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【オール】に分類しようか【土千】に分類しようか迷ったんですが、最終的に美味しいところを持っていったのが土方さんだったので、土千に(笑)

きっと、土方さんと千鶴ちゃんならこんな感じではなかろうか、と。
兄貴組が大好きです!



小説は右下からどうぞ。


 

 


「あっれ~、おっかしいなぁ。ねぇ左之さんっ」
「知らねぇよ」
「新八っつぁんは?何所にあるかしらねぇ?」
「俺が知ってると思うかぁ?」
「だよなぁ~」

 畳の広間にある押入れの中を藤堂がごそごそと何やら探している。
 すぐ側に原田と永倉もいるのだが、手伝う気は一切持ち合わせていないらしい。

「う~ん、ここだと思ったんだけどなぁ…」
「平助、千鶴に聞いてみたらどうだよ」
「千鶴に?」
「あ~、それが一番かもな」
「そだな。よっし、ちょっと千鶴のとこに行って来る」

 押入れから這い出した藤堂が元気よく立ち上がった時。

「私がどうかした?」

 平助君、と開けっ放しだった障子戸の向こうから声がした。

「噂をすれば、だな」
「よっ、千鶴ちゃん」

 そこには今正に藤堂が訪ねて行こうとした少女が立っていた。

「皆さんでどうなさったんですか?」
「平助の探し物に付き合ってんだよ」
「探し物?」
「付き合ってるって、左之さんも新八っつぁんも全然手伝ってくれてねぇじゃんか…」

 3人の様子に千鶴は軽く握った左手を口元に当て、くすくすと笑っている。

「千鶴まで笑うし…」

 ごめんね、悪気はなかったのと千鶴が申し訳なさそうに言うと、ま、良いんだけどと藤堂も笑う。

「それで、私に何か用があるの?」
「あれ探してんだけど、千鶴知らね?」
「あれ?」
「あれだよあれ」
「あれって言われても…」

 千鶴は困惑した様にちょこんと首を傾げる。

「おーい平助ぇ。熟年夫婦じゃあるまいし、あれじゃ通じねーっての」
「それとも憧れてんのかぁ?」
「ばっ馬鹿言うなよなっ!名前が出てこなかっただけだって!えーっと、ごめん。あれってあれなんだよ、裁縫箱」
「裁縫箱?」
「そっ裁縫箱。ほらここ。解れちゃってさ」

 藤堂は自分の着ている着物の肩口を見せる。
 確かにそこは糸が解れだして、腕を大きく動かすと切れてしまいそうだ。

「こーゆうのさぁ、だらしが無いって土方さんに見付かったら怒られんだよなぁ」
「それで裁縫箱なのね」
「ん」
「裁縫箱、私の部屋にあるの。待ってて持って来る」

 千鶴はパタパタと走っていった。
 そういえば最近の繕い物は彼女が引き受けていたのだと藤堂は思い出した。
 すぐに裁縫箱を手にした千鶴が戻ってくる。

「ごめんね。土方さんが私が持っていても良いって仰ってたから」
「いつもして貰ってんだもんな。最初っから千鶴のとこ行けばよかったんだ。つか」

 いつもありがとな、とはにかんだ様に礼を言えばううん、と千鶴が首を振る。
 頬を染めて小さく首を横に振る仕草が可愛くて、藤堂の頬も熱くなる。

「あ、あのね。私で良かったら繕おうか?」
「本当に!?良いのか?」
「うん」
「じゃ頼む」
「はいっ」

 藤堂は嬉しそうに解れている着物を脱ぐと千鶴に渡した。
 それを受け取った千鶴はその場に座り、針と糸を準備し始める。

「何だよ、結局千鶴にしてもらうのか」
「だーって俺がすると着物が引きつるもん」
「けど、千鶴ちゃんは器用だよなぁ!前に俺の着物の解れも繕ってくれたけどさ、何処が解れたか分かんねぇし!」
「千鶴は本当良い嫁さんになるな」
「そんな…私なんてまだまだです」
「でも俺達はすっげー助かってるんだよ」
「平助君…お役に立ててるのが嬉しい」

 褒めてもらえた事がとても嬉しくて、にこにこと微笑みながら藤堂の着物を繕い始める。
 手際よく且つとても丁寧に針が動いていく様を思わず見つめてしまう。
 千鶴の白くて細い指先。
 男装して見かけはかろうじて誤魔化せたとしても、こうして指先などを見ればそれは間違いなく少女のもので。

「綺麗だな」

 ポツリと漏らした藤堂の言葉に、

「そんな事ないよ…もっと綺麗に縫えるように練習しなきゃっていつも思うもの」

 縫い目を褒められたと勘違いした千鶴が小さく言う。
 もちろん縫い目だって自分がするよりもずっとずっと綺麗なのだが。

「平助、しくじったり」

 からかう様に言った原田をじろりと睨み付ける。
 どうやら藤堂の零した言葉の本当の意味を察しているようだ。

「うるせぇよ左之さん」

 隣りで永倉までもがニヤニヤしているのが癇に障る。
 何か言い返そうと思ったが、

「はい、平助君出来たよ」

 と、千鶴が着物を差し出してくれた。

「はやっ!もう出来たのかよ?」
「うん。どうかな着てみて」
「おお!」

 手渡された着物に腕を通して少し動かしてみる。

「違和感なし!ありがとっ千鶴!」
「良かった」

 お互いに笑顔の千鶴と藤堂が顔を見合わせた時。
 今だ開けっ放しの障子戸の向こうに自室で仕事をしているはずの男が現れた。
 原田と永倉はいち早くそれに気が付き、挨拶代わりに手を上げる。
 男は部屋の中を見やり、

「おい」

 と声をかける。
 すると藤堂達も彼の存在に気が付き縁の方に顔を向けた。

「あ、土方さん。すみません直ぐにご用意致しますね」
「ここはもう良いのか?」
「はい、今終わりました」

 千鶴はそう言って立ち上がる。

「平助君、裁縫箱を私の部屋に運んでもらってても構わないかな?」
「え、ああ、うん」

 藤堂の歯切れがなんだか悪い。
 何だろうと思って後の二人を見ても同じような、少し驚いた様な表情をしている。
 千鶴と同じ事を感じたらしい土方も怪訝そうに3人を見る。

「んだよ?言いたい事があるなら言え」
「どうかしました?」
「あのよ、土方さんの【おい】だけで、千鶴は用事分かっちまうのか?」

 代表して原田が問いかける。
 それに不思議そうに首を傾げたのは千鶴だ。

「はい。それがどうかしましたか?」
「いやどうって事はねぇんだがよ…。ちなみに土方さんの用って何だと思ったんだ?」
「お茶、ですよね?」

 と千鶴が土方を見上げれば、だからなんだとばかりに土方が頷く。

「え、当たってんの?」
「こいつは俺の小姓だぞ。それくれぇ分かんだろーが」

 今度は土方の言葉に千鶴が頷いた。

「お部屋にお持ちしますね。島田さんからお饅頭も頂いているんで、ご一緒にお持ちします」
「島田からか。そいつぁ美味ぇんだろーな」

 島田の甘味好きは新選組内でも有名だ。
 彼の舌で確認した饅頭ならば味は格別なものなのだろう。

「ああ、そういや」

 土方は何かを思い出した様に千鶴を見下ろす。

「千鶴、あれは何所にある?」
「あれ、ですか?」

 何だか先程の藤堂と千鶴の会話の様だと、藤堂達3人は思う。
 流石に【あれ】では通じないだろうと思ってみていると。

「一番左の引き出しにありませんでしたか?」

 何事も無い様に千鶴が答えた。

「そこが切れてんだ」
「でしたら隣り部屋の戸棚にありますから補充しますね」
「頼む、後あっちの補充もな」
「はい」

 千鶴は了承したとばかりに頷いた。
 唖然とするのは取り残された形の3人だ。
 【あれ】とか【あっち】で土方達の会話は成り立っている。

「……何呆けてんだよてめぇらは」

 その視線に気が付いた土方が不機嫌そうに3人を再度見やる。

「千鶴ちゃん」
「はい、永倉さん」
「ちなみにさ【あれ】ってなんだと思ったんだ?」
「…藩邸や所司代に提出する用の上質和紙、ですよね?」
「ああ」
「んじゃあさ、【あっち】って言うのは千鶴はなんだと思ったんだよ?」
「墨…ですよね?」
「……ああ。間違いねぇよ」
 
 事も無げに答える千鶴と面倒臭そうに答える土方。

「てめぇらの用事は終ぇか?だったら俺は戻るぞ」
「後で皆さんにもお茶をお持ちしますね」

 すたすたと元来た道を戻って行く土方と、それとは反対側にある勝手場に向かって行く千鶴。
 二人の足音が完全に聞こえなくなった頃、3人は漸く動き出した。

「千鶴ちゃんは…いい嫁さんになるだろーな…土方さんの」
「は…ははっ…だな」

 ご愁傷様とばかりに兄貴組み2人は藤堂の肩を叩いた。

「ち…ちっくしょぉぉお!土方さんずりーーーーーっっ!」

 思わず叫ぶ、千鶴に淡い恋心を抱く藤堂平助。
 その声が土方にも届いたのか、

「うるせぇぞっ平助ぇっっ!!」

 少し離れた彼の部屋から怒鳴り声が返ってきた。

 

 

 ―――数年後。


 美しく大人の女性へと成長をした千鶴が、原田や永倉の言う様に土方の妻として彼を支えていく様になるのだが。

 それはまた別の物語。

 


 
 終わり

 

 

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