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20,000&30,000HITありがとうございます、の感謝小説でございます。
の割には遅くなって申し訳ありません…。

ちょっと特殊な土千です。
しかも夜中に書き上げたので、誤字脱字が多いかも…です。
また落ち着いて確認しながら手直しします、多分。

小説は右下からどうぞ。

 

 

「千鶴、千鶴?」

 春のうららかな陽気に包まれた山の中。
 ひっそりと佇む一軒の家の中から、その家の主の声がする。
 あまり広いとはいえない家の中で、これだけ呼んでも返事がないとなると、少し心配になってくる。
 彼が捜しているのは最愛の妻。
 いつもなら一度呼べば直ぐに返事が返ってきて、その姿を見せるのだが…。

「……千鶴、ここか?」

 最後の部屋の襖をゆっくり開けると、

「千鶴っ!?」

 彼女が部屋の真ん中に、静かに横たわっていた。
 慌てて駆け寄るも、その違和感に気付き思わず目を見張る。
 確かにそこに横たわっているのは『千鶴』で。
 だが、

「ど、どういうことだ、こりゃ…」

 目の前にいる千鶴は自分が娶った千鶴ではない。

「う……ん…」

 彼女が身動ぎをする。
 その側に膝をつき、そっと肩をゆすった。

「おい、ち…千鶴?」
「……ん」
「起きれるか?」
「………っ!!」

 声が聞こえたのか彼女が突然がばっと起き上がった。
 この行動に思わず身を反らしかけたが、この反応もなかなかに懐かしい。

「ひ、土方さんっ?」
「起きたか。どっか具合が悪いとかねぇか?」
「い、いえっ。すみません、私ったら居眠りなんて…」
「取り敢えず、落ち着け」
「はい…。…………………ひ…じ、かたさん?」
「その反応は俺にも理解は出来るんだが、何がどうしてこうなってんのか、分かるか?」

 この家の主である土方歳三に尋ねられ、彼女は小さく首を横に振った。
 高い位置でひとつに括った髪がそれに合わせて揺れる。
 千鶴が土方の妻になるまで、いつもしていた髪型だ。
 それが懐かしいと感じた時に、ふと頭の中によぎった記憶。
 それで今起こっている事とこれから起こるのであろう事が予想できた。
 確認を取るために、目の前の千鶴に声をかける。

「千鶴、お前今いくつだ?」
「え?」
「歳だ、歳」
「15…です」
「………伊藤さんって分かるか?」
「新選組参謀の…?」
「元治元年ってとこか…」

 一人で何やら考えている土方を、その千鶴がきょとんとして見つめている。

「土方さん…ですよね?」
「ん、ああ。そうだけどな。お前の知っている土方とは違うっつーか」
「髪…どうなされたんですか?」

 千鶴が言う土方の髪は、彼女が見慣れている長さとは随分違うのだろう。
 確かにあの頃は長かったなと、思い出しながら、

「俺はここ数年この長さだがな」

 と笑って見せた。
 土方の笑顔に、千鶴は固まる。
 新選組に世話になりだして一年近く経つが、こんな柔らかな微笑みは見たことなどない。
 一体自分の身に何が起こっているのかと、やっと思考が動き出した。

「あの…」
「何だ?」
「土方さん…なんですよね?」

 再度確認をしてくる千鶴に今度は苦笑して見せ、すっと手を伸ばすとその頭を少々乱暴に撫でてやった。

「そうだ、おれは土方歳三で…お前の旦那だ」
「…………え?え、えぇぇぇぇぇっっ!!」
「っても、お前からすると6年程先の話、だけどな」
「……す…みません…頭が追いつきません…」
「だろうな。茶でも淹れてやるから、ゆっくり考えようぜ」

 何故か落ち着き払っている土方に、千鶴はゆっくり頷いた。
 そしてそこで気が付く。
 今、目の前にいる土方の言っている事が本当ならば、ここにいる私はどうしたのだろう、と。

「…千鶴?」
「えと…じゃあ、6年後の私が…ここにいるのですか?」
「いつもならな。けど、今はお前のいた時代にいるようだ」
「は?」
「思い出したって言うのも変だけどよ。突然出てきやがったんだ、頭ん中に。そういや昔こんな事があったっけってな」
「安心しろ、何でか確信がある。ちゃんと元の時代に帰れるよ、お前も俺の女房もな」
「はぁ…」
「隣の部屋に来い、卓はそっちにある」
「は、はい」

 土方はそういうと、厨の方へ向かった。
 千鶴は自分の置かれた状態を今一飲み込みきれていない様子で、ゆっくりと部屋を見回した。
 質素な暮らしといえば聞こえは良いが、正直に言えば何もない。
 一番大きな物は衣装箪笥で、小さな化粧台が近くにあった。

「夢…じゃないのね」

 一応頬を引っ張ってみるが、痛みを感じる上に目が覚める様子もない。

「何でこんな事に…」

 確か自分は屯所の中で洗濯物を畳んでいたはずだ。
 その少し前には沖田にからかわれて、その前には藤堂のお土産のお団子を食べていた。
 それが何故こんな事になってしまったのか、当の千鶴には理解できる事ではなかった。
 しかも。
 6年後だというこの時代では、自分は土方の妻だという。
 それも信じられることではない。
 何故自分が?そう思ってしまう。

「何で土方さん?…どう考えても釣り合いが取れないじゃない…」

 土方といえば役者の様な綺麗な顔立ちで、とにかく女性にもてる。
 片や自分はただの町娘で、突飛した所など何もない。
 先程まで目の前にいた土方だって、あの想像もしたことがない柔らかな微笑。
 どう考えても無理だ。
 だって。

「千鶴?こっちに来い」

 お盆を手にした土方が、部屋の中の千鶴に呼びかける。

「ったく、いつまで呆けてる気だ?」
「すみません」
「謝る必要はねぇよ。ほら、来い」
「…はい」

 取り敢えず今はこの土方の言う通りにしたほうが良さそうだ。
 千鶴は立ち上がると隣の部屋の移った。
 そこには卓があり正面の座布団をすすめられる。

「ありがとう、ございます」
「あいつがいりゃ旨い茶を出してやれたんだろうがよ、俺が淹れたので我慢してくれ」
「い、いえ…そんな」

 まさか土方にお茶を淹れてもらう日が来るなど考えもしなかった。
 妻がどうこうより、こちらの方が驚いてしまう。

「俺好みだからな、ちぃっと熱いぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
「どーぞ。あ、こっち茶菓子な」

 差し出された湯飲みを両手で包み、ゆっくりと口を付ける。
 確かに熱い。
 でも、美味しい。
 ふぅふぅと息を吹きかけ、冷ましながらお茶を口に含みこくんと飲み干す。
 その動作を繰り返しながら千鶴はちらりちらりと土方を盗み見た。

「ふっ」

 その視線に気が付いていた土方が堪らず吹き出す。 

「なんだ、聞きてぇ事があんなら遠慮せずに聞きゃあいいだろ」
「あの、えっと…」
「多分まだ時間はあるぜ?ゆっくりでいい、聞いてみろ」

 そう優しく諭されると自然と頬が熱くなる。
 上げていた視線をスイッと逸らす。

「えっと…新選組は…皆さんはどうされていらっしゃるんですか?」
「核心からか、お前らしいな」
「あの…」
「結論から言や、新選組はもうねぇよ」
「え?」

 思わず落としかけた湯飲みを目の前から伸びてきた手が慌てて掴む。

「火傷するぞ」
「あの、あのっ!」
「ん?」
「無いって、新選組が無いって?」

 千鶴の湯飲みを卓の上に下ろしてやり、不安に揺れる彼女の瞳を土方が優しく見つめる。

「1年と半年くらい前にな、終焉を迎えたんだよ」
「そんな…嘘ですよね?」
「嘘吐いてどうする。もし嘘ならもっと上手く吐いてやるよ」
「そんな事…新選組が無いなんて…」
「でっけぇ戦が続いてな、少しずつ衰退して、最終的には敵に降伏した。生きて、未来を成すためにな」
「生きて未来を…成す…」
「俺はその戦の終局で死んだ事になってる。実際重傷負って瀕死だったんだけどな」
「土方さんが!?」
「ああ、その俺を必死に看病して生かしたのが未来のお前だ、千鶴」
「………」

 卓の上に戻してもらった湯飲みを持ち上げて一口飲む。
 何故これが夢ではないのだろうと思う。
 まさか、新選組がもう無いなんて思いもしなかった。

「それから、他の皆だが」
「…はい」
「新八と斎藤、島田は生きている。これは確かだ」
「近藤さんは?」
「………死んだよ」
「っ!」
「総司も平助も、源さん、山崎、山南さん…沢山の仲間が死んじまった」
「嘘……あ、原田…さん、は?」
「原田と新八は途中で新選組を脱退してな、その後新八とも連絡が取れなくなったらしい。原田の消息は今も分からねぇんだ」
「そんな…っ」

 土方は手にしていた自分の湯飲みを静かに置いた。

「すまねぇな」
「……っ」
「泣かせたくはねぇんだが、嘘を言っても納得しねぇだろお前は」

 ぼろぼろと零れる涙を千鶴は何度も何度も拭うが、それは一向に止まる気配が無い。

「でもなぁ千鶴。皆、力いっぱい走り抜けたんだ」
「…はい」
「悔いは無かったとは言えねぇかも知れない」 
「……それは…」
「でもな、一日一日を走り抜けたんだ」
「はいっ」

 着物の袖口で涙を拭う千鶴に手拭いを差し出してやると、彼女が落ち着くまで土方は待った。
 暫くして、瞳を赤くした千鶴が顔を上げる。
 まだ潤んではいたが、その瞳から涙は零れてはいなかった。

「どんどん仲間を喪ってな、それでも俺は前に進まなきゃいけなかった」

 静かに土方が語りだす。

「肩に、背中に乗っかってくる皆の思いが重かった。動くのもやっとってくらいにな。それでも新選組を護るのは俺しかいないって意地張ってた」
「土方さん…」
「そん時には気付かなかったんだがよ、そんな俺をずっと側で支えてくれてたのが千鶴だった」
「…私…?」
「未来のな。そんなお前を手放して、離れ離れになってやっと気付いたんだよ、自分の気持ちに」
「気持ち…」
「千鶴がいなけりゃ立ってるのも辛い、寂しいってな」
「ふぇ!?」
「愛おしいって気付いた」
「……え、ええっ!」
「だから落ち着けって。未来のお前に対してなんだからよ」
「は、はぁ」

 さっきまで泣いていた癖にと土方に笑われ、千鶴は顔を赤くしたま俯く。
 ああ、懐かしい反応だと思いながら、今ここにいない妻の姿を思い起こす。
 常にすぐ傍で自分を支えてくれる、愛おしい存在。
 自分と行動を共にするようになって、随分と強くなった。
 色々な意味で。
 そんな彼女を前にして結構戸惑ったなぁと、数年前の自分を思い出す。
 今頃妻である千鶴は、きっと屯所内に爽やかで抗う事の出来ない風を吹き込んでいることだろう。

(正にご愁傷様ってぇとこだな、あいつにはどうやったって敵うわけねぇんだからよ)

 巡る時間の中で起こった不思議な出来事。
 元に戻るまで何をして過ごすかな、と。
 俯いたままの千鶴を前に、土方は暢気に構えていた。

 


前編:終わり

 
 

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