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私は今年もカレンダー通りのお休みです。
…良いんだけどね。
小学生の姪っ子なんて、この間日曜参観があったのでその振り替えで5月2日が休みに。
土曜は最初から休みなので7連休…。
良いんだけど、もちろん良いんだけど!!
………やっぱり羨ましいわけで…はい。
今年のGWは取り敢えず用事が殆どないので、できるだけリクを消化しようかと。
3月に頂いたリクをまだ終わらせていない状況…スミマセン(涙)
あ、でも夫婦~や不思議な~の方も書きたいです。
そんな訳で(どんな訳?)やっと土方さんが…な物語は右下からどうぞ。
「…千鶴と、総司か?」
千鶴が沖田に捉まっていた頃、その二人の声は土方の部屋にも届いていた。
何やってんだと声のする縁側の障子戸に手をかけた時、
「副長、山崎と島田参りました」
そことは反対側の襖戸の方から声がかけられた。
「ん、ああ。入れ」
「失礼します」
土方が入室を許可すると襖戸が開けられ監察方の山崎と島田が中に入って来る。
それを見た土方は障子戸にかけていた手を外し、文机の前に戻った。
(……千鶴は総司が連れっ行ったか…まあいい)
「副長?」
「いや、何でもねぇよ。それより悪かったなこんな朝から呼び出してよ」
「お急ぎの件でも?」
「そうじゃねぇんだ。今日、急遽休みを貰ってな。夕刻頃までもしかしたら戻らねぇかもしれねぇ」
「お出かけですか」
「だからよ、何かあった時は知らせに来て欲しくてな。朝方は多分菱屋にいる」
「隊服の注文でしたら俺が行きますが」
「着物を仕立てんだよ。白無垢を着せてやれねぇからさせめて良い着物を仕立ててやろうと思ってな」
「「白無垢?」」
山崎、島田の両名が思わず声に出して驚く。
「副長っ嫁でも娶られるのですか?」
「嫁以外何を娶れっつーんだ」
土方の言葉に二人は顔を見合わせる。
「二人にはまだ言ってなかったか。昨日色々、本当に色々あってよ」
昨日あった事を変に誤解される前に土方は二人に話した。
島津屋との事。
近藤の暴走の事。
千鶴と想いを交わした事。
「雪村君と副長が婚姻を…あ、おめでとうございます」
「おめでとうございます、副長」
「おう。ありがとよ。でよ、話した通り朝餉を済ませた後には屯所を出るつもりだ。菱屋の後は泉屋に行って近藤さんが用意してくれた別宅を見てくる」
「別宅の所在地は?」
「俺も良く知らねぇんだ。用事があるときゃ泉屋に聞いてくれ」
「承知致しました」
「…副長」
「何だ島田」
「もう御存知かもしれませんし、私が言う事でもないとは思うのですが」
「言ってみろ」
土方に先を促され島田は小さく頷くと言葉を続けた。
「自分が知る限り、雪村君の視線の先にはいつも副長が居られました。ここに来た当初は怯えの色がありましたが、それでも何とか自分の居場所を作ろうと必死に仕事を探していた姿はとても健気でした。そんな仕事の中で一番彼女が得意としている事、御存知でしょうか?」
「………俺の茶を…淹れる事、か?」
「ええ、正しく。彼女にはよく尋ねられました。副長はいつもどんな時にお茶を欲しがるかとか、温度は熱めの方がお好きな様だが間違っていないかとか、お茶請けはお菓子よりもお漬物がお好みの様だがどこのどんなお漬物がお好きか知っているか、とか」
「……千鶴がか」
「ええ。熱心に聞いてくるので私もつい一緒になってあれやこれや準備をさせて頂きました。もちろん他の幹部の方々の好みを尋ねられた事もありますがその殆どが副長の事でした」
「確かにあいつの淹れる茶はいつも美味ぇけどよ…そうか…そんな事が」
「雪村君の時間は副長を中心に動いている事が多いように感じていましたので、今回お二人がお心を寄せ合い婚姻を結ぶ運びとなった事はそんな彼女を見てきた私としてもとても喜ばしく思います」
笑顔で頷く島田に土方は照れたように頬をかいた。
「婚姻を結ぶと決めた以上は無責任な真似はしねぇよ。あいつが幸せでいられるよう、俺も努力する」
「お二人ならばきっと大丈夫ですよ」
「ですが副長」
「鋼道さんの事だろ?山崎、おめぇが言いてぇのは」
「はい」
「まぁ、鋼道さんの事と今回の婚姻の事は別もんだ。鋼道さんの件がどうこうだから千鶴を娶るって決めたわけじゃねぇ。俺はあいつを側に置きてぇあいつの側に在りてぇって思ったから婚姻を結ぶ事を決めたんだ。だけどよ、あいつを娶る以上鋼道さんは俺の義理の父になるわけだしな、今まで以上に捜索の方にも力を入れてくれ」
「御意」
「それと前に頼んでた長州の動きの件だが―――」
惚気たと自覚がないのかは定かではないが、土方はそのまま別の仕事の話を始める。
二人も土方に報告すべき事があったのでそこにはあえて触れようとせず仕事の事へと頭の中を切り替えた。
「―――そういうわけだ。後はまた明日にでも報告してくれ」
朝餉の前の仕事内容の報告や打ち合わせが済んだ頃、障子戸の向こうに人影が一つ映る。
「あ…あのっ」
声の主は考えずとも分かる、千鶴だ。
しかし何やら戸惑っている様な気配がある。
「…どうした?」
「えと…えーっと…あの…」
声をかけた土方も、側でその様子を見ていた監察の二人もらしくない千鶴の様子に首を傾げる。
「何かあったのか?…入って来い」
「…は…はい…………あの……入ってもよろしい…ですか?」
入室を窺う千鶴に『否、だから入れと言っただろうが』と言葉を返そうとしたのだが、
「とっ…ととっ…歳三さんっっ」
叫ぶ様な声で自分の名を呼ばれ、思わず出かかった言葉を飲み込んでしまった。
先程千鶴は沖田に連れられてどこかに行った様だったが、その間に一体何があったのか。
想像するに難しい事ではない。
多分誰かに言われたのだろう。
「てめぇの亭主を姓で呼ぶのは可笑しいってぇ言われたか?」
溜め息混じりに立ち上がり、土方は千鶴と己を遮っている障子戸を開け……固まった。
「………お、はよう…ございます。…と…しぞう…さん」
恥ずかしそうに自分を呼ぶ、昨日縁を結んだばかりの嫁を思わず見下ろしたまま凝視する。
「あ、の?」
返事が返ってこない事に不安を覚えたのか、千鶴は頬を赤く染めたまま土方を見上げてきた。
「歳三さん?」
「き…もの」
「あの…昨夜井上さんから…頂きました。その…こ、婚姻祝いにと…」
「源さん…」
「すみません…えと、…お許しを頂く前に男装をやめて…しまって…その」
土方の態度に勝手に屯所内で娘姿を取った事を咎められているように感じたのか、慌てて立ち上がる。
「きっ着替えてまいりまっ」
「待て待て待てっ」
走り去りそうになった千鶴の腕を掴むとそのまま引き寄せ、しっかりと腕の中へ閉じ込めた。
「良く似合ってんじゃねぇか…驚いちまった」
「とし…ぞうさん…あの、怒っていらっしゃるんじゃ…」
土方の腕の中で、千鶴は恐る恐るといった感じで尋ねてきた。
立ち去ろうとした千鶴をあっという間に抱きしめた土方は、くくっと喉を鳴らすように笑い更にぎゅっと抱きしめる。
「怒ってなんかいねぇよ。…ただ、源さんに先を越されるたぁ思わなかったけどな」
「え?」
「お前には俺が最初に着物を贈るつもりだったんだけどよ、源さんなら…まぁいいか」
「土方さん」
「んだよ、もう戻ってるぞ、呼び方」
「…あ、と…歳三さん」
「悪かねぇな」
「?」
「ん?惚れた女に名を呼ばれるのは良いもんだと思っただけだ」
「嫌ではありませんか?」
「ああ」
「…歳三さん」
「何だ、千鶴」
「歳三さん」
「どうした、千鶴」
「お早うございます、歳三さん」
「お早う千鶴」
土方の広い背中に千鶴も腕を回し、きゅっとその着物を掴む。
ただそれだけの動作が愛しくて堪らない。
朝の挨拶を交わしただけなのに、こんなにも温かい気持ちになる。
「千鶴」
「はい、歳三さん」
「何でもねぇ」
「…歳三さん」
「何だ?」
「何でもありません」
(やべぇ。これは本格的にやべぇよな)
自分の胸に頬を摺り寄せて甘えるような仕草を見せる千鶴。
これから先、どんな姿を見せてくれるのか。
今まで我慢させた分沢山甘やかしてやっても良いとさえ思う。
(ああ、堪んねぇっ。何なんだこいつは)
視線の先にある千鶴の頭に口付けながら、
(―――可愛すぎるだろっ!)
土方は今にも暴走しそうな己と理性の間で必死に戦っていた…りもした。
と、それを廊下の向こうから観察していた面々が溜め息を吐く。
「何だかよ、土方さん変わったな…」
「…だな」
羨ましげな永倉が言えば原田は苦笑混じりに頷いた。
「土方さんの理性って何時までもつと思います?何なら賭けちゃいます?」
「やめろ総司。人の心を賭け事に使うな」
何事に置いても土方弄りが楽しくて仕方がないといった感じの沖田を斎藤が諫める。
「うう…千鶴…本当に人妻になっちまうんだな」
そんな彼らの後ろで、朝餉の準備が整った事を土方に告げに来ていたはずの藤堂の呟きに、
「藤堂組長それには語弊があります。彼女は既に副長の奥方です」
その更に背後から声がかけられた。
「うわっ、山崎君!?いつの間に??」
「あの状態の副長室にいつまでもいられると思いますか?」
「お邪魔な様でしたから、静かにお暇させて頂いて参りました」
先程まで土方の部屋いにいた監察方の二人がいつの間にかそこへ移動してきていた。
土方からの話は終わっていたのだから問題はないだろう。
それよりもあの甘い空間にいる事が激しく憚られたのだ。
「うんうん、仲良き事は美しきかな。なんとも微笑ましい限りだ」
そして、そんな彼らを見ながら嬉しそうに頷く近藤、と。
殺伐としているはずの屯所内で、朝からそんなに暇なのか新選組幹部はと突っ込みを入れたくなる状況が眺められたという。
続く