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10,000HITありがとうございます、の感謝の気持ち小説第二弾です。
いざという時は女の方がきっと強いと思います。
そんな千鶴編ですが、ちょこちょこ手直しするかもしれません。

えと。
『再会編』&『その後』をとリクを頂きましたので、書かせて頂きたいと思ってます!
というかそっちの方が書きたいかも。
再会編は、土方さんにはシリアスしてもらったので、その反動で甘々なのを。
その後は、別の人視点での土千とかを考えてます。

デモデスネ…。

昨日から黎明録やっているんで、更新が更にカメさんになるかもです。
龍之介が可愛くてたまらんっっ!!
野生の感で土方さんルート狙ってたら、何故か沖田君の友情度がぐんぐん上がってる…アレ?
黎明録ネタも書きたいなぁ~。


小説は右下からどうぞ!
 




 

 


『俺は、お前を幸せには出来ない。お前は女として、この地で生きろ』

 

 

 彼らが……彼が去って行った後を、じっと見つめているしか出来なかった。
 何を言われたのか、理解したくなかった。
 けれど。
 何かに縫い止められたように、足が地面から離れなかった。

「土方さん…?」

 呼んでみても返事は無い。
 ついさっきまで、少し前を歩いていたのに。
 手を伸ばせば届く位置に、彼はいたのに。

『――蝦夷地への同行は許さん。お前の存在は、俺達の邪魔になる』

 ここまで共に歩いてきたのに。
 何か至らない所でもありましたか?
 何か御不興を買ってしまいましたか?
 言って下さったら直します。
 だからお傍に置いて下さい…。
 私が生きる道を閉ざさないで。

「雪村君……」

 呼ばれてやっとで身体が動く。

「おお…とりさん…」

 ゆっくりと振り返れば、後から合流するはずだった大鳥がそこにいた。

「ごめんね。…声をかける機がつかめなくて…聞いちゃったんだ」

 使って、と差し出された大鳥の西洋の手拭をおずおずと受け取って、顔に当てた。


 そうか。
 私…泣いていたんだ……。
 だから置いていかれたのかな。


「雪村君」
「………」
「……君は、土方君の傍にいたいんだね」

 大鳥に言われると更に目頭が熱くなり、涙が溢れる様に零れだした。 
 はい、と声に出す事ができず千鶴は小さく頷く。
 土方の傍にいたいだけ。
 千鶴の願いは本当にただそれだけなのだ。
 生まれた故郷もすでに無く。
 育ててくれた父と呼べる人もいない。
 ただいつも傍にいてくれた、置いてくれていたあの人も…いない。

「ひ…じ方さんが、私の存在が…邪魔…だと…」
「それはきっと本心ではないと思うよ」
「でも……」
「彼は不器用だね…君を護りたくて護りたくて…仕方がないんだ」 

 護られたいわけじゃない。
 護って欲しいのでもない。

「護っ…られるだけはっ……嫌ですっ」
「君の強さを、土方君も知っている。だからここで一人にしてもきっと生きてくれると思っているんだと思うけど」
「ひとりでっ……生きる方法なんて……知り…ません…」

 今まで生きてきて、一人ぼっちだったのなんてどれ程のものだろう?
 小さい頃から鋼道が傍にいてくれた。
 本当の父ではないと知る事もなく、それでも大好きな父様だった。
 その父が戻らなくなって、不安で心配で、淋しくて。
 一人江戸を発って、京に至るまで。

 あの日の夜。
 土方達と出会うまで。

 その間だけが一人ぼっちだった。
 屯所で暮らすようになってからは、いつも誰かが傍にいるような生活だった。
 同じ屋根の下に、家族の様に過ごせる人達がいた。

「私は…強くなんて、無い」
「雪村君」
「土方さんが…いて下さったから…あの人の傍にいたかったから……」
「うん…うん、そうなんだね」
「彼と一緒に居たかったからどんなに辛い事も頑張れたのにっ」
「彼は、君の強さが自分と共にある事なんだって、考えもしてないのかもね」
「ふ…ふうぅぅうっ」
「ああああ、お願いだよ、もう泣かないで」

 今にも泣き崩れてしまいそうな千鶴に大鳥は慌ててしまう。
 基本、大鳥は女性には笑っていて欲しいと願っている。
 泣いている姿よりもずっとずっと魅力的なのだから。
 その笑顔を守るために男は力を持っているのだと。
 女性は護るべき大切な存在なのだ、と。

 もし原田がここにいれば意気投合していたかもしれない。 

 大鳥はそっと手を伸ばし千鶴の頭を撫でた。
 ゆっくりと手を動かし、千鶴が落ち着くのを待つ。
 その優しさが、とても懐かしく感じる。
 屯所に居た頃。
 千鶴の事を可愛い妹分だといってくれた永倉や原田がよくこうしてくれていた。

「ね、雪村君」

 千鶴が落ち着いてきたのを見計らって、大鳥が言う。

「……待っていてくれるかな?」
「え?」
「僕達が蝦夷地に地盤を築き上げるまで」
「地盤…?」
「向こうが落ち着いたら、僕が君を蝦夷地に呼んであげるよ」

 優しく微笑む大鳥に、千鶴は驚いた顔をする。
 そして、ぱしんと瞬くと最後の一粒が頬を流れて、涙が止まった。

「だからね、約束して」
「約束?」
「正直どれくらいかかるか分からない。けど約束は守る、絶対に。だから君も僕と約束をして欲しい」
「はい」
「あのね、どんなに辛くても悲しくても淋しくても。その負の感情に押し潰されて自分で命を絶ったりしない、ちゃんとこの地で待ってるって」
「……」
「死んじゃ駄目だよ、生きて待っていて。土方君には内緒にしておくから、二人で脅かしてやろう?」
「大鳥さん」
「ね?約束、だよ」

 ね、っと首を傾げる仕草に、本当に土方よりも年上なのだろうかと疑いたくなるが、そんな所に彼の誠実さや優しさが滲み出ている。
 だからこそ、千鶴は

「お約束します。私、待ちます」

 と、はっきりとした声で返事をした。

「笑顔が出たね。うんうん、それで良いよ。女の子は笑顔が一番!特に君みたいに綺麗な子には笑ってて欲しいよ」
「大鳥さん」
「大丈夫だね」
「はい」
「時々僕の部下を様子を見に立ち寄らせるよ」

 そういいながら彼は今後の話を千鶴に告げた。
 滞在する間世話になれるような人物や滞在する為の資金。
 彼は手際よくそれらを決めてくれた。

「大鳥さん」
「あ、お礼はいらないよ。君が蝦夷地に着いたらずーっと、それこそ死ぬまで土方君の傍で働いてもらうんだしね」
「はい!」

 元気を取り戻した千鶴の笑顔に大鳥はほっとした。
 傍から見ても、彼に依存していると感じていた千鶴が一人残されてどうなるのか。
 下手すれば自刃してしまうのではないかと懸念した。
 だが、自分は見誤っていたらしい。
 ちょっとした切っ掛けで、彼女は彼女らしい強さを取り戻した。

(土方君ってばとんでもなく贅沢者だよ…いいなぁ)

 後方を振り返り、自分達を見送ってくれている千鶴に手を振りながら、大鳥も先を急いだ。

 

 

 ―――そして、2ヶ月ほど過ぎた頃

 
 大鳥が紹介してくれた先は、小さな診療所。
 老夫婦が切り盛りするその診療所を手伝いながら千鶴は待つ事になった。
 千鶴を迎え入れてくれた二人は大鳥とは縁があるらしく、とても暖かく彼女を迎え入れてくれた。

 ふと、淋しさがこみ上げてくる事もあった。
 それでも、大鳥がくれた約束が胸にあったので、淋しさに負けることはなった。
 今は勉強の時だ。
 向こうに行った時、少しでも役に立てる事が増えるように。
 一度、大鳥の部下が立ち寄ってくれた時に小さな甕に入れた沢庵を託した。
 匂うかもしれないんですけど、というと彼は

『途中で自分の胃の中に入らない様に気をつけます』

 と、笑ってそれを持って行ってくれた。
 私は元気ですよと、土方に伝われば良いと。
 そんな思いを彼の好物に込めた。


 早く土方さんに逢いたい
 土方さんの瞳に自分を映して欲しい
 あのぶっきら棒で、でも優しい声が聞きたい
 彼の安心する匂いに包まれたい
 隣りに並びたい
 許されるなら、抱き付きたい
 土方さんに千鶴と呼ばれたい


 彼と再会する日の為に、今やるべき事をやっておく。
 それが自分の今するべき事だ。

「土方さん、ちゃんと休んでるかなぁ。お食事は摂ってるかな…」

 午前中の診療を終えたあと、昼餉の方付けをしながら千鶴は呟いた。
 いつだって思い出すのは彼の事だ。
 仕事仕事と自分の事をいつも疎かにしてしまう。

「千鶴さん」
「はい、奥様」

 勝手場に顔を出した院長婦人が、千鶴を呼んだ。

「千鶴さんにお客様よ」
「私にですか?」
「大鳥さんのお使いの人ではないみたいなんだけどね、貴女を知っている人たちみたいよ」

 そう言われて首を傾げる。

「どなたでしょうか?」
「お一人は松本さん、と仰るそうだけど」
「松…松本先生!?」

 行ってみます、と慌ててそこを飛び出した。
 玄関に行ってみればそこには懐かしい顔が。
 それも一人ではない。

「お、千鶴!」
「原田さん!」
「おお、娘姿だ」
「永倉さん!」
「元気そうで安心したよ、千鶴君」
「松本先生!」

 足袋のまま草履も履かず土間に飛び降りる。
 その勢いに任せて、正面に並んでいた原田と永倉の腕に飛びついた。

「どうしてここに!?」
「…土方さんがな、松本先生に千鶴の事を頼むって連絡してたらしくてさ」
「土方さんが…ですか?」
「私もごたごたしていてね、遅くなってしまったけれどやっとここに来れたんだよ」

 すまなかったね、という松本に千鶴は首を横に振って笑った。

「皆さんお元気そうで何よりです」

 そう言えば、
 
「千鶴ちゃんの笑顔が見れて良かったぜ」

 永倉が千鶴の頭をわしわしと撫でた。
 
「……思っていたよりも、大丈夫そうだな」
「泣いてばかりいられませんし、医学の勉強を少しでもしておきたいんです」
「そうか」
「大鳥さん…土方さんの上司の方から連絡があれば、直ぐにでも蝦夷地へ向かいますから」
「千鶴…蝦夷地って」

 きっぱりと言い切る千鶴に原田と永倉が顔を見合わせた。
 自分達は松本が千鶴を迎えに行く途中だと聞いて、同行を願い出たのだ。
 彼女が蝦夷地へ向かうなど聞いていなかった。
 松本は土方から彼女の保護を頼まれていたはずだ。
 
「千鶴君、少し話がしたいんだがね」
「あ、はい。奥のお座敷を使わせて頂けるようにお願いしてきます」

 少しお待ち下さいね、と言い残して千鶴は家の中に入っていった。

「先生よぉ、こりゃどういうこった?」
「予想はしていたが…どうしたもんか。取り敢えず彼女と話をしよう」

 少しして、千鶴が戻ってくると座敷の方に通された。
 久しぶりに千鶴の淹れてくれたお茶を啜り、原田が口を開いた。

「千鶴、蝦夷地へ行くって話だけどよ」
「私が生きる場所は土方さんのお傍だけです」
「けどよ、あそこは間違いなく最終決戦の地になる…激戦になるだろう」
「死にに行くようなもんじゃねぇか、俺は反対だ」

 湯飲みを両手で握った永倉が言う。
 千鶴の前に座る3人ともがとても厳しい顔つきでこちらを見ていたが、千鶴は小さく首を横に振る。

「反対されようがどうしようが、決めるのは私です。心配して下さるお気持ちはとても嬉しいです。けれど、私は土方さんが居なくては生きていく道すら分かりません」
「千鶴」
「確かに蝦夷地は死地となるのでしょう。それでも皆さんが信念を抱いて戦いに望もうとしています。私もお傍にいたい」

 静かに微笑む姿には、もう何を言っても無駄なのだという強い決意を感じる。
 松本は一度目を閉じ小さく息を吐くと千鶴に尋ねた。

「千鶴君、君は土方君の傍に行きたいのかい?」
「はい」
「けれど、土方君は君を置いていった」
「女として幸せになれといわれました。けれど、私の幸せはここにはありません」
「土方君を想っているのだね?」
「はい。どんなに危険な地であろうと怖くありません。土方さんはきっと蝦夷地で死ぬおつもりです。だからこそ私はお傍に行きたい、共にありたい」
「共に死ぬためにか!?」

 思わず原田の言葉が強くなる。

「土方さんを生かすために、です」
「……千鶴ちゃん」
「私は土方さんに生きて欲しい。私に幸せになれというのなら彼に生きて頂かないといけないのです」

 ふふっと千鶴が笑う。

「私は土方さんを心からお慕いしています。京を離れて、ずっと土方さんの背中を見てきました。弱っている姿も無理をしている姿もずっと見てきました。ただ強いだけじゃない土方さんをずっと」
「千鶴」
「私は鬼です。人間ではありません。人の中で暮らす事、土方さんのお傍で生きる事はとても贅沢な願いです」
「千鶴ちゃん」
「これ以上の願いはないんです、これ以上の幸せはありません」
「何を言っても無駄のようだね、千鶴君」
「先生方には御足労頂きましたのに本当に申し訳ありません」
「千鶴、強くなったな」
「原田さん」
「子供だ子供だって思ってたのによ、いつの間に極上の女に成長したんだよ」
「兄貴分としちゃあ送り出すのは辛いんだがよ、でも、分かった。行ってこい!」
「はい!」

 

 

 彼らがが訪ねてきた日から数日後。
 待ちに待った大鳥からの連絡を持った彼の部下が来た。
 
「では、行きますね」

 世話になった老夫婦や滞在したままだった原田達に見送られ、千鶴は仙台を後にした。
 小さくなっていくその姿を忘れまいとばかりに目に焼き付ける。

「……千鶴ちゃんに会えるのもこれが…最後かも知れねぇな…」
「冗談言うなって言いてぇんだけどよ………だな」

 彼女が屯所に来てからの日々。
 怯えていた少女がいつの間にか心を開き、自分達も心を開いた。
 殺伐とした生活に、花を咲かせ潤いをくれた。

「千鶴」
「千鶴ちゃん」


「「幸せになれよ!」」


 彼女に遅れる言葉はそれだけだ。

「すまないな、鋼道さん」

 松本が少し離れた場所で、空を見上げてそう零す。

「あんたが命がけで守った娘を、私は止められんかったよ。あの子の中にも新選組の魂が宿っとる」

 彼女の歩む道はとんでもなく困難だ。
 それでも彼女の強い瞳には、反対など出来なかった。

「幸せになるべき娘だ。見守ってやってくれ」

 

 千鶴が旅立った日はどこまでも澄んだ、晴れ渡った冬の青空が広がる日だった。
 大鳥から贈られた洋装を身にまとい、最後まで笑顔で旅立った。
 見送った者達にはその後彼女がどうなったか知るすべはなかった。
 それでも幸せであったと信じられるのは彼女の強い心を見たからだろう。


 慕う者へ想いを馳せて、心を寄せ合った二人の幸せを。
 心から願いたい。

 

 

 千鶴編:終わり
 
 
 

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