも千鶴に起こされるまで気が付かなかった。
 いくら殺気が無かったからといっても新選組幹部がこれでは不味いのではないか。

「沖田さん?」

 流石に不安になってきた千鶴が声をかければ、

「気にするな雪村。総司は己の不甲斐無さに打ち拉がれているだけ故」

 斎藤の呆れた様に言った言葉が溜め息と共にかけられた。

「いーい御身分じゃねぇか、総司」

 からかいと怒りが入り混じった様な声で土方が言う。

「総司っなんっって羨ましっ…い……くあぁぁぁぁぁああっっ!!すりぃぞっっ総司ぃっっ!!」

 頭を抱え反り返るようにして藤堂が叫ぶ。 
 そんな賑やか?な状況を見ていた千鶴が、

(ああ、日常だなぁ)

 ふわりと微笑む。
 そんな千鶴を見ていた土方が部屋の中に入り苦笑しながら千鶴の頭をくしゃりと撫で彼女の前に膝を付く。

「ふわっ?」
「なぁに笑ってんだよ千鶴」
「す、すみません」
「別に怒っちゃいねぇさ。近藤さんは部屋か?」
「はい。午前中はお出かけでしたが、お昼前にはお戻りになられました」
「そうか。茶を頼めるか?」
「はい!」

 千鶴は久しぶりに彼等にお茶を淹れられる事に喜び、笑顔で頷くと、早速準備しようと立ち上がる。
 気持ち的には立ち上がったつもりだったが。

「うきゃぁっ!」
「ちづっ!?」

 沖田に膝を貸していた為に感覚の無くなっていた脚で踏ん張るどころか立ち上がる事など出来るはずも無く。
 どさりと思い切り前につんのめる様な形で倒れこんだ。
 しかし顔をぶつけたのは畳ではなく、

「お前ぇな…」

 千鶴の前に膝を付いていた土方の胸元だった。
 しっかりと抱きとめられた己の体が一気に発熱するのが分かる。

「すみません…」

 離れようとするが足に全く力が入らずただもごもごするだけに留まってしまう。

「ぐあああっ!!ひじっ土方さんまで何やってんだよおぉうっっ!!」
「うるせぇぞ平助!ったく。まぁ半時も膝枕してりゃこうなんだろうよ」

 くくっと笑う声と共に土方の胸板が揺れる。
 千鶴はドキドキしながらも今はそのまま身を委ねておくしかできない。
 
(はっ恥ずかしいっ…でも…ああ…土方さんの匂いだ…)

 ゆっくりと息を吸えば久しぶりの香りに包まれる。
 新しい副長室はまだ彼の匂い等しない。
 それがなんだか寂しかった。
 その気持ちがなんなのかは良く分からないが、今こうしていると不思議と安心してしまう。

「大丈夫か?」
「はい…えと、大丈夫…みたいです」

 感覚の戻ってきた両足はジンジンとした痛みは幸いにも襲って来ず、土方の手を借りながらも何とか千鶴は立ち上がる事が出来た。

「なら、改めて茶を頼むぞ。美味いのをな」
「はいっ」

 笑顔で返事をした千鶴はぺこりと頭を下げ、パタパタと足音をたてながら勝手場の方へと向かい部屋を後にした。
 江戸より戻った三人の視線は、自然と打ち拉がれたままの沖田へと向けられる。 

「総司…いつまでそうしてる気だよ、おい」 
「煩いですよ…放って置いて下さい。……ああ、三人ともお帰りなさい。あの人捨てて来てくれました?」
「出来りゃあそうしたかったがよ」
「鬼の副長の癖に役に立たないなぁ」
「悪かったな。せめて返品はしたかったんだがな」
「副長…」
「聞き流しとけ斎藤。道中愚痴る事なんざ出来やしなかったんだ。鬱憤を晴らしてぇんだよ俺は。ちっとぐらい構やしねぇだろ」
「はぁ」
「ままっ、いいじゃねぇか一君。総司のこんな姿見れたんだしよ」
「こてんぱんに伸されたいの平助」
「へっへーんだ。何とでも言っとけよ。でも総司の失態は左之さんや新八っつぁん達の酒の肴になるかもなぁ」

 言うだけ言って藤堂は素早く部屋を出て行く。

「あ、ちょっ平助!!君、本当に殺すよっ!!」

 物騒な事を叫びながら沖田も慌てて藤堂の後を追う様に駆け出していった。
 そんな様子を呆れた様に見ながら土方が苦笑する。

「ったく、ここは賑やかだな」
「はい。帰って来たと、そういう感じがします」
「本当だ…な…?」
「副長?……っ」

 ここは千鶴の部屋であって己に当てられた部屋ではない。
 なのにそこに見慣れた物を見付けた土方の米神に血管が浮かび上がるのを斎藤は見た。
 部屋の隅に無造作に置かれていたそれの表紙には『豊玉発句集』と見慣れた筆跡で書かれている。
 この部屋に沖田が来た際に読んでいた、あれである。
 それを拾い上げると、

「総司ーーーっっ!!待ちやがれっっ!総司ぃっ!」

 土方までもが部屋を飛び出しって行った。
 一部始終を見ていた斎藤は大きく深い溜め息を吐く。

「帰って来た、な」

 そう零した声は、部屋に入り込んできた初夏の風に運ばれて、消えていった。

 


 新隊士を加え一気に人数の増えた新選組。
 直ぐに新編成され局長を筆頭に副長そして新設の参謀という地位をその間に置く。
 更に一番から十番までの小組を作り、これまでの副長助勤が組長としてその小組を率いる事となった。
 力も勢いも何もかもが新選組へと向かい彼等を盛り上げていた。


 武士になりたいと願った男達が育ててきた組織が、最盛期を迎える。

 


 そんな笑顔の多かった

 初夏の物語

 


終わり

 

 

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