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ギリギリ18日に更新です。
明日の分はもっと早くに更新します。
ちょっとシリアスな感じになりました。
ED後で子供達が出てきます。

9月18日は色々な意味で土方さんにとって特別な日でもあるのだなぁと思い書きましたが…。
もっと早く書けって感じですね(汗)

そんな『薄桜鬼』そして『千鶴』おめでとう小説は右下からどうぞ。
(千鶴の誕生日…あまり関係ない内容です…)

 

 

 蝦夷の地に訪れた短い夏。
 静かな時間が流れる山間に住むのは昔、鬼と恐れられた男の大切な家族。
 周りに民家のない場所ではあるが、それが寂しいとは家族の誰も思ったことはなかった。
 どこの誰もが見ても『仲の良い家族』だと称する様な暖かな家庭。
 今日もいつもと変わらず穏やかな日常が営まれていたのだが、息子の1つの些細な質問により、父親の表情が暗くなってしまう。

「9月18日?」

 質問をしたのは息子。
 それに答えたのは母親。
 しかしその答えを反芻したのは、彼女の夫であった。

「はい」
「冗談じゃ…ねぇよな?」
「はぁ…?どうしたんです、歳三さん」

 こちらに顔を向けた妻が洗濯物を畳む手を止めて、首を傾げた。

「千鶴の生まれた日が…そうか…」

 これもまた運命だったのかもな、と呟くように言うと歳三は立ち上がり縁に出て行った。

「父上、どうしたのかしら?」
「…さぁ?」

 父親である歳三に瓜二つの長女、千歳が不思議そうに部屋を出て行った歳三の後姿を視線で追う。

「ねぇ新。僕、聞いちゃいけないこと聞いちゃったのかな?」
「ばーか。誠が聞いたのは母上の生まれた日にちだろ。それの何がいけないことなんだよ」
「でも父上が…」
「9月の18日って何か他に心当たりないの?母上」

 千歳の5つ下の双子の息子達、誠と新の視線が母である千鶴に向けられる。

「そうは言っても…何か他にあったかしら?…あ」

 何か思い当たったのか千鶴が小さく声を上げると子供達が興味ありげにその顔を覗き込む。

「確か仙台に置いていかれたのがその頃じゃなかったかしら?」
「…新選組が北上していた時のお話?でも未だにそれ信じられないのよねそのお話。だって、あの父上が母様を置いて行っちゃうなんて、私達からすれば天変地異でも起こるんじゃないかしらってくらいの事だもの」
「だよな。あの母上にべた惚れの父上がそんな事するとは思えねーもん」
「父上は母上を戦場に連れて行きたくなかったんでしょう?父上はその頃にはもう母上の事を愛しいって思っていたんだよね」

 にっこり笑う誠にどうかしら、と千鶴も微笑む。

「ねぇ母様。母様は何時から父上の事好きだったの?海を渡って追いかけるくらい傍にいたいって思ったんでしょう?」
「え、ええぇっ!?」
「だって、父上は鬼とか言われてたんでしょ?そんな人を何時好きになるのかなぁって」

 そろそろお年頃な千歳にとって、いつも仲の良い両親の馴れ初めは気になるところでもあったらしい。

「母様、お願いお話して?」
「ええっと…そうねぇ。何時って言われると…困るんだけど…気付いた時にはもう、歳三さんの背中を見詰めて…追いかけていた…かな」
「それは屯所にいた頃?」
「なぁに新まで」
「え~だっていつもの二人の様子見てたらさ、色々信じられないこと多いんだもん」
「父上は最初母上の事監視してたんでしょ?しかも何かあったら殺すつもりで。そんな二人がどうやったらここまで鴛鴦夫婦になれるのか、僕も気になるな」

 子供たちの純粋な視線に千鶴は頬を染めながらも、

「沢山の事があり過ぎてどこから話していいのか分からないくらい。でも、そんな中でも私はずっと歳三さんを…新選組を見てきた」

 静かに語り始める。
 歳三と初めて会ったのは雪の舞う京の一角で、動けば殺すと刀を突きつけられた。

「思えばあの日のあの瞬間から私の心は歳三さんに捕まっていたのかもしれないわ」
「母上…それってなんかある意味凄過ぎ」
「そう?」
「刀を突きつけられたんでしょ、それなのに」
「だって本当に綺麗だったの。月に照らされた雪がまるで桜の…狂い咲きの桜のように見えて。そんな月と雪を背負った歳三さんは本当に神秘的なほど綺麗だったの。長い髪が、こう、風になびいてね」

 そう言った千鶴は両手を胸の前で合わせ瞳を閉じた。
 昔のその光景を思い描いているのだろう。

「母様?」

 千歳に呼ばれて千鶴が瞳を開ける。

「本当に綺麗だったのよ。それから父様を、貴方達のお祖父様を探す為に屯所で暮らすようになって、色々と気を使って頂いたわ。何も出来ない事が辛くてお手伝いを申し出て、少しずつだけどお仕事ももらえるようになって」
「母上は父上といる時間が多かったんだ?」
「うーん、一概にそうとも言えないかもしれないわ。お茶をお出ししたりする以外は、副長室に入ることなんて殆どなかったから」
「母様のお茶は父上の大好物よね、今も」
「これだけは千歳にだって譲れないの」

 ふふっと笑う千鶴の顔は母親としてのものではなく、どこか少女のような可愛らしさを見せる。
 本当に一体いくつなのだと思えるほどに母は若い。
 まぁそれに関しては父親の歳三にも言えることなのだが。

「鳥羽、伏見で起こった戦いで初めて新選組が…幕府側が負けてから、時代は大きく流れ始めたわ。幕府側は段々と追い詰められて…それでも武士の世を諦めなかった新選組は同じ志を持つ人達と合流しながら北上したの」
「大鳥の圭介小父様や榎本の小父様のことね」
「ええ。大鳥さんにはこちらへ渡る際にお力をお貸し頂いたり、歳三さんのお傍にお仕え出来る様に榎本さんも便宜を図ってくださった。今でもその事は心から感謝してる」
「こちらへ来た頃はもう父上は母上にべた惚れだった?」
「それは…どうだったのかしら?でも、とても優しくして頂いたわ。それが恥しくもあったけど…とても嬉しくて幸せだった」

 もちろん今だって凄く幸せよと言う千鶴に、子供たちも笑う。

「母上は、父上を追いかけた事一度も後悔しなかった?」
「ええ」
「本当にちょこっとも?」
「後悔なんて一度もしなかったわ。私は私の意志とそして…託された皆さんの思いに背中を押されて進んだんだもの。後悔なんて考えた事もなかった」

 それが子供達からの好奇心から出てくる質問であっても千鶴は真っ直ぐと彼等を見詰めて偽る事なくその思いを告げる。
 その凛とした視線は、子供達にとって自慢でもあり憧れでもある。
 どちらかというと小柄で肌の色も雪のように白く。
 少し高めの声で紡がれる言葉はいつも慈愛に満ちていて。
 自分達がどれほどに愛されているのか何時も何時も伝わって来る。
 綺麗で可愛くて優しくて、でも時には厳しくて。

「貴方達にもね自分の気持ち、志に従って真っ直ぐ進む道を見つけて欲しいの。出来ないって諦めて欲しくない。もう駄目だって投げてしまわないで欲しい。進む先で迷ってもいい間違ってもいい逃げ出したっていい。自分の心を見失ったらいつでも私達を頼ってくれていい。立ち止まったらまたそこから歩き始めればいいのだもの。貴方達は決して一人ではないの。今までもこれから先何年経とうとも貴方達は私達の愛しい大切な宝物なのだから、ね」
「母様」
「「母上」」
「自分の人生を後悔なんてしないで。志を見失わないで。誠の心は貴方達の中に受け継がれている。胸を張って生きなさい」

 大好きで大好きで、大好きで仕方のない母に言われた言葉はすうっと胸に沁み込む。
 だからこそ素直に返事が口から出ていた。

「「「はいっ」」」

 自分の両親が昔どういった生き方をしていたのかは、きちんと自分で考えて理解出来る歳になった頃に話して聞かされた。
 特に父親の立場がどれほどに危ういのかも聞かされている。
 もしかしたら今でも政府の者達に見付かれば父は連行されてしまうのかもしれない。
 その先には死が待っている。
 それでなくとも、父は『羅刹』なのだ。
 父が誰よりも大切にしているのは妻である母だ。
 二人が一緒に過ごせる時間が後どれほど残っているのかは分からない。
 羅刹の力を使い大分命を削っていたはずなのだが、父の命はまだ終わりを迎えていない。
 実際羅刹となった後も15年程父は命が途切れる事なく元気に過ごしている。
 これに関しては本人が一番不思議がっていた。
 だが母の親友でもある八瀬の方が言うには純血でしかも東の鬼の頭領、雪村家の姫でもあった母の血を飲んでいた事。
 西の鬼の頭領であった男から『薄桜鬼』という鬼の名をもらっていた事。
 それらが父を羅刹という柵から解放し鬼としての生を生きているのではないかと。
 つまり千鶴に流れる濃い鬼の血が羅刹の力を打ち消し、風間の与えた鬼の名が新たに歳三の魂を縛ったのだろうと言うことだ。
 名は魂を縛る。
 もしかしたら風間はそれを知っていたのかもしれない。
 そう考えれば歳三の命が消えない事の説明がすんなりとつく。
 鬼の生命力は何の対価も払わずに強く存える。

『もしそうなら二人の子供もある意味純血の鬼ね』

 八瀬の方の言葉はとても安心できる物だった。 
 出来るだけ長く永く。
 両親には幸せに寄り添っていて欲しい。

「あ…それで母上、父上は」

 いつの間にか話がそれてしまった。
 誠は父の出て行ったほうに顔を向ける。

「ここの片付けをお願いしてもいいかしら。歳三さんのところに行って来てもいい?」
「どうぞ」
「夕餉の支度も私が始めておくから」
「ありがとう」

 千鶴は家のことを子供達に頼み部屋を出て歳三が向かったであろう場所へと足を進めた。
 その様子を見送った千歳は小さく息を吐く。

「姉上?」
「ん…うん…」
「何、どうしたの?」
「母様、きっと父上の表情が曇ったことの理由勘付いているのだろうなぁって」
「まぁ母上だし」
「母上だもんな」
「でも話を逸らしたっていう事は、まだ私達が聞くには早いことってことでしょう?」 
「そうかなぁ…。僕はきっと母上が自分で話すのじゃなくて父上が僕達に話した方がいいと思っての事かなって」
「なら話してくれるの待とうよ」
「そうね。そうしましょ。じゃあ誠、畳んだ物は箪笥へ。新は湯殿の掃除。私はお勝手場に行くから宜しくね」
「はーい」
「んっ」

 歳三と千鶴曰く。
 二人の血を引く子等は本当に良くできた自慢の宝物、だ。
 もちろんそれを否定する者はいない。

 

 

 千鶴が向かったのは春になると良く足を運ぶ場所。
 小道を歩き木々の生い茂る場所を抜けると広がる視界。
 季節が春ならばそこは桜の海が見れる神秘的な場所なのだ。 
 今は葉も散り雄大な木々が枝を広げるばかり。

「いた」

 その中でも一番大きな桜は雪村(土方)家の一番のお気に入りだ。
 歳三はその根元に立ち、幹に背中を預けるようにしていた。

「なぁ千鶴」

 振り返らずとも近付く足音が誰の物であるかはすぐ分かる。

「歳三さん、子供達が心配してますよ」‍

 ゆっくりと歩み寄り千鶴は歳三の隣に並ぶ。

「お前、気付いてんな」
「9月18日のことですか?」
「…ああ」
「子供達には話してません。話すのは、歳三さんでないと駄目だと思ったので」
「そうか…。あの日から…20年近く経つんだな…」

 そう言って歳三は自分の右手を少し上に上げ、じっと見詰めた。

「俺達が…俺が芹沢さんを殺した日だ」
「…歳三さん」
「まさかお前の生まれた日だったとはな。秋口だってのは知ってたけどよ外国みてぇに祝ったりしねぇし」

 それは以前大鳥に聞いた話だ。
 外国では生まれた日を誕生日とし、その日に生まれた人を祝うらしい。
 裕福な者は大規模な宴会を開くとも。
 自分達にはない習慣だ。

「芹沢さんは…歳三さんに貫かれた時微笑まれたのだとお聞きしました」
「………ああ」
「きっと歳三さんになら新選組を任せても大丈夫だと思われていたのでしょうね」
「どうだかな。…芹沢さんはとても博識で聡い人だった。時代の先を見て物事を進めることが出来る人だった。まぁ酒癖も女癖も最悪だったがな…はぁ」
「芹沢さんがご存命であったとしても。新選組を護っていけたのは歳三さんをおいて他はいらっしゃらなかったと思います」
「そうなるとあの人は分かっていたのかもな。結局…俺達は、新選組はあの人の将棋盤の上で動かされていたんだろう」
「歳三さん」
「近藤さんが好きだった読み物に三国志があったろ。『死せる孔明生ける仲達走らす』って言葉がある。俺が司馬懿だというわけじゃねぇが、正に芹沢さんは死んだ後も俺達の道を決めて動かしてた…ってぇ思う」
「違います」
「千鶴?」
「確かに芹沢さんは先を見ていたのかもしれません。ですが実際にその時代を歩き切り開き、先へと進んだのは歳三さんであり芹沢さんではありません。その道を選んだのは歳三さんです。貴方の人生です。…歳三さんは今を後悔してますか?」

 千鶴が小さく首を傾げて尋ねる。

「まさか。後悔なんざ微塵も感じてねぇよ。感じるのは幸せだ」
「誰かに進まされた道であれば、歳三さんならきっと後悔なさってます。貴方が、貴方の志のままに生き抜いてきたからこその幸福ですよ」
「千鶴…ありがとう」
「私が見詰めて追いかけてきたのは土方歳三という、誠の志を抱く真の武士の背中です」
「本当にお前の強さにはいつも救われる」

 短く妻の名を呼び歳三は彼女を掻き抱く。

「千鶴、俺は幸せだ」
「はい」
「あの日から新選組は変わった。俺も変わった、皆変わった」
「はい」
「お前と出会って、また変わっていった」

 そう言って額に口付ける。
 千鶴は嬉しそうに目を細めてそれを受けた。

「あの日から色々あって今がある。千鶴…お前を愛してる。お前がいてくれるから俺は過去に囚われなくなった」
「そんなの私だって同じです。歳三さんがいてくれるから怖い物なんて何もないんです」

 千鶴が歳三の腕の中で顔を上げ、

「愛しています。色々な過去を背負いそして今私と一緒に生きてくれる貴方を心から愛しています」

 ゆっくりと手を上げて、その細い指先で歳三の唇に触れる。

「貴方が私と共に生きる事を選んで下さったあの日から、貴方の後ろではなく隣に並びたいと思うようになりました。歳三さんと同じものを同じ場所で見ていたいかっうんっ」

 唇に触れていた指を歳三が掴み、そのまま強く口付ける。

「お前は本当に…愛しいよ。愛してる、愛してる」

 何度も何度も思いを込めて口付ける。

「歳三さん」
「ん?」
「貴方の道は私の道です。これからもずっと隣を歩かせて下さいね」
「ああ。これからもよろしく頼む」
「任せて下さい」
「千鶴」
「はい」
「お前の生まれた日がこの日で良かったと本当に思う。俺に惚れてくれた事感謝するぜ。千鶴…愛してる」
「歳三さんが必要として下さった事が何よりも私は嬉しいんです。愛しています…ずっとずっと、未来永劫に」

 その後も暫く抱きしめあっていた二人だったが家で待つ子供達の事を思うとあまり遅くなるわけにもいかない。

「帰るか」

 肩を寄せ合い、家へと続く道を二人で並んで歩く。

「いつか子供達にも話してあげてください。どんな事でもあの子達なら大丈夫です」
「そうだな」

 ともに歩く人がが本当にこの人でよかったと。

 心の底から、そう実感した。

 

 

終わり

 


 

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