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花鏡想慕5話目です。
………数時間前に日付が変わり月も変わってしまった上に………終わらない…orz
あー…れ?
8月中に終わらせる予定だったのに…有言不実行だ…。
こんなに長くなる予定じゃなかったのに。

えと、5話は一応謎解き編です。
謎って言うほどの物ではなかったですけど…。
物語としては、次が最終話となります。
申し訳ありませんが、後もう1話お付き合い下さい。

それでは、右下からどうぞ。
 

 

 


「はあっはあっはあっ」

 暗闇に包まれた森の中を駆けて行く。

「はっはあっ」
「千鶴っ、大丈夫か?」
「へいっき、です!」

 千鶴の手を握り獣道を共に走っているのは土方だ。

「もう少しだ、頑張れ」
「はいっ」

 土方の声に鼓舞されながら千鶴も必死に足を動かした。
 彼と繋いでいない左手にはやっとの思いで探し出した物が抱かれている。
 それを早く皆の元へ届けなければ。
 ぽたぽたと髪を伝い落ちて来る水滴が目に入るがそれを気にかけている暇も惜しい。

『助けて下さい…』

 夢の中でそう告げた彼女の願いを叶えてあげたい。

(気になる事はあるけど、今は、今の私に出来る事をしたい)

 千鶴がそう思い前を見据えた時、人の声と刀同士がぶつかり合う剣戟が聞こえてきた。

「千鶴」
「大丈夫です!」
「側にいる。お前は俺が護る」

 振り返ることはせずに繋いだ手に土方が少しだけ力をこめる。

「ひじ…方さん」
「お前ならやれる」
「はい!」

 千鶴が返事をするのとほぼ同時に鬱蒼とした木々は一気に無くなり、視界が開けた。
 そこかしこに篝火が焚かれ、暗闇は少ない。

「待たせたなっ」

 そう大きな声で告げればその場で戦っていた仲間達の視線がこちらに向けられる。

「おっそいですよ、土方さんっ!」
「あんまりおせぇから二人で仲良くしてんのかとか勘繰っちまったぜ」
「しっ新八っつぁん!?何てこと考えてんだよっ!」
「って、どうしたんだよ二人とも!ずぶ濡れじゃねぇか」

 原田に言われ、土方と千鶴がお互いに顔を見合わせて苦笑いをする。

「色々あったんだよ」
「あったんです」
「細けぇ事気にしてんじゃねぇよ。つか、そうか今は斎藤の姿なのか」
「一度映した姿にはいつでもなれるみたいだぜ」
 
 少し離れたところで対峙している二人の斎藤の姿を見ながら永倉がでもよ、と言葉を続ける。

「多分あの物の怪は映した時の姿にしかなれねぇんじゃねぇか?」

 確かに左利きの斎藤はいつもの黒い着流しの姿なのだが右利きの、物の怪が化けている斎藤の方は新選組の羽織を纏ったままだ。

「見分けが付き易くて良いじゃねぇか」
「まーね。けど、土方さんこれからどうすんの?千鶴の持ってるそれが鍵なんだろ?」
「うん。夢の中であの人が教えてくれた方法。これを使えば…」

 そう言って千鶴は手にしていたそれを、少し淵の部分が割れて欠けている鏡をそっと撫でた。
 斎藤が持ち帰っていた欠片は見事にその部分にはまる。
 夢の中に現れた人の事を思い出す。


『あの鏡は、物の怪ではありません』


 千鶴が土方の側で眠りに落ちて暫く、気が付くとぼんやりとした空間の中に千鶴はいた。
 ここはどこだろうと周りを見渡していると、目の前に光が集まりだしそれが女性の姿へと変わった。

「―――!?」
「驚かせてしまい申し訳ありません。落ち着いて下さいませんか?」
「あな…たは?」
「私は、花鏡神社の宮司の娘です。巫女をしておりました」
「は、花鏡神社?巫女さん?」
「はい」

 静かに頷くその女性は確かに白地の着物に朱色の袴という巫女装束を纏っている。

「こ…ここは、どこですか?」
「幻と現の間。夢殿といわれる場所です」
「夢…どの…?」
「勝手を申すようですが、時間がありません。私の話を聞いて下さいませ」
「それは…あの物の怪と関係のある…事なのでしょうか?」
「あの鏡は、物の怪ではありません」
「え?」
「あの鏡は…花鏡神社の神器としてお祀りしていた一対の鏡です」
「………」
「貴女の時代よりも昔、まだ世の中が定まっておらず、天下を取らんとする方々達によって戦が続いていた頃です…」

 静かに語りだしたその女性は、自分の身に起きた事を語りだした。
 彼女の父親は神社の宮司を務めるとても穏やかな人であったという。
 母親を早くに亡くした彼女は父親の元で巫女としての知識を身につける為に日々精進していた。
 
「あの頃は我こそがと、多くの殿方が戦へ身を投じておられました」

 世は戦乱の渦中にある。
 この地とて何時までも平穏無事ではないだろうと語っていた矢先。
 父親との突然の別れが訪れた。

「お父様は…」
「…殺されました」
「え?」
「神社の拝殿を一晩の宿として提供しろと、そう言って半ば無理やり入り込んできたどちらかのお武家様だったと思います」

 神社の拝殿の中に入り込んできた猛者達はその身に沢山の血を浴びていた。
 一山向こうの地で戦があり、彼等は逃げてきたのだと。

「父は拝殿ではなく自宅として使っている建物の方を使って欲しいと、お願いをしたのですが…」

 拝殿は神を祀る場所。
 出来れば神聖なその場所に戦を持ち込みたくは無いという、神社を預かる者としては当然の事だったのかもしれない。
 だが負け戦で気の立っていた男は、父親と共にいた娘の目の前でその首を刎ねたという。

「そ…んな…」
「何が起こったのか…理解できませんでした。優しかった父が…」

 彼女は言葉を詰まらせて俯いてしまう。
 どれほど時が流れていようとも、その悲しみが癒える事は無かったのだろう。
 当然だ。

「父の突然の死に…動けなくなっていた私は…その男達に……慰み者として扱われ、辱めを受けました」
「………」
「私の知る殿方は優しく穏やかな父だけで、何故このような酷い仕打ちが出来るのかと、悔しくて…悔しくて…」
「……っ…」
「散々弄られた後…私も、殺されたのですが……死の間際、私は神職に身をおく者としてしてはいけない事をしてしまいました…」
「っ…ふ…ぅ…」

 ボロボロと涙を流し口元を手で覆う千鶴。
 だが話は聞かなくてはいけないと、必死に嗚咽だけは堪えていた。

「神器であった花鏡に…父と私の復讐を願ってしまったのです。そして鏡はその願いを…叶えて下さいました…。その場にいた者たち全てを殺すという形で…」
「復讐…」
「神器であった鏡を…私は血で穢してしまった。元々その鏡は時々光ったり、映るはずの無い物を写したりと、不思議な力を持っていたのです。ですから、その鏡を神社に奉納頂きお祀りし大切にしていたのですが」

 薄れ逝く彼女の目の前に、自分を汚した男が現れた。
 しかしその男は彼女を背に庇う様に立ち、そしてもう一人の同じ顔をした男を切り伏せる。
 その場にいた者達もその男によって次々と殺されていく。
 拝殿の中が死一色になった時、彼が振り返りそっと彼女の頭を撫でた。

『必ずや…』

 厳かな声が聞こえていたのだが、命の途絶えた彼女には最後まで届かなかった。

「どれ程経った頃なのかは、私には分かりませんが…私に意思が戻った時には鏡の中に居りました」
「鏡…の中?」
「あなたの側に、その鏡の欠片を持った方が…神社で拾った方がいらっしゃるはずです」
「欠片を?」
「だからこそ、私はあなたの夢殿へ来る事ができた。小さな欠片が私を本体からこちらへ渡る事を可能にしてくれたようです」
「何故…私なのですか?」
「貴女には…人とは違う…何かを感じます」
「人とは…違う…」

 彼女の言葉に、千鶴は心当たりがあった。
 昔から自分でも気味が悪いほどに怪我の治りが早い。
 
「それに、私と似た様な境遇も…あなたの中には強く封じられた記憶があります」
「封じられた記憶?」
「私にはそれを解く事は出来ませんが、きっとそれらが引き寄せ、そして彼も目を付けたのでしょう」
「……………私に…何が出来ますか?」
「…ありがとうございます。まずは私の入った本体の鏡を探して下さい。私が見る事が出来るのは…池のような場所。小さな祠に隠す様にして置かれています」
「池…小さな祠」
「そして、対になるあなた方を襲った鏡に私を写して下さい」
「写す…合わせ鏡…という事ですか?」
「はい。そうすれば私はあちらの鏡に移動できる筈なので」
「移動?」
「1つの鏡に宿れる魂は1つだけ」
「?」
「私は私の命が尽きた時、魂を鏡に吸い込まれた様なのです。同じ様に、あの鏡にも別の魂が吸い込まれています」
「え?」

 彼女の魂が宿る鏡と、千鶴達を襲った鏡の物の怪は一対の神器だという。
 強い力を持っていた鏡は彼女の願いを叶える為にその身に写した男の姿や力を取ったのだろう。
 そう、斎藤や沖田にしたのと同じ様にだ。
 しかし彼女が言うには、その鏡にも魂が吸い込まれているという。

「父を殺し、私を襲ったあの男の魂が…宿っているようなのです」
「…っ!」
「その男の狂気と、私を護ってくれた鏡の神気が混じり始めています。元はもっと小さな鏡だったのに血を浴び狂気が増すのと同時に妖力も高まっている様で鏡自体も人の全身を写せるほど大きくなってしまいました。私は鏡を助けたいのです。あちらの鏡に移りあの男の魂を追い出します」
「出来るのでしょうか?」
「分かりません。でもそれしか方法は無いのだと思います。ですから…」
「私に出来るのでしょうか?」
「貴女にお願いしたいのです。私も今までにも多くの人の血を浴びせられました。でも私はそれで蘇ったりはしません。貴女の生き胆を頂いたとしても無理なのだと思います」
「でも、あの鏡は…」
「そうであろうと、思い込んでいるようなのです。物の怪は人の生き胆を食らうと妖力が増すといいますので、その所為ではないかと。ですが私は物の怪になるつもりはありません。もう、冥府へと旅立ちたいのです」

 千鶴は目の前で寂しそうに微笑む女性の目を見詰める。

「私、頑張ります」
「心から感謝を…」

 そう言った女性の姿が霞みだした。

「あ!」
「貴女の目が覚めようとしているのでしょう。私ももう戻らなくては」
「あの貴女のお名前は?私はちっ」
「駄目ですよ?」

 千鶴が名乗りかけた時、白く細い指先が千鶴の唇に押し当てられた。

「名は魂を呪縛する強い呪。簡単に物の怪やあやかしに名を名乗ってはいけません」

 利用されてしまいますよ、と彼女は微笑む。

「…千鶴、千の鶴と書いて千鶴といいます」
「駄目ですと申し上げたのに」
「貴女は物の怪にはならないと仰いました」
「………ふふ。私は、春日、と申します」
「かすが…?」

 千鶴の視界がどんどん薄れだし声も遠くなっていく。

「春の穏やかな日に生まれたので、春日という名を贈って頂いたのです」
「春日…春日さん!」
「はい」
「私、絶対っやり遂げます!」

 叫ぶ千鶴に彼女、春日は先程までの寂しそうなものとは違う、その名の如く春の日差しのような暖かな微笑を返してくれた。

 そして、千鶴は3人に覗き込まれる様にして目が覚めたのだった。
 春日から聞いたことのあらましはその日の朝のうちに皆に話した。
 彼女の境遇にその場にいた男達は皆唇をかみ締め悔しそうに手を握り締めていた。

「私は、彼女を助けたいんです。彼女の願いを叶えて差し上げたい。でも、私一人では無理です。ですから、どうか皆さんのお力をお貸し下さい」

 千鶴がそう言って深く頭を下げたとき、近藤をはじめとする所謂試衛館組の幹部達は当然だと頷いてくれた。
 手始めに春日の言う欠けた鏡の本体を探す事にしたのだが、これがかなり難航した。
 池と祠、分かっているのはそれだけだったのだからまぁ、当然ではあるのだが。
 最初は皆で探していた。
 しかし日が傾きかけた頃、あの物の怪が動き始めるのではないかと思われた為に鏡の捜索は土方と千鶴に委ねその外の幹部は篝火を準備し、あの廃神社を囲んだのだ。
 千鶴達がやっと目的の場所に辿りついた頃、廃神社、つまり春日の言う花鏡神社の中から鏡の物の怪が現れた。
 沖田の姿をしたままだった物の怪は斎藤の姿をとったりして彼等を翻弄するが、やはり彼等は新選組。
 何時までも惑わされたままではない。
 多対一を得意とする新選組の組長が相手では分が悪い。
 物の怪が目の前の男を睨み付けたとき、千鶴達が戻ってきた。

「あの右利きの斎藤さんを、鏡の姿に戻さないといけないんです」
「…俺がやろう」
「土方さん」
「成仏させてやりてぇんだろ?」
「はい」
「もしかしたら、その機会は一瞬かも知れねぇ。逃すなよ千鶴」
「はい!」

 土方は繋いでいた千鶴の手を放すと左手で愛刀の鯉口を切り、斎藤たちの側へと近付いていった。

 

 

続く


 

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