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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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あくまでもメインは『薄桜鬼』です!
と、宣言しておいてお送りしますは、薄桜鬼以外の妄想症説です。
カテゴリーに『十三支演義~偃月三国伝~』を増やしました。
別にブログサイトを立ち上げても管理が大変だなぁと思いまして…。
もちろん薄桜鬼も続けていきますが…たま~に浮気したいなぁ…と。

三国志が好きで猫耳が好きで戦う女の子が大好きな私にとってこのゲームはドツボでした。
中の人が鳥さんや遊佐さんという事もあって手を出したんですけど、凄くいい!
史実に上手く沿ってるところもあればオリジナル展開もあって面白いです。
『私もやったよ~』という方にも『知らないけど…面白いの?』という方にも、まぁ暇つぶしぐらいの感覚でお付き合い下さると嬉しいかなぁ、と。

一押しは夏侯惇です。
なので一番最初のCPは夏侯惇×関羽となっております。
では、宜しければ右下からどうぞ。

 

 


「あ、あのっ関羽殿」

 広々とした草原の真ん中で静かに佇んでいた娘に、数人の鎧を纏った男達が近付き声をかけた。
 ゆっくりと振り返った彼女の長い髪が風にそよぐ。
 ふわりと舞いかけたその髪を片手で押さえ、

「どうしたの?」

 優しい笑顔と共に彼女は男達にそう返事をした。
 そんな笑顔を向けられ顔を赤くして固まる男達に彼女、関羽は首を小さく傾げる。
 
「…何かあったの?曹操から何か伝言でも?」
「あ、ああああの!そうではないのです」
「戦況は安定しており、大きな動きはまだないと自分達は聞いております」
「そう。えっと…じゃあ、貴方達が私に何か用があるのかしら?」

 先を促すこの、間違いなく美少女に分類される娘が戦場では鬼神の如き働きを見せるとは俄かに信じ難いものである。
 しかし男達は彼女の戦う姿を何度も見てきた。
 幾度も助けられた。

「あの、もしお時間がありましたらお手合わせ願えませんでしょうか?」

 男達が関羽に拱手して願い出る。
 そんな彼等の行動に関羽は驚いた様に黒曜の目をぱちくりとさせた。

「私と?」
「自分達では関羽殿の鍛錬にもならぬかもしれませんが…」
「そんなこと無いわ。ごめんなさい。ただ、驚いちゃって」

 そう告げた彼女の頭の高い位置にある一対の猫耳がピクリと揺れた。
 関羽は人間ではない『猫族』の少女で、その彼女に拱手する男達は猫族の事を『十三支』と蔑んで来た。
 決して猫族の自分に対して良い感情を持っていなかったはずの男達が、拱手して自分との手合わせを望んでいる。
 一年と少しの間で猫族と人間がここまで近付けたのが、素直に嬉しい。

「私で宜しいのならお相手するわ」

 関羽は手にしていた偃月刀を握り直し頷いた。
 武に秀でた者との手合わせは必ず自分にとって良い経験となる。
 快諾した関羽に向かい、男達は拱手をしたまま頭を垂れた。


 それから。


 手合わせを願い出た者達と一人一人真剣に立会い出来る限りの指導を行う。
 
「有難うございました!」

 彼等がそう言って戻って行く頃には日も大分傾き始めていた。
 そろそろ自分も戻ろうかと考えていたその時。

「随分と懐かれたものだな」

 多少皮肉めいた言葉が背後からかけられ、関羽は体ごと振り返る。

「夏侯惇…そんな、犬猫じゃないんだから」
「そうか?ああそうだな、猫はお前の方だな」
「もう!」

 左目を戦いの中で失い隻眼となった男が関羽の前で立ち止まり、彼女を見下ろす。

「今日はゆっくりしてろと言った筈だよな?」
「身体や感覚が鈍るより良いでしょ」
「直ぐに鈍る暇なんか無くなる。だから身体を休めろと」
「貴方はちゃんと休んだの?」

 額に汗が浮かんでるけど?と関羽は言って偃月刀を地面に置き、代わりに手拭を取り出し夏侯惇の額に触れた。

「俺はいいんだ」
「そんなの理由にならない。だったら私もそう言うわ、私はいいのって」
「俺は昔から鍛えてる」
「それは私だって同じ」
「俺は男でお前は女だろうが!」
「私は猫族よ。人間より体力はあるわ」
「関羽、何でお前はああ言えばこう言うっ!」
「夏侯惇もそうじゃない」
「俺はっ!…はぁ…」

 何時の間にか言い合いになってしまっている事に気が付いた夏侯惇が右手で顔を覆い溜め息を吐く。

「あのね、夏侯惇」
「何だ」
「貴方が私を気遣ってくれる様に私だって貴方が心配よ?曹操の命令であれば、どんなに危険で困難な事でも成し遂げようとしちゃうでしょう?」
「……」
「貴方が帰って来るのを待っているだけなんて、私には出来ない。だから一緒に行きたいの。何処にでも」
「…関羽」
「だけど貴方の足手纏いにもなりたくなっ…夏侯惇?」

 関羽の思いを聞いていた夏侯惇はそれが堪らなくなり、思わず彼女の腕を掴み自分の方へと引き寄せた。

「お前が足手纏いになる事など決して無い」
「そう…かな?」
「ったく…」

 引き寄せた関羽の背中に両腕を回し、丁度自分の顎の下に来る彼女の頭に夏侯惇は頬を寄せる。

「そうだな…俺もお前を待つだけなど、嫌だ」
「夏侯惇…」
「これも、あれだな」
「え?」
「惚れた弱みってやつなんだろうな」
「ええ?」
「俺はお前に惚れてる。お前の優しさにも甘さにも、武の腕にも」
「………ありがと」
「馬鹿。最後までちゃんと聞け」
「?」
「言い難くなるだろうが…。だから…だなって、顔を上げるなこっちを見るな!余計言えんじゃないか!!」

 自分を抱きしめた男の顔を見ようとその腕の中で顔を上げれば、真っ赤になった夏侯惇が慌てて顔を逸らす。

 初めて会った頃。

 夏侯惇は猫族であり女でもある関羽の事を酷く嫌っていた。
 彼にとって猫族は何よりも忌み嫌っていた存在で、異性である女は何よりも苦手だった。
 それら二つの要素を持った関羽は、更に自分よりも武に秀でていたのだ。
 今は亡き大事な弟であった従弟の夏候淵と共にきつく当たり、かなり酷い事も言った。
 だが何時の頃からか、気が付けばお互いの背中を預けて戦うようになり。
 後に敵対し、戦場で再会を果たした時は既に本気で死合う事が出来なくなっていた。
 
「夏侯惇」
「…情けないな、俺は」
「そんな事無いわ。ねぇ、こっち向いて?」
「うっ…」
「私の顔見たくないの?」
「そんなわけあるかっ!」
「だったら、ね?」

 負けたとばかりにまた溜め息を吐いた夏侯惇は、今だ赤みの引かない顔を彼女の方へと戻した。

「ふふ、夏侯惇はやっぱり夏侯惇よね」
「なんだそれは」
「貴方が大好きって事」

 そういうと何時かの様に、関羽は少し背伸びをして夏侯惇の両頬をそっと挟みそのまま彼の眼帯の上に口付けをした。

「かっ関羽!」
「貴方にはこれからも素敵な女性がいっぱい現れると思うけど…ここに口付けられるのは…私だけの特権にしておいてね?」
「っ!?…何を馬鹿な事を」
「だって…」
「そんなのお前の杞憂に過ぎん。俺は、お前以外の女になど触れさせはせんし触れたくも無い」
「本当に?」
「俺は…猫族とか人間とか、男とか女とかそういう事は関係なく…関羽、お前に惚れているんだ。お前以外…俺に触れる事など出来ん」
「曹操は?」
「そっ曹操様は君主だ!お仕えする主だ!!曹操様とお前は大切でもその意味が全く違う。比べる意味などない!!どちらも俺にとっては…もう失えぬ大切な…」
「あ…ごめん…なさい。でも…うん、嬉しい。凄く嬉しい」

 幻痛を伴うほどに痛手を受けた夏候淵の死。
 それを思い言葉を詰まらせた夏侯惇に関羽は謝り、そっと彼の腕の中へと戻った。
 彼の背中に腕を回し、きゅっと抱きしめる。

「私はずっと貴方の傍にいたい」
「俺もお前の傍がいい」
「じゃあやっぱり鍛錬は必要ね」
「そこに戻るのか」
「戻るの」
「仕方ないな。ならば明日は俺と立ち会え」
「望む所だわ」

 嬉しそうに笑う関羽に夏侯惇の表情も柔らかくなる。
 
「ああそうだ、関羽」
「何?」

 自分の胸に顔を寄せたまま返事を返す関羽。
 好都合と見た夏侯惇は目の前にある猫族の象徴であるそれにカプリと噛み付いた。

「ひゃああっ!」

 驚いた関羽が思わず叫び顔を上げた。

「みっ耳噛んじゃダメ!」
「お前、耳弱いからな」

 してやったり顔の夏侯惇がそう言えば、今度は関羽が顔を真っ赤にする。

「うう~っっ」
「俺の左目に口付けできるのはお前だけだ。ならば、お前の耳に触れることが出来るのは俺だけにしてくれ」
「……………うん」
「お互いの特権、だな」
「…うん」

 顔を赤くした関羽が頷けば、

「関羽が好きだ。傍に、いてくれ」

 そう告げて夏侯惇が彼女を再び抱きしめた。

「私も貴方が、夏侯惇が大好きよ」

 返って来た愛しい返事に、夏侯惇は目を細め彼女の目尻にそっと口付けた。

 


 そんな二人の様子を遠くから眺める者達がいた。
 関羽の弟分でもある張飛に幼馴染の関定、関羽の育ての親でもある世平、そして曹操軍の君主だ。
 今にも飛び出していきそうな張飛は既に地面の上に突っ伏しており、その背中には関定が乗りかかって重石となっている。

「あ~ね~き~~~」
「張飛、諦めろ。折角の恋人同士の時間を邪魔するんじゃない。つか、行っても虚しいだけだぜ?」
「うわああっ止めろ関定~。こっ恋人…姉貴が…姉貴ぃ」
「弟なら姉貴分の幸せを喜んでやれ」
「嫌だ!よりによって夏侯惇だぞ!あの俺達を蔑んでやがった夏侯惇だぞ!姉貴の目を覚ましてくる!!」
「まず無理だ。張飛、男は引き際を見極めねーとな」
「うわぁぁーーー!いーやーだーーーっ」

 大切な姉貴分を取られた張飛を宥めつつ関定は傍に並ぶ男達を見上げた。

「今や曹操軍の双翼といわれる将軍二人をあのまま放って置いていいの?」

 そう言いつつも顔は楽しげに笑っている。
 
「俺は関羽が幸せならそれで構わねぇし」

 苦笑いをしつつ世平は言い隣にいる曹操を見やる。
 すると曹操はふっと小さく笑う。

「夏侯惇は我が曹操軍にとって不可欠の男。夏侯惇と関羽が沿うのであれば関羽も我が軍に身を置くは必然。関羽が居れば漏れなくお前達猫族も傍にあるだろう?私にとってはこれ以上に望ましい事はない」
「ま、あんたはそう言うだろうな」

 曹操の目指す覇道がどのようなものかは分からないが、これから先の戦いが熾烈になっていくのは目に見えている。
 それでもそこに身を置く事に迷いはない。
 猫族の長は言う。

『みんな一緒、すっごく嬉しいね』

 彼の笑顔を護るにはもう隠れ住むだけでは無理なのだ。
 戦って居場所を護るしかないのならばそうするまで。

「あれぇ?曹操、世平どうしたの?なんだか楽しそう」

 背後から聞こえてきた幼い声に一同が振り返る。
 そこには今しがた思い出していた猫族の長、劉備と護衛として蘇双の姿があった。

「あうう~、劉備ぃ」
「あ!関定、張飛つぶしてる~。面白そう」
「劉備様も乗っかります?」
「わーい、やるやるぅ」
「ちがーう!おい、劉備!あっち見ろ!!」
「あっち?あっちってどっち?」
「あっちったらあっちだよ!真っ直ぐ前!」
「あっち…あ!関羽だ!」

 関羽大好きっ子の劉備がその姿を捉え、張飛は潰されたままガッツポーズを取る。
 自分では邪魔できないがこれで間接的に邪魔が出来るはずだ、夏侯惇の。

「世平」
「何です?劉備様」
「関羽、笑ってるね」
「そうですね」
「僕、いつもいつも関羽に心配かけちゃってるから、関羽が笑ってると凄く嬉しいの」

 金色の瞳をにっこりと細め、本当に嬉しいのだと劉備は笑う。

「夏侯惇もね、僕の事よーく気にかけてくれるんだよ。夏侯惇も優しいよね。ねぇ世平、夏侯惇は関羽とけっこんしておよめさんにするのかな?」 
「うわぁぁぁ!!何言ってんだよ!劉備!!」
「だってね張飛。およめさんってずっと傍にいてくれる女の人の事いうんでしょ?けっこんはそのお約束だって聞いたよ。夏侯惇と一緒にいたら関羽が笑うんだよ?」

 何がいけないの?と劉備がきょとんとして問えば、張飛にはもう反論する力も出ない。

「あ、関羽が気付いたよ。お話終わったのかな?」

 そういうが早いか、劉備は駆け出した。
 向かう先には両手を広げて彼を待つ優しい関羽と、見られていた事に気付いて固まった夏侯惇がいる。
 いつもの様に大好きな彼女の腕に飛び込んで、

「ねぇ二人はいつけっこんするの?」

 と無邪気に問いかける劉備にわたわたと挙動不審になる二人が目撃されるまで、あと少し。

 


 ―終―

 


☆後書(反転)☆
 最初はツンツンしていた夏侯惇が、どんどん関羽に対しデレていく過程が堪らなく好きです。
 大切にし信頼していた従弟、夏候淵視点の特別ルートがまた堪りません。
 彼はきっと間違いなくむっつりさんです(笑)
 今まで毛嫌いしてきた分、女性経験は全くない武術&曹操馬鹿だと思いますので色々暴走していけばいいと思います!

 

 

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