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言い訳をすれば、オフの仕事が忙しくて書く暇が無かったと言うか…その、ですね。
パソコンの前に座って文字を見てると眠気が…強くて(涙)
仕事がミクロの世界をじっと見詰める様なものなので、目が疲れて疲れて。
シパシパしちゃいます。
そんな感じの中で書いた物なので誤字脱字がいつもより多いかも…です。
気付いたら直します、はい。
久しぶりの千鶴ちゃんは右下からどうぞ~。
「あ、おきたしゃん」
見えてきた新選組の屯所の門前に、先程会津藩邸の前で別れた沖田の姿を見つけた千鶴が彼の名を呼ぶ。
既に気が付いていた様子の沖田は千鶴に向かい小走りで駆け寄ってくると、
「おかえりっ待ってたよ~」
駆け寄ってきた勢いのまま千鶴を抱きしめた。
土方の腕に抱っこされたままの千鶴をだ。
「んむっ」
「左之さんも平助君の代わりご苦労様です。あ、ついでに土方さんもお帰りなさい」
「「総司…」」
本当についでなんだなという挨拶に大人二人は揃って溜め息を吐いた。
一方で、ムギュッと音がしそうなくらい強く抱きしめられ千鶴はもがく。
流石に苦しい。
しかしそんな様子の千鶴には気が付かないのか、それとも気が付いていてあえて無視しているのかは分からないが解放される様子は無く、頭の上で会話をする声が聞こえてきた。
「土方さん、千鶴ちゃん下さい」
「…お前、仕事は?」
そう尋ねながらも千鶴を支えていた腕の力を抜き、千鶴を沖田に渡してやる。
自分の腕に来た千鶴を沖田が抱きかかえ直す事で千鶴の呼吸が一気に楽になった。
「会津藩邸近辺での捕り物以外変わった事はありませんでした、以上副長への報告終わり。ちなみに僕はお昼から休みです。近藤さんの許可は貰いました」
「何が報告終わりだ。つか、勝手に休みにしてんじゃねぇ!てめぇは午後から剣術指南があるだろうが」
「だから言ったでしょ?近藤さんにはお休みの許可貰ってるって」
近藤さん、という所に力を込めながら言う沖田に土方は頭痛がしてくる。
「許可をもらったってぇ事は……代役立てたってぇのか?」
「ええ、新八さんがそれはもう快く引き受けてくれましたから」
((酒で釣ったな……))
笑顔で言う沖田に土方と原田は返す言葉も無いが、引き受ける永倉も永倉だ。
そんな二人の心情はきれいさっぱり気持ちが良いほどに無視して、沖田は千鶴を見下ろす。
「千鶴ちゃん、近藤さんのお使い上手に出来た?」
幼子にかけるような優しい声音で語りかけた。
「おまんじゅうかっちぇきまちたよ。とおっちぇもおいちかったんでしゅ」
「食べたの?」
「あい!おかみしゃんがくだしゃいまちた」
「ふ~ん…それでか」
「おきたしゃ…―――おっおきたしゃん!?」
千鶴の顔のすぐ側に沖田の端正な顔が近付いている。
何事かと驚いた千鶴だったが、
「さっきから甘い匂いがするなって思ってたんだ…でもこれ、蜜柑?」
そう言って首を傾げる沖田にこくんと頷いて返した。
「おみかんのおまんじゅうでしゅよ。しょえにしゃくやあんちょかよもぎちょか!いっぱいあゆんでしゅ」
先程三人で分けた蜜柑饅頭の匂いを嗅がれたのかと安心しつつも、急に顔を近付けるのはやめて欲しいと本気で思う。
「へぇ。それは楽しみだけど、まずはお昼だね。何だか一君が頑張ってたよ」
「もうちわけないでしゅ…」
「どうして?一君は自分がそうしたくてやっているんだし、千鶴ちゃんは気にする必要は無いよ」
「でも…よけぇなおちぇまをとやちてちまって…」
「それを余計かどうかを決めるのは君じゃなくて一君」
俯きかけた千鶴のおでこを左の中指でピンッと弾く。
「―――っ!…いちゃいでしゅ」
「一君は凄く真面目だからね。もし君が一君の頑張りを申し訳ないとか、手間とか言ってるんだって知ったら、地の底まで落ち込むだろうねぇ」
「しょんなこちょっ!………あ…ありしょうでしゅ、ね」
「でしょ?…あぁ、でもそんな一君見たことないからなぁ。言ってみるのもありかもね!」
沖田の表情が悪戯っ子のそれになる。
慌てた千鶴はぶんぶんと首を横に振った。
「や、やでしゅよ!しょんなえがおでいわないでくだしゃい!なちでしゅ!」
「だったら喜んであげなよ」
ね、っと今度は優しい笑顔で千鶴に語りかけてくる沖田には勝てるわけが無い。
「…あいっ」
「ん。良い返事だね、お利口さん。ところで千鶴ちゃん」
「あい?」
「可愛い音がしてないんだけど」
「おちょ?」
「うん、ちりんちりんって音」
「ちりんちり………しゅっ、しゅじゅっ!!」
「簪と紐はあるんだけどね。その先につけてた鈴が無いよ?」
「ふぇぇぇっっ!?」
そういえばと思い返してみる。
(いっ何時から?あれ?屯所を出る時はあったよね??)
頭に手を当てて千鶴は思い切り動揺する。
あの鈴は簪と共に沖田が贈ってものだ。
それをよりにもよってその本人に指摘されるまで落とした事に気が付かなかったなんて。
「ごっごめんなしゃいっ」
涙目になり沖田に謝る。
「わたちっわたちしゃがちて!」
「あ~はいはい。それ無理、絶対無理だから」
今にも泣きそうな千鶴の背中を沖田がぽんぽんと宥める様に叩く。
「屯所を出る時は付いてたぜ?」
土方がそう言えば、
「会津藩邸の前で会った時には、もう音はしてなかった気がするな」
と原田も思い出しながら言う。
「屯所を出た後、平助とお前飛び跳ねながら歩いてたじゃねぇか」
「しょういえば…」
屯所を出た後、藤堂が手をしっかり握っていてくれたので兎の様に跳ねながら進んでいた。
上手い上手いと藤堂が褒め、それが嬉しかった千鶴は彼の手と力を借りてぴょんぴょんと跳ねていた。
「しゅみましぇん…わたち…」
「迷子にはならなかったんでしょ?だったら良いよ、僕は気にしてない」
「しょえでも…」
「贈った僕が気にしていないんだから千鶴ちゃんも気にしないの」
「う~」
「何だ、もしかして気に入ってくれてたの?」
「ちりんちりんっちぇ…かやいかっちゃにょに」
「仕方ないなぁ。良いよ、余分に買って来てたからまた後で付けてあげる」
「ほんちょでしゅか?」
「ん」
「あいがちょおごじゃいましゅ」
「うん」
沖田が優しく頷くので、千鶴にも笑顔が戻る。
「話が付いたんなら中に入ろうぜ」
立ち話もなんだろ?と原田が笑えば、そうだな、と土方が相槌を打った。
「千鶴、近藤さんのところに行くだろ?」
「あい。おれいをいいにいきましゅ」
「んじゃ残りの金子を返しといてくれ。俺はこのまま部屋に戻る」
「わかいまちた」
「頼むぞ。…千鶴はお前に任せるからな総司」
土方はそう言って千鶴の頭を一撫ですると先に屯所の中へと入っていく。
「それじゃ俺も十番組の連中に顔出しとくかな」
「はりゃだしゃん、ちゅいてきちぇくやしゃっちぇあいがちょおごじゃいまちた」
「俺はなんもしてねぇよ。じゃあ鞠は千鶴に、饅頭は総司に頼むか」
「引き受けますよ」
沖田は千鶴を片腕に移動させ、開いた方の手で原田から饅頭を受け取る。
「また後でな」
そう告げると原田も屯所の中に入って行った。
「さて、何だか荷物も増えちゃったし近藤さんのところに行こうか」
「あい」
二人で門を潜り玄関に入る。
沖田は手にしていた饅頭の包みを一旦板張りの廊下の上に置く。
そうして開いた手で千鶴の草履を脱がしてやるとそのまま廊下に下ろしてやった。
「しゅみましぇん…えちょ、あいがちょおごじゃいましゅ」
「どういたしまして」
小さな身体でぺこりと頭を下げる千鶴に苦笑しながら、手を彼女の目の前に差し出す。
「行こ」
「あい」
差し出された沖田の手を千鶴は握り返し、二人仲良く歩き始める。
沖田が一歩歩けば千鶴はパタパタと二歩歩く。
それに気が付いた沖田は歩く速度をもっと落とそうとしたのだが、
「だいじょおぶでしゅよ?」
沖田の視線に気が付いたのだろう千鶴が、笑顔で見上げながらそう言った。
「おしょとにいゆあいだはほちょんどだっこちてもやっちぇまちたかや、まいであしょんだちょきちかうんどおちてないんでしゅもの」
だから歩くんだと千鶴は言った。
そんな可愛い決意の眼差しに沖田は堪らなくなる。
「そっか、そうなんだ」
「…おきたしゃん?」
「でもごめん、ちょっと止まって」
「あ…い…」
千鶴が頷くのを見ると沖田は手を放し饅頭を床に置く。
何だろうとその様子を見ていた千鶴を、沖田は迷わずギュムッと抱きしめた。
「おぉぉおきたしゃん??」
(あぁ駄目だな、本当に駄目だ。って言うかここまで堪えた僕を褒めてあげたいっ!)
ここまでも何も、千鶴たちが帰って来てほんの僅かな時間しか経過していないと思うのだが、沖田にとってはかなり長い時間だったようだ。
「さっき言ったよね、いっぱい抱きしめて褒めてあげるって」
「ほ…ほどほどでちょもうちあげまちたけどーーっ」
「これでも程々だよ」
もう辛抱ならんとばかりに強く抱きしめる沖田にその腕の中でもがく千鶴。
解放されるまで、再会して過ぎた時間よりも倍はかかったとか。
続く…