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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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本当にありがとうございます!!
9月に開設して半年も待たずにこの大台。
これも足を運んで下さる皆様のおかげです。
これからも妄想の詰まった話を書いていきたいと思っておりますので宜しくお願い致します☆

さて、予告しておりましたように甘々を目指した夫婦騒動録5でございます~。
せめて14日に間に合わせたかったんですが…二日遅れです。
お気に召して頂けると嬉しいです。

甘さを目指した小説は右下からどうぞ。


 

 


「……千鶴」

 しっかりと閉じられた戸の前で土方が中に呼びかける。
 もう陽も落ちて暗いというのに灯りは点されていない。
 だが中には人の気配があるので、千鶴はここにいるはずだ。

「千鶴、話がある。開けるぞ」

 そう言っても返事は無い。
 仕方なく、

「断ったからな」

 と宣言して、障子戸を開いた。
 中にはこちらに背を向けた状態で、この部屋の主が正座をしている。
 土方が中に入り、後ろ手で戸を閉めた後もこちらを振り返る様子は無い。
 その姿を見て土方が溜め息を吐くと、千鶴の細い肩が小さく揺れた。

「千鶴」
「………」
「千鶴」
「……無かった事にして下さいと…申し上げました」
「その理由を聞いてねぇ」

 そう告げて、土方もその場に腰を下ろす。

「私は……私では…新選組の副長に…釣り合いません」
「誰がそれを言った?」
「どなたも仰ってません…。仰らずとも、直ぐに気が付くべきでした」
「千鶴、釣り合うって、なんだ?」
「私は…」
「新選組の秘密を少しばかり知ってしまった不幸な娘、か?」
「………不都合があれば…殺されても文句が言えぬ身です」
「今も、そう思っているのか」
「私には何もありません…。私が嫁いだとしても…土方さんにも新選組にも何の利益も…ありません」

 背中を向けたままの言葉。
 その語尾が震えている。
 泣きたいのを我慢しているのだろうと思うと溜め息しか出てこない。

「近藤さんが俺に聞いた事を思い出した」

 振り向かない背中に、土方が語りだす。
 
「お前のことが嫌いなのかって。好きか嫌いかだけで答えんだったら、俺はお前が好きなんだろうな。嫌っている奴が淹れる茶を好んだりしねぇだろ?」
「お、茶なんて…」
「俺はお前の淹れる茶が一番好きだし、お前が洗濯した後の着物は気持ちが良くて好きだ。食事だって外で食べるよりお前が作ってくれた物の方がずっと良い」
「…そのような事は…誰だって出来ます」
「お前は?千鶴は俺が嫌いか?」
「っ!…そんな聞き方は…ずるいです」
「だろうな。でもよ、それが一番手っ取り早いだろ?…どうなんだよ」
「………」
「さっきまでの様子だけで判断すりゃ、俺はお前に好かれてたんだって思ったんだが…これは自惚れか?」
「………土方さんにはもっと素敵な方がいらっしゃいます」
「好きでもねぇ金持ちの娘を娶って新選組に貢献しろってことか?」
「副長ならば、新選組を優先すべきです」
「俺にはもっとって言うくれぇだから、お前は俺を好いているんだよな。お前が好いた俺は見てくれだけか?地位だけか?」
「もうっ…もうやめて下さい…」
「千鶴」
「私には…荷が重過ぎます…」
「新選組の副長って地位が…重いか?」
「もう、出て行ってください」
「お前の中に、土方歳三ってただの男は存在しねぇのか?」

 土方自身も何故こんなに必死になってしまうのか分からない。
 一回り以上も離れた娘に、何故こうも答えを求めてしまうのか。

「千鶴」
「…いです」
「何だ?」
「嫌いです…私は土方さんが嫌いですっ」
「…それが、お前の本心か」
「………はい。ですからもう…」
「分かった。それがお前の本心なら、近藤さんにもそう伝えよう。…邪魔したな」

 背後で戸が開く音がして、タンッと静かに閉められる。
 背中の向こうに感じていた土方の気配も消えてしまった。
 一人きりになった部屋の中。
 千鶴は堪えきれず大粒の涙を流し始めた。

「ごめ…なさい……ごめん…なさい…」

 両の手で顔を覆い、嗚咽が漏れるほどに泣きじゃくる。

「嫌いなんて…嘘なのに……嘘…なのにぃ…ふぅ…うう…」

 拭っても拭っても涙は止まらない。
 自分の初恋は、こんなにもあっけなく終わってしまったのだと。
 そう思うと胸が苦しい。

「ひじ…かたさぁん…」

 千鶴が、本当に好いた男の名を口にした。

 その時。

 突然、背後から両腕を強い力で掴まれ、そのままグイッと引かれる。

「きゃあっ!」
「馬鹿が」

 え?っと思った時には既に力強い腕でしっかりと抱きしめられていた。

「そんな風に泣くくれぇなら最初から自分の心を偽るんじゃねぇ」
「…出て…行かれたんじゃ……」
「お前があまりにも頑固だからよ、一芝居打った」
「誰も…居なくなったと…」
「新選組の副長を嘗めてんじゃねぇよ。気配を消すなんざ朝飯前だ」
「だ…ましたんですか?」
「素直にならねぇお前が悪い」

 そう言った土方に、更に抱きこまれる。
 力強いその抱擁は少し苦しいが、嫌ではない。

「強情な所はさすが江戸の女だ。が、張り過ぎるのはちぃっと頂けねぇな」
「……私は…」
「千鶴、俺が嫌いか?」

 土方が先程と同じ問いかけをする。

「わた…し…は…」
「俺はさっきも言った。俺は、お前が」

 好きだと、耳元で囁く。
 好いた男に抱きしめられ、耳元で少し低めに想いを囁かれ。
 恋の駆け引きとは縁遠かった千鶴には抗いようもない。

「ずるい…ですぅ…」
「ずるかねぇよ」
「ひきょお、です」
「卑怯じゃねぇよ。…なぁ千鶴」
「…はい」
「お前が好いてくれた土方は新選組の副長じゃねぇと駄目なのか?」
「?」
「例えば他の職についてたらお前は俺を好いてくれなかったのか?」
「そんな…私は…私は…」
「俺がもし…新選組の副長を降りたら、お前は俺を好いてくれんのか?」
「駄目っ!」

 土方の言葉に千鶴が強く反応し、土方の腕の中で身体を捩る。

「やっと振り返っ「駄目です!」…千鶴?」

 土方の言葉を遮り、千鶴が叫ぶように言う。

「絶対駄目です!土方さんはっ、土方さんは新選組に必要な方です!!副長を降りるだなんてそんな事冗談でも言ってはいけませんっっ!」
「千鶴」
「私は土方さんが土方さんでいらっしゃる限りどこで何をしておられてもきっとっ」
「きっと?」

 土方の瞳が、悪戯が成功した子供のように細められる。
 嵌められた事に気が付いても後の祭り。
 所詮、初心な千鶴が色々と男女の修羅場を潜り抜けてきたと思われる土方に敵う筈がないのだ。
 ささやかな抵抗として身体の向きを戻そうとしたが、それは土方に阻まれる。
 それどころか正面から向き合うように体勢を変えられてしまった。

「千鶴?」
「……やっぱり土方さんは、ずるいです」
「ああ、そうかよ。お前がそう言うんだったらもうそれでいいさ」

 頬を少し膨らませ、上目遣いに睨みつけるが全く効果はないようだ。

「千鶴、『きっと』の後が聞きてぇ」
「…」 
「だんまりはもう良いだろ?」
「土方さんは…本当に…ずるいです」
「ちーづる…」
「でも…」

 千鶴は1つ息を吐き、そして改めて土方を見上げた。

「私はそんな土方さんを含めて…副長の土方さんも、沖田さんにからかわれてる土方さんも、近藤さんと夢を熱く語られている土方さんも…他の色んな色々な土方さんも全部、好き…です」
「千鶴…途中聞き捨てならねぇもんがなかったか?」
「聞き捨てならない事でも全部含めてです。全部、好きです。…お慕いしております」

 頬を紅く染め物凄く恥ずかしそうに言いながらも、決して目を逸らそうとはしない。

(こりゃ、参ったな)

 土方はそんな千鶴を優しく見詰め返す。

「あれだな」
「え?」
「昼までは特にお前を女として意識なんざしてなかったってのによ。ちょっとした切っ掛けから、こうも気持ちってのは変わるもんなんだな」
「…私は…初めてお会いした時から…」
「あれが?出会いとしちゃ最悪じゃねぇか」
「でも本当なんですもの。月を背にした土方さんは…凄く素敵で…怖いくらいに綺麗で…」
「そうか」
「はい」
「千鶴、抱きしめて良いか?」
「ふぇぇ?」
「…なんて声出してやがる。良いか?」

 同意を改めて求められると、とても恥ずかしいという事を千鶴は学ぶ。
 しかし、目の前の男はどうも答えを待っているらしい。
 どうぞとも言えず、小さくこくんと頷いた。
 すると、先程とは違いゆっくりと優しく、それでもすっぽりと腕の中に閉じ込められてしまった。
 おずおずと頬を摺り寄せるように土方の胸に当ててみた。
 自分を抱きしめる腕の中で鼻腔をくすぐるのは、土方の匂い。
 生まれて初めて異性として意識した男の匂い。
 それに今、包まれている。
 花開く事もなく散ってしまったと思った初恋が実る事を許されたのだと、その香りに実感させられた。

「千鶴」

 はらはらと、止まっていたはずの涙が零れ落ちる。
 だが先程の様に手の甲で拭う事はしない。
 流れ落ちるまま、ただそのままにしていると土方の大きな掌がそっと千鶴の頬に触れてきた。

「気付かねぇもんだな…お前がこんなにも泣き虫だったなんてよ」
「…私も…です」
「そうか」
「はい」

 頬に触れたまま、親指の腹で目元を拭ってやる。
 それでも涙は止まらない。

「悲しい時の涙は…我慢すれば止まります。けど…嬉しい時の涙の止め方は…」
「俺が止めてやる」
「土方さん?」
「悲しい時も嬉しい時もお前の涙は俺が拭って、止めてやるよ」

 土方はそういうと顔を寄せて涙が零れる目尻に口付けを落とす。 

「だから、泣きたい時は俺のところに来い」

 良いな、と言い聞かせるように言えば。
 嬉しそうに微笑んだ千鶴が『はい』と小さく頷いた。

 

 


続く

 


 

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