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………遅ればせながら七夕(?)小説です。
ふと思い立ったのが7日の夜。
本当は4~5回スクロールしたら終わるくらいのSSを考えていたのに、書き始めたら長くなるなる…(汗)
気が付けば日付がも変わっちゃった…しかも2日。
千鶴だけで終わるはずだったのに土方さん出て来るし。
気が付いたら一君が珍しい事しちゃってるし…。
明治元年の7月7日を想定しております。
なので土方さんは局長です。
会津の福良で新選組と合流した頃のお話です。

では右下からどうぞ。

 

 

 明治元年7月7日


 先日、宇都宮で負った傷を完全に癒した土方は千鶴と共に会津は福良にある会津陣営にて新選組と無事に合流した。
 長らく離れていた仲間達と合流した事で千鶴も心から安堵し、京にいた頃の様な笑顔が少しずつではあるが出てくるようになった。

 年が変わって直ぐに京を離れた。
 まだ桜が咲いていた頃に、江戸も離れた。
 新しい地を目指すにつれて段々と仲間が減ってしまった。

 井上・山崎の死。
 永倉・原田の脱隊。
 新選組の旗頭、近藤局長の斬首。
 未だに受け入れ難い、沖田の峠での戦死。
 
「………ふぅ…」

 日の暮れた縁側に腰掛けていた千鶴の口から無意識に零れるのは溜め息ばかり。
 斎藤や島田達との合流。
 そこには羅刹隊の山南や藤堂も共にいた。
 やっと新選組に合流出来たのは嬉しい。
 親しくしている人達の顔ほど安堵出来るものはない。
 しかし、新選組に戻ってきたと言う事は近藤の跡を継いだ土方は局長としての仕事に追われ始める。
 確かに怪我は治った。
 けれど病み上がりであると言う事には代わりがいないのだ。
 本当はもう少し、あと少しだけでも休んでいて欲しかった。

「この地も何れ…戦火に飲み込まれてしまうのかな…」

 新選組と係わって、世間一般の女子では決して経験する事が無い様な事柄ばかり潜り抜けてきた。
 父親が医者だったから、血を見る事は怖くはなかった。
 それでも、足元に物の様に転がる死体を直視する事なんてできなかった。
 だが今は…。

 自分に出来る事を探しているうちに、いつの間にか医療知識が驚くほどに身に付いた。
 役に立ちたくて。
 彼の側にいたくて。

 足手まといになりたくなくて。

 自分なりに努力はしてきた。
 それでもまだまだ足りてはいない。
 斎藤に習った剣も役に立ててはいない。
 自分の身を護る事すら危ういというのに、出しゃばってへまをしてしまったらもうここには居られなくなってしまうかも知れない。
 それに。
 
「………父様が見付かったら…私は……どうなるのかな…」

 本来、千鶴が新選組に保護されていた理由は彼女の父親である鋼道を探し見付ける為。
 鋼道が見付からないので、千鶴はそのまま新選組と行動を共にしている。 
 父親に会いたいので殺されるわけにはいかない。
 だからあの男所帯の中で自分に出来る事を探した。
 自分の居場所を確保する為の行為だったのかもしれない。
 今はあの頃と少し違う。
 あの人の側にいたい。
 役に立ちたいから、自分に出来る事を精一杯やっている。

 父親が見付かったら…出て行かなくてはならないのだろう。
 嫌だと…残りたいのだと言ったらあの時の様に新選組に残る事を許可してくれるだろうか?

「私は…ここに居たい」

 千鶴は空を見上げて、静かに手を合わせる。

「笹の葉も短冊も何も無いけれど…」

 どうかどうか、この願いが空に届きます様に。

(皆さんが大きな怪我をする事なく重い病気を患う事なく…前に進めます様に)

 いつも千鶴を護ってくれるのは新選組の男達だった。
 誰が何と言おうとも、きっと彼等は歩む足を止めたりしない。
 己が心に従い、その志のままに生きていくのだろう。

(皆さんの歩む先に私も付いて行けます様に)

 大切だと家族の様に慕う彼等と共にこの先を見てみたい。
 女の身である自分がどこまで随従する事を許されるのか分からないけれど。

(………………土方さんのお側にいたい…)

 あの背中に付いていきたい。
 
(この命が果てる時がきても……土方さんの御傍に居られます様に)

 どんなに願っても無理かもしれないけれど…。

(この想いが土方さんに届き………)

 夜空に懸かる星々に恋の成就を願いかけて、そこでやめる。

「…なに考えてるんだろう…」

 自分なんて彼からすればきっとただの厄介者だ。
 
「何て…おこがましい………馬鹿だ、私…」
「何がおこがましいんだ?」
「ふぇ……?…ーーーっっ!!んぐっ!」

 突然かけられた声に驚き思わず声を上げそうになった。
 しかしそれは大きな掌によって阻止される。

「馬鹿っ。落ち着け、俺だ」
「ふっふんぐっ」
「千鶴」
「ふぅ……う…うぅっ」
「おい待て、何で泣く」

 突然背後に現れた土方に口を押さえられたまま千鶴の両目からはボロボロと涙が零れ始める。
 驚いたのと、自分が願いかけた事が恥ずかしかったのとで千鶴の心はぐちゃぐちゃだ。

「ったく、悪かった。頼むから落ち着いてくれ…泣き止め、千鶴」

 そう告げて、土方はそっと千鶴の口から自分の手を放した…が。

「ふっうう…ふぇぇええぇっっ」
「ち~づ~る~」
「うわぁぁぁんっ」
「だ~~~っっ!」

 ますます千鶴が泣き始めてしまう。
 流石の土方も頭を抱えそうになった。
 普段から滅多に泣く事の無い千鶴。
 我侭も言わない。
 愚痴る事も無い。
 ただ気が付けば、いつも自分の傍らに居る娘。
 
「頼むから、泣き止んでくれねぇか」

 理由も分からず泣き続ける千鶴をそのままにしておく事ができなくて、

「千鶴」

 優しく名を呼んでその腕を引き寄せると、そのまま己の腕の中に閉じ込めた。

「ひっ土方…さ…ん?」
「お前が、何か必死に願っていたからよ」
「……」
「邪魔しちゃ行けねぇ気がしてな」
「すみません…」
「いや、お前が謝んのはおかしいだろ」
「そうですか?」
「………そしたらおこがましいだの何だの言いやがるから、思わず声をかけちまった」
「あ…」
「今日は七夕か…。屯所でも七夕飾りを作った事があったな」
「はい、懐かしいです。平助君のあみだくじで役割を分担して」
「あのあみだはおかしかったろ…」
「私は…近藤さんと……ふっううっ」
「ああぁぁ待て待て。折角落ち着きかけたってぇのに」

 一度緩んだ涙腺はなかなか締まってはくれないらしい。
 数年前の楽しかった日を思い出すだけで涙が止まらない。

 あの頃はまだ皆いた。
 皆楽しく笑っていた。

 更に泣き出してしまった千鶴を土方が少し強めに抱きすくめる。
 新選組の裏事情に巻き込まれた娘。
 月日が過ぎていつの間にか自分達の内側に入って来ていた彼女に、監視の対象であったその娘に、護ってやるとここにいろとそう言った。
 それは意地から出た言葉だったのかもしれない。

 だが今は?

 こうして抱きしめて、護りたいと思う気持ちは果たして意地からだけか?
 出会った頃はまだ子供だった。
 だが年数を経ることによって段々と少女から女性へと成長しているのは確かだ。
 大人びて見えるふとした表情が、胸の奥をざわめかせる。
 こいつは可愛い妹分だと、そう思うと胸の奥がちくりと痛む。
 これは………自覚してはいけない気持ちだとどこかで警鐘が鳴り響く。

「ひじ…土方さ…」
「ん?」
「羅刹の力を…もう使わないで…」
「千鶴…それは」
「いなく…ならないで…」
「っ!」
「さ…みしい…です」

 消えかける声音は千鶴の本音だろう。

「……千鶴…」

 程なくして、腕の中からすぅすぅと規則正しい寝息が聞こえて来る。

「疲れてんだよな…お前も。すまねぇな………ありがとう」

 土方が重傷を負ったあの日から千鶴はずっと彼の看護を請け負っていた。
 誰かが代わると言っても、自分が側にいたいのだと頑なにその役目を渡さなかったという。

「ほっせぇなぁ…もうちっと強く抱いたら折れちまいそうだ…」

 腕の中にいる千鶴の頭部に頬を寄せれば、いつの間にか嗅ぎ慣れた千鶴の匂いがする。
 男とは明らかに違う、甘くて優しい香り。
 誰にも渡したくないと思うのは、ただの独占欲からだけではないのだろうが…。

「はぁ」

 千鶴を抱きしめたまま、土方は大きな溜め息を吐く。
 
「局長」

 そこへ足音も立てずに土方の腹心とも言える男が近付いてきた。

「斎藤か。どうした?」

 背後に立った男を振り返らずに土方が問えば、

「いえ。泣き声が…聞こえたもので」

 斎藤は静かに答えた。

「ああ…なんかよ、こいつがおこがましいだの何だの言ってっからさ声かけたら驚かせちまってなぁ。で…泣かせた」
「はぁ…」
「七夕だろ、今日」
「………七夕…」
「なんか祈ってたんだよ、こいつは」
「俺達がどんなに願ってもそれは届きそうにないですが、彼女が願えば、どのような願いも届きそうな気がします」
「そうだな。…よっと」

 千鶴を抱きしめていた腕を外し、一方はその背へ。
 もう一方は千鶴の膝裏に差し込むとそのまま軽々と彼女を抱き上げる。

「泣くだけ泣いたら寝ちまった。斎藤、悪いけどよこいつの部屋に布団を敷いちゃくれねぇか」
「御意」
「……軽いな」
「局長?」
「苦労ばっかかけてっからよ、こいつは太る暇もねぇよな」
「………女子にとっては太らぬ事は願ったりなのでは?」
「まぁ…そうかもしれねぇけどよ…」

 不思議そうに言う斎藤に土方が苦笑する。

「鋼道さんが見付かったら、こいつを帰さなきゃいけねぇって思ってる」
「帰さなければいけない?」
「帰す、じゃねぇんだよな。帰さなきゃいけねぇって…自分に言い聞かせてるみてぇだよな」
「ならば鋼道さんに一度帰した後、正式に局長が貰い受けられれば宜しいかと」
「…斎藤?」
「雪村ならば良き妻となるかと」
「まさか…お前からそんな言葉が出てくるたぁ、考えもしなかったぜ」
「雪村は貴方の側に居る時が一番笑っています」
「………時代が…もっと良けりゃあな」
「こんな時代だからこそ、雪村はここに居ます」
「そう…だな」
「たとえ戦場であろうとも彼女なら隣りにいても邪魔にはなりません。新選組局長の妻は適任かと」
「こいつは…」

 土方は腕に抱える千鶴を一度見下ろし、自嘲気味に笑いながら斎藤に顔を向ける。

「千鶴は大事な妹分だ。…そうだろ?」
「局長がそう仰るのなら俺も妹分を護ります。………この剣が届くうちは…」
「……………」
「先に部屋へ行き、寝間を準備をしてまいります」
「…頼む」

 斎藤は一度深く頭を下げると、来た時同様足音をさせずに千鶴の部屋へと向かっていった。
 その姿が闇に紛れてしまった後、土方は先程まで千鶴が見上げていた夜空を振り仰ぐ。
 軒下からなので一望は出来ない。
 それでも天の川はそこからでも見る事ができた。

「それぞれが自分の道を歩き出す時、か…」

 夜空に瞬く星々は死んだ人の魂だと聞いた事がある。
 ならば何れは自分もあそこに昇るのだろうか?
 先に逝った仲間達はそこに居るのだろうか?

「笹の葉も短冊も何もねぇけどよ…そこにいるなら1つだけ聞いてくれ」

 星に語り掛け思い浮かぶのは苦楽を共にした仲間達の笑顔。

「この腕の中の温もりが失われない様、守って欲しい。新選組の野郎共にとって大事なこの、妹分を見守っていてくれ」

 心からの祈りをこめてその紫苑の瞳を閉じ、そして開いた。
 瞬く星は聞き届けてくれるだろうか。
 そんな風に思った自分にらしくないなと苦笑してしまう。

「…う…ん…」
「っと、起こしちまう前に運ぶか」

 ぐっすりと眠る千鶴を抱え直し、 

「しっかし斎藤に嫁取りを進められるたぁなぁ…」

 ぼそりとそう呟いた後、土方は千鶴の部屋へと歩き出した。
 

 

 

終わり

 

 


 

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