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昨日に引き続きちょこっとヒンヤリ系の物語、花鏡想慕の1話をお届けです。
まぁ、まだそんなに、うん。
土千だけど…土方さんと千鶴ちゃんっぽいのになるかもしれない…そんな予感。
でも気持ちは土千です(苦笑)

部屋を暗くしてこういった話を書くと…背後が気になってしまうのは仕方がない…ですよね。
部屋は明るくして書こうと思います。

では右下からどうぞ。

 

 


「もうっ、お願いですから止めて下さいっ」

 そう言ったのは大きな籠を持った新選組副長の小姓である千鶴だ。
 籠の中には幹部隊士中心の洗物が沢山入っている。

「わ、私っまだこんなに洗濯物あるんですから、失礼しますっ」
「え~いいじゃない。洗濯しながらでも僕の話、聞けるでしょ」

 そう言って楽しそうに彼女の後からついてくるのは、新選組一番組組長沖田総司だ。
 彼女が屯所で共に暮らす様になってそろそろ2年。 
 初めは殺した方が良いだの、自分が斬っちゃうだの言っては千鶴を牽制していた彼も最近は良く千鶴を構っている。

 否…からかって楽しんでいる様だ。

 朝方まで降っていた雨が嘘の様に上がり、夏の青い空が広がっている。
 外でする洗濯などの仕事は暑さが増す前に終わらせた方がいいのだが、どうもそれを分かってくれない沖田に千鶴は心底手を焼いていた。
 しかも、千鶴の苦手とするもののおまけ付きだ。

「私っ沖田さんのお話…もうこれ以上聞きたくありません」
「何で?」
「な…何でって」

 千鶴の言葉に沖田はニヤニヤ笑いながら、手に持っていた一冊の本の角で自分の唇を叩く。
 綺麗に綴じられている深い緑色の表紙のそれは最近手に入れたものらしく、ここ数日は特に頻繁に耳元で読み聞かせるように語ってくるのだ。
 正直、千鶴にとって迷惑以外の何物でもないそれは沖田にとっては最高の娯楽らしい。

「私そういうお話にが」
「苦手なんて言ってられないよねぇ?新選組にいるんだからさ、こういった事にも免疫付けといた方がいいと思うよ」
「かっ関係ないと思いますっっ!!」
「そう?だって僕達沢山殺してきたんだよ。これからも言われれば斬るし」
「で…でも…」
「いつ遭遇するか分からないなら最初からその心構えを作ればいいと思うんだよね」
「それは………そうかもしれませんけど……」
「だ・か・ら」

 にやりと口角を上げた沖田はその本をぱさりと広げ、

「僕が手伝ってあげるよ」

 そう言うと本の中に綴られた物語を読み始めた。

「その屋敷の庭には大きな井戸があった」
「あ…あの?」
「数年前その屋敷で働いていた女中の死体がその井戸から引き上げれれた時から恐怖の夜が」
「ふえぇぇっ!もっもう嫌ですってばぁ!!」

 沖田が最近千鶴に読み聞かせている物。

「夜な夜な聞こえてくる女の泣き声」
「沖田さん勘弁してくださいっっ」
「毎夜うなされる屋敷の主の首元に浮かび上がる小さな指の痕」
「おきっ沖田さぁんっ!」
「ほらほら、ちゃんと聞いてよ。これは結構怖いんだよね」
「私っそういうお話が一番苦手なんですっっ!」

 そう。
 逃げ回る千鶴に沖田が読み聞かせているのは、暑い夏にはどこでも出回る怪談物語。
 怖がって涙目になる千鶴が実は可愛いと思っている苛めっ子体質の沖田は、物凄く性質が悪い。
 更に読もうとしている沖田から逃げるため千鶴が洗濯籠を抱きしめて走り出した時。
 丁度廊下の角を曲がりこちらに歩いてきていた人物とぶつかってしまった。

「うおっと」

 ぶつかった拍子に思わず後ろにこけそうになった千鶴を手を伸ばして支えたのは、

「大丈夫か千鶴」
「は…原田さんっ」
「どっかいてぇとこないか?」

 新選組十番組組長原田左之助で。

「何故この様な大荷物を持ったまま廊下を走っている。ぶつかったのが左之でなければ、大怪我をしていたやも知れんぞ」
「斎藤さん…すみません」

 原田の後ろから姿を見せたのは昨夜夜番だった斎藤だ。
 
「原田さんも、すみませんでした。お怪我されていませんか?」

 斎藤の言葉にしゅんと項垂れた千鶴が、上目遣いに尋ねて来る。
 その姿に原田は少し目を見開き、

(まるで叱られた仔犬、だな。耳が後ろに垂れてるみてぇに見える)

 ぽんぽんとその頭を撫でる。
 この場で叱るのはもう自分の役目ではない。
 ならば慰めてやる事が己の仕事だと、原田は更に千鶴の頭を撫でた。
 
「大丈夫だ。心配ねぇよ。それよりどうしたんだよ。その涙目はこれの所為じゃねぇだろ」
「そっそれは…その」
「ふふっ、お帰りなさい左之さんそれに一君も。土方さんへの報告は済んだみたいだね」

 それまで静観していた沖田が二人に声をかけながら千鶴の横に並んだ。

「ったく、まぁたお前か総司。千鶴を苛めるんじゃねぇって言ってんだろうが」
「え~。酷いなぁ、僕は何もしていないよ」
「ならば手に持っているのは何だ?」
「豊玉さんの発句集じゃないから安心して?」
「総司」
「それよりも、聞いたよ一君。昨日大変だったんだって?」
「話を変えるな」
「凄かったんだって?廃神社の中。面倒なの嫌だから僕じゃなくて本当に良かったよ。で?明るくなって見て来たんでしょ?」

 どうだった、と強引に話を変える沖田に呆れた視線を向けながらも斎藤は大きな溜め息を吐き、語りだした。

「追いかけていた不逞浪士は7名。うち4名はその場で討ち取ったが残りの3名が逃げてしまった故、捜索していた」
「うん。その辺は土方さんが近藤さんに話している時に一緒に聞いたよ。追い詰めた廃神社の中にそいつ等の死体があったってとこも」

 僕が聞きたいのはその後だよ、と沖田は言う。
 だがそんな沖田と違って今こそ彼から逃げ出す好機と踏んだ千鶴が、

「私お洗濯がありますので失礼します」

 そう言って立ち去りかけた。

「だーめ。逃がさないよ」
「いえ、あのその、お仕事のお話でしたら私は聞かない方が」
「別に良いよね」

 沖田に同意を求められた斎藤は小さく首を傾げ、

「別にあんたなら構わん」

 そう言った後頷いた。

(うわぁぁぁん!お願いですからそこは構って下さい~)

 本気で泣きそう、と千鶴は隣りに立つ沖田を睨み上げれば面白そうにそれを見下ろす沖田と目が合った。
 逃げられそうにも無いその状況に、千鶴は僅かながらにも抗議の姿勢とばかりにその頬を膨らませる。

(ほーんと表情がコロコロ変わるよねぇ。僕の事睨んでるつもりかもしれないけど…って言うかほっぺた突きたいなぁ)
(ったく、総司の野郎心底楽しんでんな。でも…総司の気持ち分かるんだっつったら千鶴に嫌われっかもな)
(何か怒っているのか?…今更千鶴を疑う者は居るまいと思ったが故に、この場にいる事を反対しなかったのだが)

 三者三様、心の中で思いながら妹の様に可愛がっている彼女を見下ろした。

「え?…あの…?」

 突然3人の無言の視線を受けた千鶴は膨らませていた頬を引っ込める。
 まあこのまま見詰め合っていても仕方がないと、

「……で?」

 沖田が話の続きを促す。

「…ああ、昨夜は暗かった故中をしっかり確認出来ず、先程左之と共に再度確認に行って来た」
「ひでぇもんだったぜ?」

 そう言った原田が顔を顰める。

「廃神社ってだけあって今にも崩れそうな拝殿の中にぎっしりと人骨やらなんやら、な」
「尋常な数ではなかった。呪われるという噂があった所為か、近くの村人も近付いていなかったらしい」
「けどよ、何が不自然って、アレだろ?」
「あれ?」

 普通にふんふんと聞いている沖田と違って、千鶴は耳を塞いで蹲ってしまいたかった。
 先程まで…実は今朝の起床は沖田の怪談話から始まったのだから、想像が嫌な方に豊かになってしまっていたのだ。

「俺達が追っていた浪士が中で死んでいた」
「それが何?」

 首を傾げる沖田にもう嫌だとばかりに洗濯物の上に顔を伏せる千鶴。
 夏場の男達の洗濯物は、体臭がしっかりと残りやすい。
 つまり、臭い。
 それでもそんな事は構っていられない程千鶴は逃げ出したかった。
 だが話している3人はそれに気付いてやれなかった。

「干乾びてたんだよ」
「はぁ?どういう事です?」
「だからよ。なんつーか、体中の水分がないって言うか…そんな感じだったな」
「傷痕は殆ど見受けられなかったのだが、血の臭いが全くしなかった」
「……真っ暗だったから見間違ったとかじゃないわけ?」
「先導していた男の顔には大きな傷があった。そんな特徴を俺は見間違えたとは思わん」
「ふ~ん。………まさか、あの子達とか?」

 沖田が声を潜めて言ったあの子達、とは変若水を飲んで『羅刹』へと身を窶した者達の事だ。
 が、原田も斎藤も揃って首を横に振った。

「もしあいつ等が襲ったとしても…あそこまで干乾びたりしねぇだろうってくらい酷かったんだよ」
「じゃあ本当に、呪い?」
「俺はあまりそう言った話は詳しくない。だが、異様であった事は間違いないのだ。それに…」
「それに?」
「俺達は、あの拝殿の中に人の姿を見た。だが…次に稲光で中が見えた時にはその姿はなかったのだ」
「…一君、幽霊でも」


 ガターンッッ


 見たんじゃないの?と沖田が言いかけた時、突然足元で大きな音がした。
 何だ?と三人が視線を下ろすとそこには先程まで千鶴がしっかりと持っていたはずの洗濯籠が落ちており、その落ちた衝撃で洗濯物が散らばっていた。

「ふっ…ううぅっっ」

 洗濯籠の側には千鶴が耳を塞ぐ…というより頭ごと抱え込んだ状態で屈みこんでいた。

「ち、千鶴?」
「あ…本気で君の事忘れてた」
「具合でも悪いのではないのか?」
「ああ違う違う」

 千鶴の体調を心配しかけた斎藤に沖田が手をひらひらと振って否定をする。

「千鶴ちゃん、怪談みたいな怖い話嫌いなんだって」
「あ…あ~わりぃ。そうだよな、こんな話千鶴にゃきついな」
「総司、知っていたのなら何故止めなかった」
「だって知らないより知っていた方が怖くないでしょ」
「そういう問題じゃねぇだろうが。あ~ほら千鶴ここは寺だし、もしなんか出たとしても大丈夫だって。な?」
「そーそー。それにうちには物の怪の大将みたいなのがいるじゃない」

 屈み込んだままの千鶴に沖田が楽しげに言う。

「新選組の鬼副長が。鬼に敵う物の怪はいないんじゃないかなぁ?」
「総司いい加減にしろ」
「だな。もうこれ以上怖がらせるのは止めろ」
「そんなつもりなかったんだけど?」

 先程まで怪談物語を読んで聞かせていた男が飄々と言った時。

「おめぇはいつもやり過ぎなんだよ」

 そう言いながら眉間に皺を寄せた土方が斎藤達の出てきた角から姿を見せた。

「あ、鬼が出た」
「総司」
「つまんないの」
「はぁ、ったくよ。餓鬼が餓鬼をいじめて楽しんでんじゃねぇ」

 盛大な溜め息と共に土方が言い、屈み込んだ千鶴を見下ろす。
 千鶴に何か声をかけようとしたのだろう土方が彼女に手を伸ばしかけた時。
 それよりも早く沖田が千鶴の横に屈み、ぼそりと耳打ちする。

「お化けが出た」
「ひっ!」

 低い声で言われた言葉に千鶴は驚きがばりと顔を上げる。
 顔を上げた視線の先にはこちらに手を差し出している土方の姿があった。

「総司いい加減にしねぇかっっ!」

 千鶴をからかって楽しむ沖田に土方の怒声がかけられる。
 それには堪える様子もなく沖田はべっと舌を出す。
 その行動に更に声を荒げかけた土方を怯えた目でじっと見詰めていた千鶴の脳裏に、沖田が先程言っていた言葉が思い出された。


【鬼に敵う物の怪はいないんじゃないかなぁ?】


 土方を見つめる千鶴の瞳には見る見る涙が堪りだす。
 沖田の行動に土方が怒鳴るよりも早く、千鶴は差し出されたままの手をぎゅっと握り勢い良く立ち上がる。
 そしてそのまま、突然の千鶴の行動に驚く土方の胸の中へ飛び込んだ。

「千鶴?」
「うわぁぁぁんっ!もうっもうもうもうもうっ!嫌なんですーーーっっ!!」
「お、おい!」

 土方が引き離そうとすれば嫌々とばかりに首を横に振って千鶴はますます土方にしがみ付く。

「もういやぁーーーっ」

 終いにはとうとう泣き出してしまった千鶴にどうする事も出来ず、その背中をトントンと叩いてやるしかなかった。

「苛め過ぎなんだよお前は。ちったぁ加減を覚えやがれ」
「加減を覚えたら遊んでいいんですね」
「良くねぇに決まってんだろーがっっ!!」
「まあいいんじゃないですか?鬼の腕の中って言う一番安全な場所見つけたんですから。ねぇ千鶴ちゃん?」
「総司っ!」
「はいはい、僕は退散しますよ」

 そう言った沖田が立ち去り際に、

「あ、この本いる?」

 とずっと持ったままの怪談物語の本を千鶴に差し出すと、

「いっ要りませんっっ!!」

 ますます土方にしがみ付いてしまった。

「いい加減にしやがれっっ!」
 
 あはは、と笑いながら沖田は自分の部屋へと戻っていった。
 その様子を呆れながら見送った原田と斎藤も千鶴の事は土方に任せ、散らばった洗濯物を集める。
 
 暫くして。
 
 何とか落ち着きを取り戻した千鶴は、原田と共に洗濯場となっている中庭へと向かっていった。

 


 その時までは冗談で済んでいた。
 しかし、その日の夜。

 事態は……急変する。

 


続く

 

 

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