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江戸時代の女の子の帯って…?
と考え始めて、この話を書くスピードが停止してました(苦笑)
単純に『兵児帯』か?と思ったんですが、調べてみるとあれは男児用で、しかも明治時代に広まったのだそうだ。
しかも元々は薩摩藩の兵隊達が使っていたそうで。
って、………駄目じゃん…(涙)
じゃあどうしよう。
子供達は小さい頃から普通に帯だったのか?
まさか、千鶴ちゃんに金太郎の格好は不味いだろう。
(沖田君は喜びそう……お腹抱えて大爆笑…)

とか何とか考えて、結局『帯』と表記しました。
調べ出すと色々難しいので、もうその辺は思い切ってスルーして下さい(切実)


でも内容はギャグに見えてただのほのぼのかも…。
山崎さん編となっております!

右下からどうぞ。
 






「ん…んん…」

 布団の中でもぞもぞと動き、目を擦りながら欠伸をひとつする。
 なんだろう。
 布団がとても大きい。
 まるで、布団の中で溺れている感じだ。
 何でだっけ?と考え始めて、ああそうだった、と溜め息を1つ。
 起き上がろうと敷布団に突っ張った手はとても小さい。
 その小さな手が今自分の身体を起こしている。
 ばさり、と布団が頭の上から落ちた。

「ゆめやなかっちゃのね…」

 ふわぁぁと欠伸ももう1つ。

「きょお、もちょにもどえゆかなぁ」

 昨日の夕餉前。
 山南の部屋で飲まされた青い不思議飴。
 それの影響で、千鶴は小さくなってしまった。
 若返ったといった方がよいのだろうか?
 外見はどうみても2~3歳の幼女。
 しかし中身は15歳の少女のまま。
 不思議飴の効力は約1日で消えるらしいが、それも【らしい】というだけで確かな事ではない。

「きがえちて、おちごとちないと」

 そう呟いて部屋の隅を見ると、そこには子供用の着物一式が綺麗に畳まれて置いてあった。
 本当は今日の朝にでも藤堂が買いに行くと言っていたのだが、夕餉の後まだ呉服屋が開いているかもしれないと、彼は飛び出して行ったのだ。
 そして、暫くしてこの着物を持って帰って来た。
 色は桃色。
 そして全体的に可愛らしい桜の柄が染めてあった。
 一目見て気に入ったが、しかしその肌触りは極上の物。
 
(一体いくらしたんだろう…。大切に着ないと…元に戻ったら平助君に返した方が良いよね)

 小さな手を動かして寝巻き(これも昨日藤堂が一緒に買ってきた物なのだが)を脱ぐ。
 そして真新しいその着物に腕を通した。
 桃色の着物に合わせた帯は蒲公英の様な優しい黄色。
 可愛いなぁ、と帯をまわし結びかけて…手が止まった。

「むちゅべない…」

 背中に手を回したが、どうも無理っぽい。
 前で結ぼうとしたがそれも駄目。
 結んでも結んでもはらりと崩れてしまう。

(誰か結べる人いるかな…)

 取り敢えず、帯は下に置き布団を畳み始めた。

(結構な重労働なんだなぁ)

 小さい身体で必死に布団を畳み端に寄せる。
 乱れた着物をきちんと正し、帯と手に廊下に出た。
 ここに来て数ヶ月経つ。
 初めは監視がついていたが、今はそれもない。
 屯所の中を結構自由に出来るようになった。
 自由になるにつれて、色々仕事も任せてもらえるようになった。
 屯所の外へは出られないが、それでも監禁されていた頃に比べればずっと嬉しい。

「といあえじゅ、おしぇんたくよね」

 途中で誰かにあったら、帯を結んでもらおう。
 まだ薄暗い屯所の中にトテトテと小さな足音が響く。
 目的の場所を目指して、最後の角を曲がった時。

「あっ」
「………ゆ、雪村君…か?」

 昨日の夕刻に洗濯する物をまとめておいたその部屋の前で、本日最初の隊士に出会った。
 といっても各組に属する人ではなく、土方の命で隠密行動をする監察方の隊士だ。

「やまじゃきしゃん」
「副長に聞いてはいたが…」
「ひじかたしゃんに?」
「俺と、島田君にだけだが」
「しょうでしゅか。あ、おあよぉごじゃいましゅ」
「あ、ああ。おはよう」

 しかし、と山崎は続け、千鶴の前に膝を着いた。

「こんな事が本当に起こるのだな」
「でしゅね」
「災難だったな、雪村君」
「もちょにもどえゆかがちんぱいなんでしゅけど…」
「総長が1日と仰ったのであれば、それを待つしかないだろうな。それで?君はここで何をしている」
「おしぇんたくをちなくてはいけないので」
「…はぁ。全く、君は」

 驚いた顔の山崎が溜め息を吐き、呆れた様に言った。

「そんな姿になっても雑務をこなすというのか?」
「いちゅもちてゆことでしゅから」
「洗濯などは副長から俺が言い付かっている。何も心配しなくて良い」

 土方は千鶴がそうする事をきっと分かっていたのだろう。
 だからこそ、山崎が今ここにいるのだ。

「…しぇっかくおきちぇきたのでおてちゅだいしゃしぇてくだしゃい」
「くくっ…本当に君は不思議な子だ。ところで、雪村君」
「あい」
「何故帯を手に持っている?」
「しょうだ。あにょ、やまじゃきしゃん。…おびむしゅべましゅか?」

 上手く結べなくて、そう言って笑う千鶴の手から黄色い帯を受け取ると、

「簡単な結び方でもいいか?」

 山崎も笑った。

「あい!」

 山崎に帯を結んでもらった後、袖も襷がけにしてもらう。
 そして二人して洗濯物を運び井戸の側まで来た。
 洗濯物を入れた大き目の洗い桶に山崎が水を入れ、千鶴が擦りだす…が。

「おしぇんたくってじゅうろぉどぉでしゅね」
「いつも君がしてくれている事なんだが」
「ちいしゃいと、ちかやがたりにゃくて、きえいになりゃないでしゅ」

 そう言いながらもゴシゴシとやってみるが、どうも上手くいかない。
 その姿を見ながら山崎は微笑む。
 
(本当に不思議な娘だな。こんな事今日ばかりは他の者に任せれば良いだろうに)

 実際その為に自分がいるのだが、千鶴の頑張る姿を邪魔したくもない。
 しかし、この調子では洗濯はまず終わらないだろうな、と思う。

「雪村君」
「あい?」
「立って、着物の裾を少しあげて帯に挟んで。できるか?」

 山崎の言う事はつまり足を出せ、ということか。
 千鶴は少し躊躇ったが、どうせ今の姿は2~3歳児。
 見られて恥ずかしいという事もない。
 千鶴は頷き、言われた通りにする。

「よし、じゃあ」

 草履を脱いで、と彼は言いながら千鶴を抱き上げた。

「ふぇ?」
「そのまま草履を落として」

 抱き上げられた状態なので、千鶴は足をばたつかせて草履を地面に落とした。
 次いで、足袋も引っ張る様にして脱ぐと山崎がそれを受け取り草履の上においてくれた。
 裸足になった千鶴を洗い桶の中に山崎はゆっくりと下ろす。

「冷たくはないか?」
「だいじょおぶでしゅ」
「今の君には手で洗うより、ずっと楽だろう?」
「こえ、むかちとおしゃまとやりまちた!」
「ならば分かるな?」
「あい!」

 桶の中で、千鶴は足踏みを始めた。
 
「こえ、たのちいでしゅ!」
「気を付けないと転ぶぞ」
「あーい」

 手では無理でもこうやれば千鶴にでも洗濯ができる。
 山崎は千鶴から出来るだけ仕事を奪わずに済む方法を考えてくれたのだ。
 それは彼女が、ただ世話になるだけの状態に納得できないと知っているからだろう。
 何かやらないではいられないのだ。
 正直、難儀な性格だとも思うが、それが彼女の良いところでもある。

「雪村君、手を」

 楽しそうに足踏みをする千鶴に、両手を差し出す。
 千鶴が見上げながら両手を差し出すと、その小さな手を握り返した。

「これなら安定するだろう?」
「やまじゃきしゃんもはいりましゅか?」
「はは、それは流石に止めておく」

 笑顔で返す山崎に、千鶴も満面の笑顔を返した。

 

 


 洗い終わった洗濯物は、桶の中から千鶴が取り出しそれを山崎に渡す。
 それを彼が綺麗に干して行った。
 
(もし…自分に子供が出来たら…こんな感じなのだろうか?)

 笑顔で洗濯物を差し出す千鶴を見下ろし、山崎はふと思う。
 今はまだ新選組で土方の役に立ちたい。
 だがいつか、愛おしいと思える人と所帯を持てるならば、こんな娘が欲しい。
 そう思った時、幼い千鶴の顔に本来の姿の千鶴が重なって見えた。

「やまじゃきしゃん?」

 洗濯物を差し出したまま千鶴が首を傾げる。

(なっ何を考えているんだ俺は!)

 慌ててぶんぶんと頭を振る。

「だ…だいじょおぶでしゅか?」
「な、何でもないんだ。気にしないでくれ」
「しょうでしゅか?」

 千鶴はその大きな瞳をぱちぱちと瞬かせる。
 山崎は赤くなったか顔を千鶴に見られないよう、ちょっと上向き加減にしたまま洗濯物を干し始めた。


 愛おしい人。  
 そう思った時に何故彼女の姿が重なったのか。


 あまり深く考えない方が良いと判断し、自分に与えられた使命を全うすべく、千鶴から次の洗濯物を受け取った。

 

 


 

続く… 

 

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