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…土方夫妻と泉夫妻しか出てきてません。
他の新選組隊士達は次ぐらいから絡んでくる予定なんですが。
どうしても書きたかった部分でもあったので、1話丸々そんな内容に。

いつも以上にほのぼのしてる気がします。
そんな小説は右下からどうぞ。

 

 


「私、こうして女の方とお勝手場に立つの初めてなんです」

 盛り付け用の皿や碗を出しながら千鶴は嬉しそうにそう言った。
 その言葉に絹が振り返る。

「お母はんは?」
「私を産んで直ぐに病で亡くなったのだと、父に聞いてます」
「そやったら、お父はんお一人で千鶴はんの事育てられたんやね」
「はい」

 手にした碗を絹に渡しながら千鶴は言う。

「父は江戸で町医者をしてました。ですから、幼い頃はともかく、段々私が家事を手伝えるようになって来た頃には一緒に食事を取る事も減ってきて…」
「そう」
「京に来て、新選組の皆さんとお食事を取る事が出来るようになって…そのお食事を一緒に作る事を許して頂けて…すごく、すごく嬉しかったんです」
「…新選組は女人はいてへんて聞いとるけど」
「えと…その…色々あって……男装する事で…屯所において頂いていたんです…」

 言い難そうな千鶴に、

「それで土方はんと出会ったんやねぇ」

 男装の事にはあえて触れずに絹がそう言って微笑んだ。

「うちには千鶴はんの事情は分からん。そやけど、千鶴はんが真っ直ぐ人の目を見て話せるんは後ろめたい事があらへんて事やろし。近藤はんや土方はんの様子を見とっても彼等が千鶴はんを大事にしとったんは良う分かるえ。…そやけどまぁ、こないに可愛らしい娘はんに誰も間違い起こさんやったんは奇跡やわ」
「そっそれは…私みたいな小娘なんて隊士さんから見ればただの子供で…」
「ただの子供やないさかい土方はんはあんたはんにべた惚れなんやろ」
「べっべた!?」
「なんや、自覚あらへんの?誰の目から見ても土方はんの千鶴はんへの愛情はだだ漏れちゃう?うちは会うてからまだほんの僅かやけどそう感じとるえ」
「え…えぇぇぇえぇっ!?」
「顔真っ赤にしてぇ。千鶴はんは土方はんが初恋やの?」
「えと…あの…………はい」
「まぁまぁ。そやったらうちとお揃いね。うちも今の旦那が初恋の人なんよ」
「そうなんですか!?うわぁ、素敵ですね」
「なに言うとるの。千鶴はんも一緒やよ。初恋実って良かったなぁ」
「…はいっ」

 絹が沢庵を切り分け、小皿に並べ始める。
 その姿を見ながら、先程から思っていた事を千鶴が口にしだした。

「あの…お絹さん」
「ん?どないしたの?何か足らへん?」
「いえ。…お絹さんは春頃江戸に発たれるとお聞きしました…けど」
「そや。こないな歳やし気候が良うなってからがええねって」
「……お絹さんが京にいらっしゃる間…その…」
「なん?ええよ言うて」
「時々、こうして…お話お聞きしたり…お料理の事とか、お掃除の事とか…母から習う事の出来なかった事を…教えて頂ければ…て」
「うちに?」
「あ…あの、厚かましい事とは思っているんですけど…けど…えっと……………楽しくて」

 言っているうちに何故か目頭が熱くなり視界がぼやけてしまったので慌てて俯いた。
 物凄い我侭を言っているのだと分かっている。
 けれど、本当に楽しいのだ。
 母を知らない千鶴にとって、こうして同じ女性と並ぶ事機会など無かった。
 だからもし、暫くの間であっても、またこうして彼女と話が出来ればと思ったのだ。
 だが流石に厚かましいお願いだったと、口にした事を後悔しだし、

「…す、すみません…あの、わ、忘れて」

 お願いを撤回しようとした時。

「ほんまにええの?うち、千鶴はんの世話焼いてええの?」

 明るい声が嬉しそうに返ってきた。

「え?」
「あんなあんな、うちほんま夢やってんで。お嫁はんと色んな事するん夢やってん。そやのにうちの息子ときたら江戸でいつの間にか嫁はん見つけてもうて、結局何も出来ひんかったんよ」

 驚いて思わず顔を上げた千鶴の頬を、一滴の涙が伝う。

「そやから今回の話があって、うちもお嫁はんのお世話焼けるんが嬉しゅうて今朝もはよからここに来て待っとったんやよ」
 
 うふふと笑いながら絹は千鶴の頬に手を当ててそっと涙を拭ってやった。

「千鶴はん」
「はい」
「うちが教えられる事どれ程あるんか分からへんけど、いつでも頼って?」
「ありがと、ございます!」
「お店の事は殆ど係わっとらんからうちいつでも暇なんよ。千鶴はんとお買いもんとか繕いもんやとか、色々やりたいわぁ」
「はいっ、私も!」

 母の事を知らない千鶴と、お嫁さんと色々やりたかった絹と。
 お互いが憧れていた事を現実にする事が出来て心の底から微笑みあう。

「宜しくな、千鶴はん」
「こちらこそ宜しくお願い致します、お絹さん」
「…あ、なあ千鶴はん」
「はい」
「うちも1つお願いしてもええ?」

 胸の前で掌をぽんと合わせた絹がこれまた嬉しそうにそう言った。

 

 

「昼餉、お持ちしました」

 千鶴が土方と喜助の待つ部屋に膳を運んで来る。
 そこは勝手場の横ではなく南側の庭に面した少し広めの座敷だった。

「………千鶴」
「はい?」

 部屋に入ってきた千鶴が喜助そして土方の前へと膳を置いていると何かに気が付いた土方がその手を伸ばし千鶴の頬に触れてきた。

「どうした」
「え?」
「涙の痕がある」
「あ…こ、これは…」
「絹になんや言われたか?」
「いいえっ、これは違うんですっ!」

 喜助の言葉に千鶴が慌てて首を横に振った。

「嫌やわぁ、うちお嫁はん苛めなんやせぇへんよ」

 残りの膳を運んできた絹が笑いながら言った。
 千鶴がそうしたように膳を二つ重ねて運んで来た絹の姿に千鶴は驚いて慌てて立ち上がる。

「お母さんっ1つずつ運ばないと危ないですっ」
「千鶴はんかてそうやってたやん」
「私は屯所でなれてます」
「うちかて平気やよ」

 仲良く話す二人に、夫二人はほぼ同時に同じ事を口にした。

「お母はん?」
「お母さん?」

 それぞれの場所に膳を置いた千鶴と絹がやはり同時に頷いた。

「うち達が京に居る間、千鶴はんのお世話焼いてもええて言うてもろうたんよ」
「私が母に習えなかった事を、お母さんに教えて頂きたいとお願いしたんです」
「折角やから年甲斐も無いゆうかも知れへんけど、千鶴はんに【お母はん】呼んで欲しいてうちからもお願いしたん」
「私…お母さんって一度も呼んだ事なくて…嬉しくて…あの…」

「あかんかった?」
「駄目でした?」

 驚いたまま話を聞いていた夫達に妻達は事後確認を取る。
 先に言葉を返したのは喜助だった。

「そやったら私の事もお父はんって呼ばなあかんよ」
「え?」
「お絹だけ呼ぶんはずるいで」
「宜しいんですか?」
「若い娘はんに呼んでもろたら嬉しいなぁ」
「…お父さん」
「なんや」
「お父さん、お母さんって…温かい呼び方ですね」
「そやねぇ。あ、ちゅう事は土方はんもやな?」

 突然話の矛先を向けられた土方が、は?と泉夫妻を見る。

「私な、実は息子には父さんやのうて親父て呼ばれたかったんや」
「うちも。ほんまは母さんやのうてお袋って呼ばれたかったんよ」
「京でのお父さんとお母さんですね、歳三さん」

 期待の眼差しに幸せ一杯の瞳。
 これに歯向かう事など出来る筈も無い。

「………京にいる間、千鶴共々宜しくお願いします…親父殿、お袋殿」

 土方がそう言えば、

「殿はいらんが、まぁええか。後は気楽に話してな。私ゆわんと俺でええ。いつもはそうなんやろ?」

 喜助がちょっと不満そうに言い、

「泣く子も黙る新選組副長はんにお袋殿やなんて、自慢したいわぁ」

 何だか照れた様に絹もいい、

「私、お母さんに沢山お料理とか教えて頂きますから、歳三さん期待してて下さいね」

 妻の千鶴がそう言って本当に嬉しそうに微笑んだ。
 それを受けた土方は大きな溜め息を吐き、

「ったく…仕方ねぇなぁ」

 そう言って苦笑する。

「取り敢えず飯にしねぇか?折角お袋殿が作ってくれたのに冷えちまう」
「そやな、頂こう」
「はい。お母さんいただきます」
「たんと召し上がれ」

 そうしてやっとで昼餉の膳に箸を付け出した。

「うめぇ」
「本当すごく美味しいです」

 煮物を口にした土方夫妻はどんどん箸を進める。

「よぉ味がしみとる」
「少し味を濃くしてみたんよ。京は薄味やろ?その方が口に合う思てな」

 3人が嬉しそうに食べる姿を見て、絹も嬉しそうに言った。
 屯所を離れて過ごす初めての時間がとても優しいものであった事に、千鶴はもぐもぐと口を動かしながら微笑む。

「幸せそうに食べはるねぇ」

 そう言った絹に、

「はい、とても幸せです」

 満面の笑顔で返事をした。

 

 

続く

 



 

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