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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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明けましておめでとうございます!
本年度もどうぞ宜しくお願い致します。
そして!
60,000HITありがとうございます!
何だか本当にあっという間で喜びもですが驚きも半端ないです。
今年も楽しんで頂けるよう頑張ります☆


新年最初の小説は、素敵サイト様に捧げる小説です。
その方のみお持ち帰りOKとなっておりますので、御了承下さい。

そちらのサイト様の設定がツボで、以前から良く通わせて頂いておりましたが、新年の御挨拶を兼ねて小説を書かせて頂きました~。
斎千ED後で3人の子供が生まれた『斉藤一家』の物語です。
ものすごく楽しかったです☆
時水様、御許可を下さりありがとうございました!
小説を捧げた時水様の素敵サイト『ものもうす』はこちらから。
近いうちにきちんとリンク集のカテゴリーを作ります。
 
捧げた小説は右下からどうぞ。


 

 


 新年が明けたその翌日。

 初詣客で賑わう参道の近くの石段に、小さな人影が三つ並んでいた。
 目出度い日であるにも拘らずその表情は暗く沈んでいる。

「どうしよう…」

 溜め息混じりに呟いたのは長男の千雪。

「どうもこうも、足りない物は足りないんじゃん」

 諦め半分でぶっきらぼうに言ったのは次男の一流。

「ちぃにいさま、いちにぃさま…どぉして?」

 小さな手に乗せられていたそれを二人の兄に差し出した末娘の美鶴。

「みつるのおとしだま…ぜんぶ、よ?」

 少し頬を膨らませた妹を、千雪がゆっくり抱き上げて膝の上に座らせた。
 後ろからそっと抱きしめて、

「お店のものを買う為にはね、それと同じだけの価値があるお金を渡さなければ、いけないんだよ」

 優しく諭す。

「どぉして?」
「品物を売って、その人達が生活をしているから、かな?」
「でも…」
「ちぃ兄と俺のお年玉合わせても美鶴が欲しい物は手に入んないんだよ」
「……やっ」
「嫌って言われてもなぁ…。どうすんだよちぃ兄」

 弟妹の視線を感じながら、千雪はまた溜め息を吐いた。

「どうしよう…」

 これでは堂々巡りもいいところだ。
 何故、今こういった状態なのか。
 事の次第は四半刻ほど時を遡る。

 

 新政府に変わって早数年。
 戦乱に明け暮れていたこの日の本も、落ち着きを取り戻していた。
 目まぐるしく変わって行く情勢の中でも、変わらない物はある。
 その1つとも言って良いのがこういった人々の賑わいではないだろうか。
 いつも以上に活気に溢れた参道は、その両側に色々な露店が立ち並んでいた。
 その数ある露店のひとつ、台の上には自作であろう綺麗な髪飾りや帯飾りを並べた店の前。
 小さな女の子が熱心に1つの簪を見詰めていた。

「おじょーちゃんにはちっと早いんじゃないかい?」

 店の主がそう声をかけると、

「これ…ほしい」

 と見ていた簪を指差した。

「悪いけど、お金がないんじゃ売れないんだよ」
「おかね…ある…」

 そう言って少女が差し出したのは白い紙袋。
 中には確かにお金が入っていた。
 ……入ってはいたが、全く足りない。

「おとしだま…ぜんぶ、なの」
「足りないよ。ごめんよ、おうちの人とまた来てな~」

 周りの人の目がある為きつくは言わないが、小さな子供に構っていると商売上がったりもいい所だ。
 そもそもこの露店の商品自体が子供向けではないのだから。

「じゃぁね、ばいばい。ああ、そこの綺麗なお姉さん見てってくれよ!」

 あっちへ行けとあしらわれている等分かるはずもないのだが、それでも邪険にされたという事は雰囲気で分かる。

「おかね…あゆのに」

 小さな口から発せられる言葉は、まだどこか舌っ足らずで。
 その姿も大変愛らしく、目を引く。
 桜色の頬を膨らませ地面を見詰める瞳が潤んできた時。

「美鶴!ああ、ここにいた!」
「ちぃにいさま?」
「そうだよ、居なくなって心配したんだよ」
「…ごめん、なさい」
「うん」

 少女、美鶴の兄である千雪が優しく微笑んだ。
 毎年恒例の初詣。
 参拝を済ませた後は、両親から離れて兄妹3人で楽しんでいた。
 しかし、妹の姿が消えた事で兄2人は必死になって彼女を探していたのだ。

「ここで何をしていたの?」
「…これ…ほしい」

 美鶴が指差すのは綺麗な簪。

「うげ、たっけぇ」

 二人の真後ろからした声に振り返れば、そこには次男一流の姿が。
 薄らと額に汗が浮かんでいる所を見ると、こちらも必死に美鶴を探していたのだろう。

「この簪、子供には買えねぇって」
「どぉして…?」
「どーしてって、…はぁ…ちぃ兄。ちょっと離れた方が良いんじゃねぇの?」
「そうだね。美鶴、向こうに行こう」
「や、なの」
「どうして?」
「これ、おとしだまでかう。…かあさま、きれい」

 なるほどね、と兄二人は納得する。
 妹が簪に拘る理由。
 それは最愛の母への贈り物にしたいが為。

「確かに、この簪は母上にとても良く似合いそうだけど…」
「三人のお年玉合わせても買えっこねぇ金額だぜ?」
「父上に頼む…とか?」
「………喜んで買ってやりそうだな」
「…だね。ねぇ美鶴、父上を探してみよう?」

 千雪の提案にも美鶴は首を横に振る。

「おとしだま…しゅきなものかうの」
「でも足りないんだって」
「こえがいいの」
「美鶴、取り敢えずどれくらい僕達にお金があるか数えてみよう?」
「かぞえる?」
「うん、ほらおいで」

 千雪に手を引かれ、渋々ながらも美鶴は歩き出し。


 ―――冒頭に戻る。
 

 今年、両親や御近所の方々から頂いたお年玉全部かき集めても、それでもまだ足りない。

(簪かぁ…)

 美鶴の旋毛辺りに頬をくっ付けて千雪は溜め息を吐いた。

(美鶴…母上の事になると頑固だもんなぁ…どうしよう)

「ちぃ兄」
「ちぃにいさま」

 長男が一人でうんうん唸って考え込んでいるのを流石に心配になってきた弟妹が声をかけてきた。
 と、仕方ないよねと言いながら千雪が美鶴から頬を離し、妹を見下ろす。

「……ねぇ美鶴。美鶴のお年玉と僕のお年玉と一流のお年玉合わせて、足りない分だけ父上に頼んでみない?」
「やっぱ俺も巻き込まれるんだ…ま、特に欲しいモンがあった訳じゃねぇけど」
「うん、僕も。だから、ね?」

 流石はあの斉藤一の血を引いているだけはある。
 お金はあっても使い道がないと言っていたあの頃の斉藤と彼の息子達は、どこかやはり似通っている。

「…おとしだま…」
「み…美鶴…」

 そしてここにもきちんと両親の血と性格を受け継いでいる娘がいた。
 妙な所で頑固で、融通が利かない…。
 どうしたものかと兄2人が更に考え始めたその時。
 3人の視界が急に薄暗くなった。
 何事かと揃って顔を上げるとそこには1人の男が立っており、優しげな目でこちらを見下ろしていた。
 その男は胸元から何かを取り出すと、3人の前に膝を曲げ視線の高さを合わせる。

「「あ!」」

 男が取り出したそれをすっと出して見せると兄二人が短く声を上げ、

「かぁさまの!」

 妹の瞳がキラキラと輝きだした。

「これだろ?欲しかった物」

 にっと笑ったその表情には怪しげな感じはしない。
 だが。

「おっさん誰?」

 一流が訝しげに問う。
 そう。
 目の前の男に覚えは無い。
 つまり見知らぬ男なのだ。

「おっさん…おっさんかぁ……あいつとそう変わんねぇんだけどなぁ…」

 ちょっと精神に衝撃を受けてしまったらしい男が項垂れる。

「これ…かぁさまの、なの」
「ちょっ…ちょっと美鶴、駄目だよ」 

 男の手にあるのは、確かに先程まで露店に並んでいた、あの簪である。
 しかし、彼の手の中にあるという事は、彼がそれを買い求めたと言う事だ。
 手を伸ばしかけた美鶴を止めて、千雪が男に尋ねる。

「あの、僕達に何か御用ですか?」
「ん…ああ。これさ、今持ってるお年玉じゃあ足りねぇんだろ?」
「……聞いてらしたんですか?」
「人聞きの悪い事言うなって。丁度近くに居てさ、聞こえてきたんだよ」
「それで?」
「お前…本当にそっくりだな…」
「はい?」
「いや。ちょっと提案なんだけどよ、俺の仕事にちょっと付き合ってくれねぇか?」
「どういう事ですか?」
「俺は絵描きをしている。もしお前達の姿絵を描かせてくれたらお前らにそれぞれ駄賃を、お年玉をやる」
「…僕達の、姿絵ですか?」
「ああ。お前達のお年玉と俺からのお年玉を合わせりゃ、自分達のお年玉でこれを買った事になるだろ?」

 いい提案だと思うけどな、と男は笑う。

「描くのは時間はかかんねぇ。仕上がった分は後日届けてやるよ。俺は絵を描けりゃそれでいい」

 千雪と一流が顔を見合わせる。
 突然の提案に不安がないと言えば嘘になるが、でも受けなければ簪は手に入らない。

「ちぃにいさま。みつる、おてつだい…する」
「…僕達は、どうすればいいんですか?」
「やんの?ちぃ兄」
「悪い人には見えないから。それにあの簪、きっと母上に似合うから」

 千雪の言葉に、あの簪を髪に挿して優しく笑う母の姿が脳裏に浮かんだ。
 ああ、良く似合う。

「絶対似合う…仕方ねぇなぁ。いいよ、おっさん。俺達やるよ」
「お前…おっさんはやめろおっさんは」
「名前知らないんだからおっさんだろ」
「ったく…龍だ。龍っていうんだ」
「僕は千雪です。千の雪と書きます。弟は一に流れるで一流、妹が美しい鶴で美鶴です」
「へぇ……それぞれが両親の名を一文字ずつ貰ってんのか…いい名だな」
「おっさん」
「もうっ一流!龍さんだって」
「…龍さんはうちの両親の事知ってんの?」

 背負っていた画材を出して準備を始めていた龍に問えば、

「新選組の斉藤一、だろ?」

 さらりと、彼が言った。
 『新選組』と出た時点で千雪が目を細め、息を呑んだ。
 彼は父の過去を知っている人らしい。
 彼と係わる事で父が、両親が悲しい思いをするのではと身構える。
 それに気が付いた龍が呆れたように笑った。

「身構えなくていい。別に俺は政府のまわしモンとかじゃねぇって。…昔俺も新選組に居たんだ」
「え…?」

 木の板の上に紙を置き、近くにあった手ごろな石を正面に置く。
 準備を整えた龍がその石の上に腰を下ろした。

「ほら、3人ともこっち向け」
「あのう貴方も、隊士だったんですか?」
「いや、俺は…居候…みてぇなモンかな。ま、望んで屯所に居たわけじゃねぇけど…動くなよ」
「隊士じゃねぇのに屯所に居たんだ」
「まぁな。そん時に…色々世話になったのがお前らの親父だ」

 父親の過去を知る人が、目の前にいる。
 もっと話を聞きたいのだが、あまり動く事が出来ず結局『いいぞ』と言われるまで、じっとしていただけだった。

「後は色付けだけ出し、どっかの宿で仕上げる」

 そう言って、龍はあっという間に片付けを終えてしまった。

「美鶴」

 龍が来い来いと美鶴を手招きする。
 素直にそれに従った美鶴の手に、あの簪を渡してやった。

「さ、これはお前のモンだ」
「…ありがと」
「あ、じゃあお年玉渡さなきゃ」

 子供達は元々お年玉で買いたかったのだから龍は3人がまとめたお年玉をきちんと受け取った。

「じゃあな。お前らに会えて良かったよ」
「あのっ」
「うん?」
「家に寄って行かれませんか?」
「遠慮しとく。宜しく伝えといてくれ」

 龍はそのまま歩き出し背中を受けたまま手を振った。
 その姿が見えなくなった頃。
 美鶴の手に握られた簪に3対の視線が自然と集まった。

「母上きっとお似合いになるね」
「ばっちりだろ」
「かぁさま、うれしい?」

 見上げてくる妹の左右の手をそれぞれが握り、

「早く母上の笑顔がみたいから、約束の場所に戻ろう」
「心配してっかも」

 と、3人仲良く歩き出した。
 


 その後。

 合流した両親に事の次第を説明し、絵描きの彼の名が『井吹龍之介』ということを知った。
 彼のことを知った父は昔を懐かしむ様に目を優しく細め。
 子供達の想いを知った母はその瞳に涙を浮かべて、貰った簪で髪を纏め上げた。
 大好きで尊敬してやまない両親がとても嬉しそうだったので、子供達も幸せな気持ちでいっぱいになる。
 その幸せをくれたあの人にもう一度会いたいと千雪は願ったがそれが叶う事はなかった。

 ただ家に送られてきたあの時の絵が、どこかで両親を見かけていたのかもしれないと思わせる。
 そこに描かれていたのは自分達3人の笑顔の姿と、そこにはいなかった両親の姿。
 しかも母の着物の柄は新年におろしたばかりの新しい着物の物だった。

 幸せそうに笑う5人の姿絵。

 井吹の、龍の目にはこう映っていたのかと思うと何だか心が温かくなる。

「今年は幸先が良いっていうんだよね、きっと」

 飾られたその絵を見上げて千雪はにっこりと、微笑んだ。

 


終わり

 

 

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