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夫婦騒動録:4です。
今回はちょっとシリアスムードです。
まぁ、それもそんなに長くは続かないんですけど…。
でも、ここは通らねばならぬ道、と思って書きました。

5では結構甘いお話になる予定ですので、甘いのお好きな方はもう少しお待ち下さいませ。
とはいえ、あまり期待はしないで下さいね?
ハードルは低い方が好みです(笑)

小説は右下からどうぞ。

 

 


「……千鶴」
「はい」
「悪ぃ」
「え?」
「何だろうな…すげぇ嫌な予感がしやがる」

 土方はそう言うと大きく、そして深い溜め息を吐いた。

「平助君…止めなくて良かったんでしょうか?」
「…今広間に行ってみろ。総司が絶対話している昼間の事と、平助が見て行った今の状況。一気に問い質されんぞ」
「え…っと」
「ったく。これはもう俺と千鶴の問題なんだからよ…ほっとけって話だよな」

 千鶴に触れていた両手を離し、そう呟く様に言った土方の言葉が千鶴にも届いた。

(土方さんと私の問題…土方さんの問題じゃなくて…私の問題でも無くて…二人の問題…)

 なんだろう、凄く嬉しい。
 だが、実際ほっとけと言ってもそうはいかないだろう。
 何せ相手は新選組を束ねる鬼副長なのだ。
 その土方が婚姻を結ぶという事になればきっと今の騒ぎではすまないだろう。
 会津藩の上役から花町の遊女に至るまで、土方の顔は色々な意味でとても広い。

(あれ…?何だかとんでもなく不安になってきた…かも…)

 土方の言葉に顔を赤らめていた千鶴が、今度は青ざめていく。

(…土方さんの元に嫁げる事は…私にとっては幸せな事だけど…)

 先程までの様子と違う千鶴に気が付いた土方が怪訝そうに彼女を見る。
 その視線に千鶴は気が付かないまま、どんどん落ち込み始めていた。

(私…分不相応な事…考えてたのかもしれない…)

「千鶴?」

(どうしよう…私なんかが嫁いでいい方じゃない)

「あ、の…」
「…どうした?」
「このお話…」
「ん?」
「無かった事に下さい」
「千鶴?…お前」

 千鶴はすくっと立ち上がると、

「すみませんっ」

 そう言って部屋を飛び出していった。

「あっ、おい待てっ!」

 土方が慌てて追いかけようとした時、玄関の方が騒がしくなる。
 そちらに気をとられてしまい初動が遅れてしまった。
 少し離れた場所からタンッと戸の閉まる音が聞こえ、千鶴が自分の部屋に飛び込んだのだろうと予想できた。

「さっきまでは乗り気だったじゃねぇか…」

 彼女の中で何があったのかと考えれば、容易に答えに辿りついた。
 千鶴は自分の立場をよく分かっている。
 それは土方達が思っているより、ずっと心の深いところまで沁み込んでいるのだろう。
 新選組が彼女の自由を奪い束縛している。
 それを命じたのは他でもない土方本人だ。

「しまった…俺もちっと浮かれてたな」

 千鶴はきっと『私なんかが』と考えたに違いない。
 自分を卑下するなと言いたいところだが、そうさせているのはきっと自分だ。
 
(それなりにでかくなり出した組織の副長の元に嫁ぐってぇのは、かなりの負担になるんだろうな…)

 それでも彼女なら、千鶴ならしっかりと務めてくれる気がする。
 副長の妻としては申し分ない。

(問題はそこじゃねぇんだ。…俺が一人の男としてあいつを、雪村千鶴という一人の女を本当に幸せに出来るのかって…とこだよな)

 それが出来なければ、この話はこのまま流してしまった方がいい。
 近藤に聞かれた『トシは雪村君が嫌いなのか?』という言葉が不意に思い出される。
 あの時は話が逸れて返事を返さずに終わったが、今それを答えるならば何と答えるだろう。
 飛び出していった千鶴の瞳には涙が堪っていた。

(泣かせちまってどうするよ…)

 自己嫌悪に陥っている場合ではないと、立ち上がる。
 兎に角このままではいけないと、千鶴の後を追おうと踏み出したが、

「トシいるか?」

 と声を掛けられそれも中断させられた。
 先程玄関の方が騒がしくなったのは彼が帰って来たからだったのだろう。

「近藤さんか」

 土方が言うと襖戸の方が開けられ、笑顔の近藤が姿を見せた。

「近藤さん、あんた出かけてたんじゃねぇのか?」
「ああ!聞いてくれトシ」
「………(どうもこの笑顔の近藤さんには嫌な予感しかしねぇんだが)……んだよ」
「お前と雪村君の別宅を見つけてきたぞ!」
「……………………は?」
「雪村君を娶れば、彼女も男装のままではいかんだろう?だがそうなると、女の姿で屯所には置けんしならば別宅が必要かと思ってな」
「………で?」
「最近丁度いい物件の話を貰っておってなぁ!俺は新しい別宅は必要ないと断ろうと思ってたんだが、いやはやまさか必要になるとはな」
「……………はぁ…」
「他の人手に渡っては遅いと思ってな。この屯所からもそう離れてはおらんしその物件も中々良かったぞ」
「……まさか見てきた、とか言うんじゃねぇよな?」
「二人で暮らすには少々広いかもしれんが、なに、やや子が生まれれば丁度良くなるだろう!」
「って、おいおいまさか!?」
「トシ名義で買い取ってきた。大丈夫、もちろん俺から新婚の二人への贈り物だ!」
「なっ何が大丈夫だっっ!!つか、新婚じゃねぇしっ!」

 流石の土方も近藤の暴走っぷりに声を上げる。

「近藤さんあんた何考えてんだ!」
「何だ、トシはまだ迷っているのか?雪村君はあんなに快く承諾してくれたではないか!」
「あれは俺達の勢いに押されて思わず口走っちまっただけだ」
「心にも無い事は口にせんだろう、特に雪村君のように素直な子は」
「それは…じゃなくてっ」
「雪村君はトシの事を嫌いではないという事だろう?戸惑いも見えたが嬉しそうな笑顔もあったじゃないか」
「……」
「だったら後はトシ次第じゃないのか?」

 先程自分でも思っていた事を近藤に指摘され、土方は黙ってしまう。

「トシ」
「………でもよ」
「はっはっは!」

 土方が口を開きこぼした言葉に近藤が笑い声を上げる。

「!?」
「トシ、でもと思っとる時点でお前も雪村君のことを好いているのだという事じゃないか」
「なっ?」
「お前ほどの男を迷わせるとは、流石は雪村君といったところだな」
「迷う…」
「駄目なら駄目で切り捨てるだろう、お前なら。それをしたくない、出来ないと思っているからこそ直ぐに行動に移せんのだろうが」

 ぽんと土方の肩に近藤が手を乗せる。

「トシ。俺はお前に幸せになって欲しい。新選組の副長ではなく、土方歳三お前にだ」
「近藤さん」
「確かに今回の縁談は急な事ではあるが、それでも縁がなければ発生せんものだろう?俺はな、お前と雪村君には強い縁があると信じたい」

 優しく語る近藤の言葉は心に沁みる。
 『ああ、だからこの人が局長なんだ』と納得してしまう。
 仲間に対する言葉には裏表がない男なのだ。

「千鶴を…泣かせちまったんだ」
「なんと!見れば食事も殆ど取っておらんじゃないか」
「あいつの涙を拭うのは俺でありたい」
「……そうか。ならばきちんと話をするべきだな」
「近藤さん」
「うん?」
「今回ばかりはあんたの暴走に感謝、だな」
「褒められとる気がせんなぁ」
「褒めてねぇし…」

 行って来ると立ち上がり部屋から出て行く土方の背中を近藤が見送った。
 と、廊下のほうから中を窺うように沖田と藤堂が顔を覗かせる。
 その後ろには斎藤の姿も見えた。

「近藤さん、ある意味これも嗾けたって言うんですか?」
「嗾けたとは言葉が酷いなぁ、総司。焚き付けたと言ってくれ」 
「千鶴…土方さんの嫁さんになんのかぁ…」
「上手くゆけばな。すまんな平助。またいい娘に出会えるさ」
「お、おおおお俺はっ、別に…」
「なんなら俺が探してやろうか?」
「ええええっ?い、いいよっ!俺は…自分で見つける」
「そうか」

 にこやかな笑顔で近藤はそう言い、土方の部屋を出る。
 その際に平助の頭を撫で、そして沖田の肩にもぽんと手を置き小さく何度か頷くと自分の部屋に戻っていった。

「………(やっぱりすごいや近藤さんは。……千鶴ちゃん、気に入ってたんだけどなぁ)」
「玩具として気に入っているお前と副長の想いは別物だぞ」
「一君、人の心勝手に読まないでくれるかな?」
「顔に出ている」
「じゃあ鏡でも見て来ようかな。…一君も悔しいくせに」
「副長は素晴らしい人だ。雪村もきっと幸せになれる。故に悔しいなどとは思わん」
「悔しいと思わんって言ってる時点で一君だって千鶴ちゃんが気に入ってたってことでしょ」
「それは…妹が居ればこの様な感じかという位だ」
「強がっちゃって」
「強がってなど」
「…なんだ、一君も千鶴の事好きだったわけ?」
「平助は分かり易いけど一君は表情にも態度にも出ないからねぇ」
「わっ分かり易いって何だよっ!つか、総司だって千鶴の事気に入ってたくせに」
「うん、気に入ってるよ。それは土方さんのお嫁さんになったからって変えなきゃいけない気持ちじゃないからね」

 にやりと笑って見せる沖田に、斎藤と藤堂は呆れた視線を送る。

「だって、もし千鶴ちゃんが別宅に移ったとしてもきっと通いで屯所に来る事になると思うよ?」
「何で?」
「千鶴ちゃんが今担ってくれてる雑務って結構多いからねぇ。副長の妻なら特別扱いしてもいいんじゃない?」
「千鶴の飯食いてぇもんなぁ」
「ね?まっそこは我らが鬼副長が何とかするでしょ。さてと、広間に戻って呑みなおそうかな」
「……待て総司」
「なーに、まだ何かあるの一君」
「俺も付き合う」
「そっ。じゃあ一君が準備してね?」
「言い出しっぺはお前だろう、と言いたいところだが、分かった」
「待ってよ。俺も呑む!今夜は巡察じゃねぇからとことん呑んでやるっ!」

 沖田と藤堂が広間へと戻り出すと、斎藤は土方の部屋にあった膳を持ち上げてその後に続いた。
 膳を持つ前に置手紙も忘れない。

「何、下げるの?」
「冷めてしまっているからな」

 見たところ千鶴の膳には殆ど箸を付けた跡がない。
 これならば誰かにやっても構わないだろうと判断したのだ。
 冷めてはいても喜んで食べる者が広間には居る筈だ。

「お腹すくんじゃない?」
「置手紙を置いてきた」
「さっきのやつ?何て書いたの」

 斎藤が残してきた一枚の紙には、

 【雪村に何か作ってもらって下さい】

 とだけ記されていた。

「…雪村の機嫌が直らなければ食事にはありつけません、とな」
「やるね、一君」
「褒められている気がせん」
「近藤さんの真似やめてくれる?」

 似てないからという沖田と、そんなつもりはないと言い返した斎藤が広間の中へと入り、板戸が静かに閉められた。

 

 

続く

 

 

 
 

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