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【和花】 なごみばなと読んで頂けると嬉しいです。 乙女ゲーム系二次小説オンリーサイトです。
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夏です。
そ言うわけで、夏らしい…物語を土千で。
ヒンヤリと、こう…涼しく?
題名の【花鏡想慕】は月夜野の造語ですのであしからず。

今日まで仕事だった私は明日からお盆休みという、社会人の夏休みに入ります(喜)
毎年、大体3日間のお休みなんですが今年は雇い主の用事があるらしく1日延びました!!
あああっ槍が降るのではなかろうか!?
そんな心配をするくらい珍しい事なのです。
なので、折角ですから頑張って短期連載を決行いたします。
で、今夜は前夜ということで序章何ぞUPしてみました。
が、土千であるにも拘らず土方さんも千鶴も出番ナッシング。
しかも本編はまだ書きあがってないんですが(汗)

……見切り発進もイイトコダナ…オイorz

ちょっと、怪談系目指してますが、私自身あまり得意ではないので(なら書くな)本格的なのは期待しないで下さい、です。

本当にちょっとヒンヤリしたい方は右下からどうぞ。

 

 


「追え。決して逃がすな」

 静寂に包まれた黒一色の世界で、凛とした声が指示を出す。
 盆地という土地柄の所為か新選組の三番組が夜番であるこの夜もとても蒸し暑い。
 重そうな雲に覆われているだろう空に動かなくてもじっとりと汗ばむ気温。
 時折吹く風も湿気を含んでおり時期に雨が降るのだろう事は容易に想像できる。
 そんな中で三番組の隊士達は組長である斎藤と共に夜襲をかけて来た不逞浪士共を追いかけていた。

「組長」

 見失った浪士を捜索していた隊士が足早に駆けて来る。

「見付かったか?」
「はい。この先の雑木林の奥にある廃神社へ逃げ込んだ様です」
「廃神社?」
「ごろつき共の溜まり場になっていると以前聞いた事があります…が……」
「何だ?」

 言葉を濁す隊士に斎藤が怪訝そうに言う。

「いえ、その」
「言え」
「それが…その廃神社なんですが…あやかしや物の怪が出るとの噂も」
「……………」

 言えと言ったのは確かに自分だが、まさかそんな内容だとは思わなかった。

「…下らん」

 斎藤は寒気を感じるほどの低い声音で一蹴する。

「ですが、その廃神社の拝殿の中にはよく…ごろつき共の死体が転がっているらしく…呪われて…いる…らしい…」

 そうは言ったものの、見た事もないあやかしや物の怪よりもよほど眼前の我等が組長の方が恐ろしい。
 しかも屯所に戻れば【鬼副長】が待っている。

「……と…近くの村人が以前…申しておりましたもので…」

 斎藤は溜め息を吐きながら、

(新選組隊士がそのような物に恐れを感じてどうする)

 隊士に視線を向けた。

「浪士共が逃げると厄介だ…行くぞ」
「はっ」

 不逞浪士を取り逃がす訳にはいかず足早にその廃神社があると言う場所へと向かった。


 四半時(15分)程走っただろうか。
 不逞浪士を追いかけていた三番組の隊士達とも合流を果たしその場に立つ。
 視線を向ける正面には、うっそうとした大きな木々に囲まれるようにしてその廃神社が佇む。
 少し前から降り始めた雨に打たれるだけでも崩れてしまいそうな、そんな朽ち果てた様子が暗闇に慣れた瞳にも映った。

「ここか」
「はい」

 斎藤の後ろに立つ隊士達はその場所の雰囲気に飲まれてしまっているのか、表情が強張っている。

「恐ろしいと言うならここに残れ」

 その言葉に隊士等はほっとしかけたのだが、

「いざという時に剣を振るえぬのならば必要無い」

 続いた言葉に返事を仕掛けた口の動きが止まった。
 言外に『ただの足手まといは要らん』といわれた事がひしひしと伝わって来る。
 もしここで本当に動かなかったなら、それは隊規に背く事になってしまうのだろうか?

「行きます」
「自分も…行きます」
「私も」

 暗闇の雨の降る中に残るか、新選組でも指折りの剣豪である自分の組長と共に行くか。
 答えはすんなりと出る。

「………ならば行くぞ」

 短く告げた斎藤が間を置かず駆け出す。
 隊士等もそれに従った。

 斜めに傾いた拝殿の扉を静かに引き中の様子を窺うが、流石にこうも暗いと良く分からない。
 しかし人の気配はまるで無い事を、斎藤は感じ取っていた。

(はずれなのか?)

 もしそうならば不逞浪士を取り逃がしたことになる。
 責任感の強い斎藤が眉間に皺を寄せている時彼の側にいた隊士が拝殿の様子を窺う為に扉から顔を中へと入れかけた。
 その瞬間。


 ―――カッッ


 何の前触れも無く、暗闇を明るく照らす様に眩い光が放たれた。

「ひぃっ」

 暗闇を切り裂いたのは稲光。
 それは拝殿の中までも、一瞬ではあるが照らしたのだが。
 中を覗こうとしていた隊士が小さく悲鳴を上げ思わず後ろに飛びのいた。
 一瞬見えた光景に、斎藤すらも思わず息を飲んだ。


 ゴロゴロゴロ…


 雷鳴が少しばかり離れたところで鳴っている。
 そしてまた…


 ―――カッッ


 稲光が再度拝殿の中を照らした。

「っっ!」

 斎藤が腰を低く据え右手で鯉口を切ると居合いの体勢を瞬時に取る。
 それにやや遅れて、隊士らが抜刀する。
 稲光が照らした拝殿に人の姿があったのだ。
 先程光った時にはなかった場所に、人の姿があった。
 その姿を斎藤が見誤るはずも無い。
 だが、依然として気配は無いのだ。


 ドォーン…ゴロゴロゴロ…


 雷鳴の轟が段々と近付いて来る。
 そして次の稲光が闇夜を割いた時。
 先程見た姿はそこにはなかった。

「………見間違いではないはずだが…」

 憮然として中を窺うが、最初の時に見たそれら以外何も無かった。

「斎藤組長…これは…」

 足元に何かを見つけた隊士がそれを拾い斎藤に渡す。

「…鏡の…欠片か?」
「あの…おかしくは無いですか?」
「何だ」

 息を飲みながらも拝殿の中を窺っていた隊士が気付いた事を言う。

「新しい死体の筈なのに…血の臭いが………しません」

 目の前に広がる光景ははっきり言って信じ難い。
 しかしその光景の中に先程見たものが紛れいているのだから、何かの間違いだと頭から否定もできない。

「……今は屯所へ戻り副長へ報告すべきだろう。一度戻り改めて日が上った頃に調査へ来る」

 戻るぞ、斎藤の言葉に隊士らが頷き壬生狼の住処といわれる新選組の屯所へと向かい駆け出した。

 何度も頭上で光る稲光。
 それに合わせて斎藤は廃神社を振り返る。

「見間違いなどでは…無いはずだ」

 そう呟いて、本降りと化した雨の中、帰路へとついた。
 

 

本編へ続く…


 

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