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お久しぶりでございます。
やっと、やっとの更新です。
12月はオフの仕事が急激に忙しくなったり、週末は忘年会だったりと、書く時間があまり取れませんでした…。
これはある意味拷問です。
ストレスが堪ります。
そして昨日眼科に行ってきました。
『ドライアイで細かい傷がいっぱい入ってる。目薬出すからきちんと治療した方がいい。パソコン?仕事じゃないなら減らすなりどうかした方が目のためだよ』
といわれました…ムリ。
絶対ムリ。
休み休みするから、瞬きもいっぱいするから楽しみを奪わないでくれ~(涙)
パソコンもゲームもしたいんだよぉ…。
だって、狩りにも行きたいんだよ!
小説も書きたいんだよ!!
そんな気持ちで書いた千鶴ちゃんです。
遊んでみました編となっております。
右下の方からどうぞ。
「いっちぇまいいましゅ」
「副長と平助から決して離れるのではないぞ」
「あい、しゃいとぉしゃん」
「留守の間は任せたぞ、斉藤」
「御意」
斉藤に見送られながら、千鶴達は屯所を後にする。
足取りも軽く、その右手は藤堂とつないでいた。
「へーしゅけくん」
「どうした千鶴」
「おしょとしゃむいね」
「上に掛けるのもう一枚持ってくるか?」
「ん~ん、いやない」
「そっか?」
「しゃむいけどしゃむくないの」
「?」
「へーしゅけくんのて、あっちゃかい」
「―――っ!」
道の真ん中に座り込んで、自分の中の何かと必死に戦っているのであろう藤堂を、後ろから付いてきていた土方が呆れた様に見下ろす。
そんな藤堂を具合が悪くなったのではないかと千鶴が心配そうに見つめていると、突然身体がふわりと宙に浮いた。
「ったく、平助…先に進めねぇだろーが」
「ひじかたしゃん」
「あ、あーーーっ!」
自分と手をつないでいた千鶴は土方の腕に抱き上げられ、まるでそこが所定の位置かのような自然さを醸し出している。
「土方さんずりーよ!千鶴抱っこすんの無し!」
「はぁ?」
「手ぇつないで歩くんだから、下ろしてよね」
「だったらちゃっちゃか進め。昼餉までには戻るんだからな」
「わーかってるって」
ゆっくりと地面に戻された千鶴に藤堂が手を差し出す。
「行こっ、千鶴」
「うん」
千鶴も嬉しそうに手を差し出した。
お互いの手を握り歩き始める。
その様子を見て、仕方ねぇなと苦笑を漏らしながらも土方も歩き出した。
「土方さん」
「んだよ」
「先に鞠買いに行く?」
「どっちでも構わねぇよ」
「おちごちょをゆうしぇんしゃしぇちぇくやしゃい」
「藩邸には午前中に着きゃあいいんだ。行きでも帰りでも大差ねぇ」
「だったら菱屋に行こうぜ」
「菱屋?呉服屋に鞠があんのか?」
「昨日あったんだ。可愛いなぁって思ったんだけど、あん時は着物の事が頭ん中占めてたし…」
「だったら通り道だし、昨日の礼も兼ねて寄ってくか」
「こにょ、おきものをかっちゃごふくやしゃん?」
藤堂を見上げて尋ねる千鶴に笑顔で頷くと、
「新選組御用達ってやつ?隊服もそこであつらえてんだぜ?」
そう言った。
ちょっと前に迷惑かけちまったんだけどな、とバツが悪そうに呟いた声が聞こえたが、聞き返して良いものか迷ったので取り敢えず『しょっか』とだけ返した。
「直ぐそこなんだ」
言われて進めば、先程聞いた菱屋の建物が見えてきた。
暖簾を潜り中に入る。
「おや、これは藤堂様に…ああ、土方様まで」
「昨日は無理を言っちまって申し訳ない」
土方が丁寧に頭を下げると店の主人が慌てて前の方に出て来て、正座をしたまま土方を見上げてきた。
「いえいえ。お役に立ててようございました。そちらのお嬢様のお召し物だったのですね、よくお似合いで」
「店仕舞いしてたんじゃねぇかって思ってたんですが」
「新選組はうちのお得意様でございます。御要望がございますればいつなりとも」
「この京でそう言ってもらえるのは大変ありがたく思っています」
「しかし、昨日は『三歳位で女の子でとにかく可愛いんだ、その子に似合う着物がほしい。直ぐに見繕ってくれっ』と仰る様子が鬼気迫るもので、何事かと思いましたが」
「だ、だってよ…とにかく着物をーって思ってたから…ごめんって、だから睨まないでよ土方さん」
主人の視線が千鶴のもとに来る。
「本当によくお似合いだ」
「あの、あいがちょおごじゃいまちた。こえ、だいしゅきでしゅ」
「利発なお子さんですね。そのお着物を仕入れた甲斐がございましたよ。今日は何かまた御入用でございますか?」
「あのさ、あそこの鞠って売り物?」
藤堂が後ろの棚に並べられた色取り取りの鞠を指差す。
「こちらでございますか?これは飾りでして…」
「え?売り物じゃねぇんだ…?」
「鞠をお探しで?」
「うちの局長がこの娘に。こいつは局長の知り合いの娘で今うちで預かってんですよ」
「なぁ、御主人。この辺で鞠を置いてる店知らね?」
「そういう事でございましたら、こちらを差し上げましょう」
「譲って頂けるのは嬉しいが、金は払いますよ」
「昨日は儲けさせて頂きましたから、私の気持ちとしてお受け取り下さい」
「いいんですか?」
「もちろん。そうですね、この赤い鞠はどうですか?金の糸も編みこまれていて綺麗でしょう?」
菱屋の主人はそう言いながら飾ってあった鞠を手に取り、千鶴に差し出した。
「きえい…でもぉ」
「お気持ちだ、ありがたく頂いとけ」
「ひじかたしゃん」
「赤い鞠、千鶴に似合うじゃん。綺麗だし」
「へーしゅけくん…ほんちょうによよちいのでしゅか?」
ちょこんと首を傾げる様は本当に可愛らしい。
「ええ、どうぞ」
差し出された鞠をそっと受け取り、ぎゅっと胸に抱いた。
「あいがちょうごじゃいましゅ」
嬉しさから頬がほんのりと桜色に染まった笑顔の千鶴の頭を思わず撫でる土方と、鼻を押さえ視線を外す藤堂。
菱屋の主人は思わず目を見開いてその様子を傍観してしまった。
数年前。
彼らの隊服を仕立ててから良くも悪くも新選組とは浅からぬ縁で結ばれているが、この様に穏やかな土方を見たことなどあっただろうか。
いつも眉間に皺を寄せ内外共に厳しく取り纏める鬼と呼ばれし男。
そしてその男の指示を仰ぎ隊士ですら粛清してしまう集団の一部隊を預かる組長の藤堂。
(このお嬢さんはいったい?)
まさか新選組の面々のこの様な穏やかさを目の当たりにするとは思っても見なかった。
確かに彼らとて人ではあるのだから、いつもいつも恐ろしいわけではない事ぐらい分かっている。
「これからどこかにお出かけですか?」
「あい」
「散歩ついでに饅頭買いに行くんだよな!」
「ちやうよへーしゅけくん。おちごちょがしゃきよ」
「藩邸には書状出しに行くだけだろ?そっちがついででいいじゃん」
「ちやーう」
「良いの良いの。じゃあ行こうぜ、御主人ありがとうな!」
「ひゃあ!」
藤堂に手を引かれて千鶴は驚いたように声を上げるとそのまま店を出て行った。
「不思議なお嬢様でございますな」
残された土方に主人が言葉をかける。
「確かに不思議っつーか変な奴ですよ。居るだけでその場を和ませてしまう…娘です」
そう言った土方に主人はふふっと笑ってしまった。
それに少し眉を寄せる土方。
「ああ失礼を。ですが、土方様」
「何か?」
「父親の様なお顔をされておいでですよ」
「ちち…おや?」
「その様な穏やかな笑顔を拝見した事などありませんでしたから」
「俺が?」
「え…ええ」
土方のその表情の変化に、菱屋の主人も流石に戸惑ってしまう。
(これが鬼副長と恐れられている男?)
今だかつて見た事など本当になかった。
赤面する土方など。
これは笑顔よりも貴重なのではないかと思ってしまう。
「ち、近いうちに冬用の着物でも仕立てて貰いたい。適当に反物を見繕っておいて下さい」
「え、ああはい。お任せ下さい」
「それでは失礼させてもらいます」
「へぇ毎度おおきに。お気を付けて」
土方を見送って、ふぅと息をひとつ吐く。
「あんな顔をするもんなんだねぇ」
反物を見繕っておけというのは照れ隠しから来た勢いの言葉なのだろうが、こちらにとっては願ったり叶ったりだ。
「さてさて、あの色男殿に似合う物を探しておかなくてはねぇ」
「ひじかたしゃん、おかおあかいでしゅよ?」
「っんでもねぇよ」
「どしたの土方さん?」
「気にすんじゃんねぇ」
合流した二人に不審がられるので土方は二人の前を歩く事にした。
暫く歩き進め、藩邸までもうすぐという所まで来ると足を止めて後ろの二人を振り返った。
「おい、平助」
「んあ?なに」
「お前達はこの辺で待ってろ。流石に子連れで藩邸には行けねぇよ」
「ま、そうだろうね。鬼の副長が子連れなんて………ぷっ、いや案外いいかもよ?」
「平助」
「分かってるって。ここで待ってるよ」
「ひじかたしゃんいってやっしゃいましぇ」
「ああ行ってくる。いいか千鶴、平助の側を離れんじゃねぇぞ」
「あい」
「任せたぞ平助」
「おう!」
二人を置いて土方は藩邸の方へ行ってしまった。
「さってと、千鶴この辺は道も綺麗だし鞠つきしても大丈夫そうだぞ」
「まい…よごえないかなぁ?」
「汚れる…かなぁ?」
「きえいやもの…よごちゅのもっちゃいないの」
「じゃさ、こっち向かって投げろよ。俺きちんと受け止めるから!」
「うん!」
お互いの間を少し開けて、千鶴が藤堂に向かって鞠を抛る。
千鶴がどこに投げても藤堂はきっちり受け止めるし、藤堂も千鶴が受け取り易いように優しく胸の前に投げてくれる。
ただそれだけの事なのだが、普段そういった事をして遊ばないのでとても楽しい。
「千鶴、今度は高く投げるから、くるって回って受け止めてみろよ」
「えーできゆかなぁ」
「千鶴ならできる!」
「わかっちゃ!やっちぇみゆ」
「んじゃいっくぞ~ほれ!」
藤堂が鞠を高く抛る。
それに合わせて千鶴がその場でくるりと回り、正面を向くのと同時に鞠が手元に落ちてきた。
「とえた~!」
うまいうまい!と藤堂が手を叩いて褒める。
「ちゅぎはへーしゅけくんね」
「来い!」
「いくよぉ、しょれ!」
二人が仲良く遊ぶ姿を通りすがりの人達が微笑ましげに目を細めて振り返っていく。
傍からすれば兄妹の様に見えるのだろう。
小さな女の子が兄に遊んでもらってとても嬉しそうにはしゃいでいる。
女の子がくるりと回る度に黄色い羽織も共にふわりと翻り、まるで蒲公英が咲いているようだ。
実は先程からその姿を立ち止まってじっと見ている人物がいた。
はしゃぎ声に気が付いて二人を見ていたのだが、
「お?」
藤堂と今しっかりと目が合った。
「よーし!次は……総司っ!」
目が合った人物の名を呼んで鞠を大きく抛る。
それは綺麗に放物線を描き、二人の様子を見ていた沖田のもとに飛んでいく。
彼らの遊び方を見ていた沖田はにやりと笑うと千鶴が先程までしていた様にその場でくるりと回り、鞠を見事に受け止めた。
浅葱色の羽織が翻る様はやはり人々の目を引く。
この京で浅葱色を堂々と纏うのは新選組だけだ。
「おきたしゃん」
「何こんなところで二人遊んでるの?」
片手で鞠をぽんぽんと投げながら二人の下へ沖田が寄ってくる。
「土方さんが藩邸に書状を出す用事があって、俺達も一緒に着たんだ。今は土方さん待ち~」
「おきたしゃんはじゅんしゃちゅちゅうでしゅ…よね」
千鶴が沖田の後方を見てみるが、一番組の他の隊士の姿が見えない。
「二人が遊んでるのみつけて、先に行かせたから」
「お前な…隊務をさぼんなっての」
「だって千鶴ちゃんがいるんだから仕方ないじゃない、ねぇ?」
「ええ~、わたちのしぇいでしゅか?」
「小さい千鶴ちゃんは今日だけでしょ、多分」
「ちゃぶんっちぇ…ふきちゅなこちょいやないでくだしゃい」
「明日は僕が非番だから明日も小さいままだと嬉しいな」
「やでしゅよぉ。わたちがおちごちょできないでしゅもん」
「え~僕もやだな」
「おきたしゃん…」
沖田はくすくす笑いながら千鶴に鞠を渡してやった。
「でさ、さっきから君達の楽しそうな姿を見ていたのって別に僕だけじゃないんだよね」
「…何にも仕掛けて来ねぇし、もう直ぐ土方さんも戻ってくるだろうから無視してたんだけどさ」
「どうちまちた?おふちゃいちょも」
「ん~?んー取り敢えず千鶴ちゃんはそれもって藩邸に向かってよーいドン、かな?」
そう言いながら沖田が千鶴を庇うように背中にまわす。
藤堂の瞳も先程まで遊んでいた物ではなく、挑戦的な鋭い目つきに変わっている。
知っている。
こんな瞳をするのは御用改めなど、敵と一戦交えるような時だ。
カチャリと二人がほぼ同時に鯉口を切った。
それが合図だったかのように、
「新選組一番組組長沖田総司ならびに八番組組長藤堂平助、お命頂戴っっ!」
近くの路地から数人の浪士が飛び出してきた。
シャッと刀が鞘から抜ける音がしたのであわてて顔を上げると、振り返った沖田と藤堂と目が合った。
「千鶴ちゃん」
「千鶴っ」
二人の自分の名を呼ぶ声が重なって、
「「よーい、ドンっ!」」
走れとその言葉に背中を押される。
こんな小さな姿ではいつも以上に足手纏いもいい所だ。
だから迷わず、
「あいっ」
と返事を返し、藩邸に向かって駆け出した。
続く…