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10万HITお礼企画で募ったリクエスト小説です。

晃白様より頂きましたリクエスト。
 『茜色に染まる:土千』
 窓辺で夕陽を眺めてる土方さんに、見とれちゃう千鶴
 (SSLでも、屯所時代でもOK・甘々でほんわかふんわり)

でございます。
遅くなりまして本当に申し訳ないですが、頑張って書きましたのでお届けします。
そろそろ季節的に桜ネタは無理があるかなぁと思いつつも、薄桜鬼だからいっか!という感じで(笑)
お気に召して頂けると嬉しいです。

小説は右下からどうぞ。






『茜色に染まる』

 


 声が 聞こえた―――
 何時だったか…分からないけど…… 
 ずっとずうっと、遠い昔?

 ううん、違う

 きっともっと…最近?
 …ううん……それも違う

 何時かな?

 何時だったかな?
 優しくて、温かくて、懐かしくて
 …悲しくて、寂しくて

 それでもきっと…

 愛おしい、声―――…

 

 

「お花見…?」

 突然部屋を訪れた平助君がそう言って私の前に座った。
 何だかとても楽しそうな笑顔。
 平助君の笑顔はいつも私に元気をくれる。

「そう!桜の見頃はちょっと過ぎちゃったけどさ、だからって散っちゃったわけでもねぇし!」

 少し興奮気味の言葉に私は笑った。

「平助君、お花見好きなのね」
「もっちろん!桜の下で呑む酒は格別だしさっ!…って、もちろん桜も好きだぜ?」
「ふふっ」
「笑うなよ~。千鶴も桜、好きだろ?」

 平助君の言葉に頷くと、

「んじゃ夕七ツ頃迎えに来るから部屋にいろよ」

 それだけ言うとなにやら準備があるらしく、バタバタと走って行ってしまう。

「夕七ツかぁ…夜桜でお花見なのかな」

 ここでお世話になるようになって4ヶ月程経った。
 少しずつお仕事をもらえる様にはなってきたけど、それでもこの部屋から自由に出る事はほとんど許されていない。
 だからもらえるお仕事は繕い物なんかが中心になる。

(何もしないでジッとしているよりはずっとましだけど…)

 それでもそろそろ外出を許可してもらえたらと思うのは、我侭なのだろうか?
 逃げる気なんてないし、あの日見た事を口外するつもりもない。

(でも…それでも…私は厄介な存在なんだろうな…)

 だからこそ……信頼されていない…。
 屯所の中には沢山の人がいる。
 声をかけてくれる幹部隊士さん達も優しいけど、でも…。

(私は…一人ぼっちだ…)

 寂しいという気持ちはある。
 悲しいという気持ちだってある。
 涙が出そうになる事だって…何度もあった。
 でも、泣くわけにはいかない。
 泣いたらきっと疎まれる。
 呆れられてやはり面倒だと殺されてしまうかもしれない…。

(父様…)

 溜め息を吐く事しかできない自分が何よりも情けない。

「お花見かぁ…父様探しは出来ないけど…そうか、屯所の外に出られるんだ」

 取り敢えず今は、平助君の厚意を無駄にして嫌われないようにしなきゃな。
 そんな事を考えながら、手元にあった繕い物の続きを始めた。

 

 ―――そして、夕七ツ…


 泣く子も黙るという新選組の幹部さん達が私の前を楽しそうに歩いている。
 私はそんな彼らの背中を時折眺めながら、副長である土方さんのすぐ後ろを歩いていた。

「おい」
「あ…、はい」
「なぁに下ばかり向いてやがる」
「す、すみません」
「…ったく別に謝る事じゃねぇだろうが」
「すみませ…あ、えっと」
「あのな…お前、俺を馬鹿にしてんのか?」
「そっそんなことっっ!」

 土方さんの言葉に慌てて私が顔を上げると、そこにあったのは想像していた表情ではなくて…。

「気付いてねぇだろ?上、つか周り見てみろ」

 なんだか困った様な、ちょっと呆れた様な…微笑がそこにはあった。

「周り?……あ、うわあぁっ!」

 ずっと俯き加減で歩いていたから本当に気が付かなかった。
 私の歩いている道は見事なまでの桜並木で。

「すごい、すごい!綺麗…」

 こんなに綺麗な景色が全く目に映っていなかった私って…。
 ああ、勿体無い事しちゃったなぁ。
 次は何時見れるかも分からないっていうのに。

「ふわぁ…すごいなぁ…」

 思わず立ち止まって桜を見上げる。
 すごく綺麗なその景色に見惚れていると。

「斎藤、ちぃっと寄り道をして来る。先に行っててくれ」

 何やら少し前を歩いていた斎藤さんに言付けた土方さんが私を振り返った。

「付いて来い」
「え?」
「良いから、来い」
「はい」

 皆さんが進む方向から少し外れた道を歩き始めた土方さんを慌てて追いかける。
 何だろう。
 何かしたかな?
 そんな不安が過ぎったけど、今は付いて行くしかない。
 少し歩いていくと、少し開けた場所に出た。
 田畑が広がるその場所は既に夕日が紅く染め初めている。
 そしてそんな風景の中で一際存在感を示していたのが…。

「枝垂れ…桜」
「すげぇだろ?樹齢は何十年…否、何百か?」
「大きな木…」

 まだ少し蕾を残しているその大きな枝垂桜は八部咲きと言った所だろうか。
 風が吹いてその見事に撓った枝々を揺らすと、はらりふわりと花びらが紅く染まりだした空に舞い上がった。
 その目に映る光景があまりにも綺麗過ぎて。

「…………っ」

 気付いた時には頬が濡れていた。
 夕日色に染まった花弁は、まるで紅い雪の様。
 綺麗で、本当に綺麗で…涙が止まらない。

「雪村」
「すみませっ、とっ止まらなくて…」

 手で拭っても拭っても涙が止まらない。
 どうしていいか分からないくらい溢れて来る。

「綺麗な物を見て綺麗と感じるのは別におかしな事じゃねぇ」

 私の前に土方さんの手が差し出される。
 その手には、綺麗に折り畳まれた手拭が握られていた。

「使え」
「ありがと…ございます」

 土方さんから借りた手拭を顔に当ててる。
 それでもやっぱり涙は止まる事を知らないみたいで。

「安心…した」
「え?」
「まだお前は綺麗なモンを見て涙が流せるんだな」
「?」
「それは心が死んでねぇ証拠だ」
「………」
「お前への待遇は、出来るだけ改善してやりてぇとこなんだけどよ」
「土方さん…」
「お前が俺達の言い付けをきちんと守って大人しくしてくれてんのは良く分かってる。だから、俺達がお前を殺したりする事はねぇ」
「あ…」
「鋼道さんの事も不安だろうが、…もうちぃっとだけ辛抱しててくれねぇか?」
「―――っ!」
「悪ぃな」

 私は言葉にならなくて、首をぶんぶんと横に振った。
 ちゃんと私の事を気にかけてくれていた。
 一人ぼっちだって思っていたあの場所で、私の事を考えてくれている人がいた。

「ふぅっ…う…ふぇぇっ」
「お前は強ぇから泣かねぇんじゃねぇよな…」
「ふうぅ…うわぁぁんっ」
「泣ける場所も奪っちまってたんだな…すまねぇ」

 堰を切った様に溢れる涙と嗚咽。
 立っている事も覚束無くて、その場に座り込んでしまった。
 土方さんから借りた手拭に顔を押し付けて赤子の様に泣きじゃくる。

「鋼道さんは見つけてやる。お前は新選組が預かっている限り俺達が護ってやる」

 紅く染められたその場所に闇が訪れる頃まで私は泣いて。
 そんな私の頭を、土方さんがずっと撫でてくれていた―――…。

 

 

 

 


「―――?」
「………」
「――る」
「………」
「おいっ、千鶴!」
「え?」

 両肩を強く揺す振られてハッと我に返る。

「………せ…んせ?」
「ったく、どうしたんだよ。急に黙りこくってぼうっとしやがって」
「…えっと」
「黙ったかと思えばボロボロ泣き出しやがるし…どうした?」

 私を見下ろすその人は、とても心配そうな瞳で見詰めて来る。
 ああ、そうか。
 こういうのデジャビュっていうのかな。
 ううん違う。
 だってあれは、私が…私が幕末といわれる動乱の時代で体験した事だから。 

 待ち合わせに使っている先生の教務室。
 委員会で遅くなった私が見たものは窓辺に寄りかかって夕日に染まる校庭を見詰めていた土方先生だった。
 その姿が、光景がとても綺麗だと感じた。
 夕日と、先生と……そして桜。

 その姿が…光景が…とても懐かしいと感じた。

「先生が…夕日に染まって綺麗だったので見惚れちゃいました」
「なに馬鹿な事言ってやがる」
「嘘じゃないです。…先生」
「うん?」
「私…泣いてもいいんですよね?」
「なんだよ突然」
「私にとって、ここが一番安心するところなんです」

 そう。
 ここが、土方先生の腕の中が。

「安心しちゃうと涙が出ちゃって、どうしていいか分からないんです」

 黒いスーツを纏うその身体に、腕を回して抱きついた。

「千鶴」
「せんせ…私…」
「………あの枝垂桜…まだあると思うか?」
「え?…んっ」

 先生の言葉に驚いた私が顔を上げると、すぐ傍にあった形の良い唇が私のそれと重ねられた。

「……フラッシュバックでもしてたのか?」
「初めて皆さんとお花見した日を…思い出しました…。初めて……土方さんの前で大泣きした時の事を」
「あんときゃ、本気でどうしていいもんか、正直戸惑ってたんだぜ?」
「そうなんですか?」

 おでこをくっ付けたまま、甘く優しく先生が語る。

「あの頃は、新選組第一でこっちの勝手な理由でお前を押さえつけちまってたからなぁ。屯所に来て何ヶ月か経ってんのに泣きもしねぇ。辛いくせに、寂しくてたまらねぇくせに弱音も恨み言ももらさねぇ。…心が壊れちまったんじゃねぇかって…あれでも心配してた」
「あれでも?」
「…仕方ねぇだろうがよ。ま、今世でもこうしてお前と出逢えたんだ」

 もう一度唇を重ねる。

「…一杯甘やかして可愛がって、俺の全身全霊で愛してやるからよ、覚悟してろ」
「………はいっ」
「いい笑顔に、いい返事だ」

 今度は強く、深く口付けられる。
 何度も何度も角度を変えて。
 唇が離れる度に甘い睦言を囁いてくれる。

「千鶴…愛してる……今度は、今度こそはずっとずっと一緒だ」
「土方せんせっ」
「二人で長生きしような」
「はいっはいっっ!」

 あの頃は限られた…何時終わるか分からない中で二人の時間を慈しんだ。

 今度は。

 再度巡り逢ったこの世界では

「土方先生」
「なんだ?」

 未来に色々な希望を夢見て


「愛してます。ずーーーっと一緒です…歳三さん」


 二人で歩いていきたい―――

 

 

終わり

 



 

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