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やっとUPです。
土方さんハピバとかやりたい事あったんですけど……気が付けば…連休も最終日です(涙)
私連休中は何をやってたっけ…。
取り敢えず地元から離れる事はなかった連休でした。
久しぶりの更新は夫婦騒動録です。
20話目です、ビックリですね。
まさかこんなに続くなんて…お茶会はいつ書けるんだか。
今年は本当に書く時間がちまちまとしかないので更新が少なくて申し訳ないです。
決して熱が冷めたとかそういうわけではありませんので!!
オフの仕事がとても忙しいのです…ありがたい事なんですけども。
というか体力が付いてこなくなってる自分に苦笑…違う、チクショウ(涙)
屯所に出勤した夫側の物語です(笑)
初夜明けという事もあってちょっと下ネタっぽい会話もありますが、ご了承下さいね。
では右下からどうぞ~。
「おはよう」
馴染みの板戸を開けて土方がそう言えば、中で朝餉を摂っていた皆の視線が一気に集まった。
「おお、トシじゃないか。お早う。早いな!」
一番最初に挨拶をして来たのは笑顔の近藤だ。
「ちと早く起きてな。仕事も溜まってるだろうし早めに出てきた」
「えぇ~?初夜の朝が早起きってどうなんです?それって」
お箸を口に銜えたままの沖田がニヤ付きながらからかい始める。
「うるせぇぞ総司」
「まさかトシ!」
「な、何だよ近藤さん」
「初夜だというのに手を出していないとか言うまいな!?」
「なに言っ「ちょっと待ってよ近藤さん!」…平助ぇ」
「ちょっと前まではその気もなかった土方さんが千鶴に手ぇ出すって有り得ないんだけどっっ!!」
人妻となった今でも千鶴への淡い恋心は健在の藤堂が叫ぶ。
「土方さんは若い頃から浮名流してた人だし、千鶴ちゃんを手篭めにしちゃうくらいわけないんじゃないの」
「総司てめぇなっっ!つか手篭めって何だ手篭めって!無理やり抱いちゃいねぇよ!!(出来るだけ)手加減もした!(気持ちの上では)大事に抱いた!!」
沖田の言葉に夫婦の営みを犯罪めいた言葉で指されカチンと来た土方が怒鳴れば、
「抱いたって…抱いたって…」
魂が抜けてしまったかのような藤堂が床に突っ伏し、
「つー事は…ああああ~~~俺達の可愛い妹分を土方さんは抱いちまったのかぁぁぁっ!!」
女心や婚姻とは縁遠い永倉までもが頭を抱え、
「…はぁぁ。新選組の鬼副長ともあろう人が語るに落ちるってどうなんです?」
心底呆れましたよと、沖田が小馬鹿にした笑みを浮かべる。
何か絶対言われるとは覚悟していたものの、段々我慢の限界を向かえそうだ。
そんな怒り心頭の土方が噴火しかけた時、
「で?土方さん、千鶴は?」
それを抑える様な落ち着いた声が掛けられた。
「……はぁ…千鶴は来てねぇよ」
原田が土方の後方を確認しながら尋ねてきた言葉にぶっきら棒に答える。
この面子では一番話の分かる男だと断言してもいい原田はいとも簡単に土方の怒りを抑えてみせた。
「来てねぇ…?」
「だから千鶴は今日は屯所にゃ来ねぇよ」
「「「「「は?」」」」」
土方の言葉に藤堂や永倉も反応する。
「んだよ全員で声揃えて。そんなに驚く事か?……驚く、か」
「まさか…」
「んだよ原田。お前ぇまで俺をからかう方にまわんのか?」
「餓鬼じゃあるまいし、そんな事しねぇって。ただ足腰立たねぇ千鶴を一人別宅に置いて来るのはどうかって思うぜ、土方さん」
「ぴんしゃんしてるぜっっ!!朝から元気に朝餉作ったり鍛錬してた俺の世話を甲斐甲斐しく焼いてたよ!」
「土方さん…まさかその歳で衰えちまっうわぁっっ!!」
永倉が言い終えるよりも早くその鼻先を鋭い切っ先が通過していった。
もしかしたらその一薙ぎは斎藤の居合いよりも早かったかもしれない。
辛うじて後ろに飛びのいた永倉の視線の先には、正に鬼が鋭い眼差しで睨みつけていた。
「新八、地獄の閻魔大王に宜しく伝えてくれ」
「ひぃぃぃっ!!土方さんっ新選組は私闘はご法度ぉおおおっっ!」
「問答無用っっ!そこになおりやがれ!」
最近その剣の腕を見る事は久しくなかったが、めっぽう強いといわれる土方の剣の腕は健在だ。
だがそこは永倉新八、新選組の2番組を預かる男。
ひぃひぃと逃げ回りながらも土方の剣先は今一歩届かない。
「よっぽど早死にしたかったんですね、新八さん」
「自業自得だぜ、新八」
仲間達の溜め息と呆れた視線を浴びる永倉は最終手段だとばかりに近藤の傍に逃げ込んで、後は土方に向かい手を合わせて拝み倒す。
「悪かったっ!土方さん俺の失言だった、土方さんの息子は今なお健在だってよーく分かった!」
「しーんーぱーちーーーっっ!」
土方の視線の先には追い掛け回していた永倉と苦笑する近藤がいる。
別の方向からはとても冷たい殺気を感じるのだが、それは近藤を盾にとっている永倉に向けられているもので自分には関係ない。
「トシ、それ位にしてやれ。永倉君も言葉はもう少し選ぶように」
近藤にそう言われてしまえば刀を収めるしかない。
「………近藤さんの顔をたてて今日は大目に見てやらぁ。だがよ新八」
「は…い…」
「千鶴にまで同じ様なこと言ってみろ。そんときゃ文武館で完膚なきまでにのしてやるから覚悟しとけ」
役者顔負けの美丈夫に低音で凄まれるとここまで怖いものかと、永倉は閉口したまま顔をこくこくと上下に動かした。
「ははは、トシさんもたった一日で愛妻家になったものだね」
土方が刀を鞘に戻すまで口出しせず、取り敢えず様子を眺めていた井上が口を開く。
「愛妻家って…程でもねぇだろ」
「そうかい?」
井上は嬉しそうににこにこ笑う。
「それで、千鶴さんはどうして来れないんだい?昨日の時点では共に屯所に来る予定だったろう」
「何かあったのですか、副長」
井上と同じ様に口出しはしていなかったものの、もしもの時は自分は土方に加勢すると決めていた3番組組長が箸を膳に戻し顔を上げた。
「別に大した事じゃねぇよ。お袋殿が千鶴に色々教えてぇ事があるからって言ってくれてな。千鶴も母親の記憶がない分その申し出が本当に嬉しかった様でさ。つーわけで今日はお袋殿に預けて来たんだよ」
―――朝餉の後。
特にやる事もなかった土方は、少し早めではあるが屯所へ向かうことにした。
娶ったばかりの、幼な妻に分類されるであろう千鶴を置いていくのは多少…それなりに……。
(……正直に言や、とんでもなく後ろ髪を引かれてたんだがな…)
そんな思いをしつつ、取り敢えず世間一般の新婚さんの定番とも言える行って来ますの口付けを交わす。
(まさか自分がそれを望むなんざ思いもしなかったけどよ…)
別宅を出た後、泉屋に一度顔を出し喜助と絹に千鶴を任せると挨拶をして来た。
「お袋殿?」
「ん…ああ、泉屋の主夫婦の事を京での両親…みたいな流れになってよ」
「ほう!なんと確かに嬉しい申し出だな、トシ」
「まぁな。つか、近藤さんよ。何がちょっと広いくらいだ。あんたのちょっとは信用できん。侍屋敷なんざ聞いてねぇぞ」
「良い物件だろう!」
「あのなぁ…」
「何れは俺達は武士になる。それが俺達の夢だ」
「…おう」
「武士ともなれば屋敷とて広い方がいいだろう!」
「………あんたに今更何を言っても無駄みてぇだな」
そう言った土方はやれやれとばかりに苦笑して見せた。
「ああそうだ。千鶴がよ、近いうちに皆を別宅で御持て成ししてぇんだと。まあ茶会が終わった後ぐらいになるだろうから、そのつもりでいてくれ」
仕事するから部屋に戻るな、といって立ち去りかけた土方を、
「トシ」
近藤が優しい声音で呼び止めた。
「何だよ。まだ何かあんのか…?」
からかうのなら勘弁してくれと、大きな溜め息を吐きながら土方は近藤を見やる。
「惚れた女子の肌は格別だろう?」
「………はぁ…」
にこにこ笑顔の近藤にはどう足掻いても敵わないのだろうか?
もはや溜め息も品切れしそうだ。
「極上だ。…俺にゃ勿体無ぇ程にな」
「幸せもんだなぁ、トシよ」
「ああ、実感してる。だから何処のどいつが横恋慕してこようと渡す気はねぇよ」
「そうか」
「…あいつは、千鶴は俺の………恋女房だ」
そう言うともう何も聞こえねぇぞとばかりに板戸を閉めた。
足音が遠ざかるのを聞きながら、近藤が破顔する。
「はっはっは!そうかそうか、恋女房と来たか!!!」
「土方さんってば千鶴ちゃんにべた惚れみたいですね。なんか意外~」
「トシが心安らかであるならばこれ程に喜ばしい事はないぞ総司。皆にも言っておくが、あまりトシをからかってやるなよ。それから突然別宅に顔を出すのも止めておく様に。いいかね?トシと千鶴君は新婚なのだ。邪魔をしてはいかん!これは局長命令である」
各々が了解したとの返事を返してきたので近藤達は中断していた食事を再開させた。
執務室に辿り着いた土方は使い慣れた文机の前に腰を下ろし、今更ながらに自分の発した単語に顔を赤くしていた。
「からかいの餌をやるなんざ、何やってんだ俺は…」
千鶴を好きだと、愛しいと想っていた事に気が付いたのは二日前で、別にずっと恋い慕っていたわけではない。
だが何時から千鶴の事を無意識の内にでも想っていたのだろうかと考えれば、意外と初期の頃から気にかけていた様に思う。
『土方さん』
少し高めの心地の良い声が自分の名を震えず呼ぶ様になったと気が付いた時、自然と笑みが零れた。
『歳三さん』
そう呼ばれるとくすぐったい感じもあるが、それよりも愛おしい気持ちがむくむくと膨れ上がり堪らなくなってしまう。
「俺も普通の男なんだなぁ…」
千鶴がずっとずっと胸の内に押し込んで隠して来た自分でも何故なのか理解できていない体質の事を話してくれた時『護りたい』その気持ちが強くなった。
体質の事を聞いたからではない。
それを震えながらでも自分に打ち明けてくれた事が嬉しかった。
きっとそれは夫婦にならなければ今も隠したまま不安な思いをしていたのだろう。
切っ掛けがなんであり、夫婦として婚姻を結びその不安な事も一人で抱え込まず二人で分ける事が出来るようになった。
千鶴の不安を自分が共有できる。
ある意味、これも独占欲なのかもしれない。
千鶴の喜びや楽しみだけではなく、悲しみや苦しみさえも分けあえる事が嬉しいと純粋に思う。
(千鶴のモノは形あるモノも無いモノも、目に映るモノも映らないモノも全ては俺のモノだ。だから俺もその全てをあいつに渡してぇと思う)
『いってらっしゃいませ、歳三さん。お帰りは…いえ、何時お帰りになっても良い様にお待ちしておきます』
土間にある框の上でそう言いながら見上げてきた新妻の頬は、ほんのりと赤らんでいた。
こんな顔で見送られたら口付けしたくなる気持ちも分かってしまうと土方は思った。
「………帰りてぇ」
可愛らしい笑顔が脳裏に鮮明に浮かび上がれば、口から本音が零れてしまった。
それは独り言。
返事が帰って来るはずも無い、独り言。
部屋の中にいたのが独りであったのならばそれでお終いだったのだが。
「申し訳ありませんが、昨日の書類で目を通して頂きたいものが数点ございます。直ぐにお帰りになられるのは諦めて頂きたいのですが」
予想だにしていなかった返事が返って来た為、
「っっ!?」
土方は勢い良く振り返った。
「やっ山崎っっ!?」
土方の背後には何時の間にか部下が控えており、きっちり正座をしたままの彼と目が合う。
「い…何時の間に…」
「そうですね。部屋に居られる気配はあるのにお声をかけてもお返事が頂けなかった為、失礼かとは思ったのですが勝手に中に入らせて頂いた時『俺も普通の男なんだなぁ…』と呟いておいででした」
結構前からじゃねぇかと、気配に気付きもしなかった土方は言うにも言えず、ただ項垂れるしかなかった。
「早くご内儀の元にお帰りになる為にも、早速仕事を始めてもらえると助かります」
部下の言葉に、
「………っ……はぁ…」
やはり何も言う事が出来ず。
無言のまま土方は文机の方に向き直り仕事を始めた。
続く