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【変わるもの】のその後、です。
土千メインと思っていたら斎藤さんの方が一歩前進しました。

しかも、何気に長い。

書いていて途中から楽しくなってしまいました。
ほのぼのです。

右下からどうぞ。






「………ふう」

 巡察を終えた斎藤は土方の下へその報告をしに来ていた。
 取り立てて何かあったわけでもないので、たいした会話もない。
 長州の動きも最近は大人しいもので、土方の方からも特に仕事の事で話があるわけでもなかった。
 が、斎藤は少し下を向いたまま動こうとしない。
 それを不自然に思った土方が眉間に少しだけシワを寄せて呼びかけた。

「斎藤…?」
「はい、副長」

 返事はいつも通りすぐに返ってくる。

「ぼーっとして、どうした」
「俺が…ですか?」
「……溜め息、吐いてたじゃねぇか」
「………」
「ったく、らしくねぇな。疲れてんのか?」

 溜め息を吐いた事は自覚していないらしい。

「特に疲れてなど」
「ふぅん、なら良いんだがよ。ま、今日のとこは頼みたい仕事も入ってねぇしゆっくり休んでおけ」
「いえ」
「馬鹿野郎、疲れってぇのは知らないうちに溜まるもんだ」
「……そうでしょうか」
「これは副長命令だ。今日はもう屯所内で大人しくしてろ。ほら、下がって良いぞ」
「……御意に。では、失礼致します」

 一度深く頭を下げると、斎藤は土方の部屋を後にした。

「珍しい事もあるもんだ。…雪が降るんじゃねぇだろうなぁ?」

 

 土方の呟きが届かない所まで進んでいた斎藤は、袂の重みを思い出して立ち止まる。
 探って、先程買い求めた品を取り出すと、どうしたものかとそれを見つめる。
 隊士達の前で、ある意味失態を見せてしまった。
 巡察の途中、京菓子屋の前で楽しげに買い物をしていた年頃の娘達。
 彼女達を見た時、自分にとって今一番近くにいる女子の姿が重なった。
 本来ならば、あのように鮮やかな着物を着て、同じ年頃の娘達と楽しく過ごしているはずの千鶴。
 しかし、新選組と関わってしまった所為で、男装を余儀なくされていた。
 嫌な顔をせず、最近は屯所内の雑用を引き受けてくれている。

(礼を言えば…恐縮してしまうだろう)

 だったら何か贈るか?
 そう思った時には店の前まで進んでいた。
 色取り取りの見た目にも綺麗なそれら。
 女子というのはこういった物を好みそうだから、きっと彼女も喜んでくれるのでは。


 そう思って、買ったものの。
 いつ渡せば良いのだろうか。
 白い紙で可愛らしく包まれた物を見ながら、無意識のうちに息を吐く。
 今まで女子に贈り物をした事など一度もない。

(いつまでも持ち歩くわけにはいかんだろうが)

 最初に贈り物をするのが千鶴である事は、何故だか嬉しい。
 しかし気恥ずかしいのも事実。
 とにかく一度自室に戻うと歩き始める。
 目の前の角を曲がり庭に面した廊下に出たその時。

「ん~~~、ふぁぁああ…」

 聞きなれた声が聞こえてきた。
 視線を動かせば、今は使用していないはずの部屋の障子戸が開いている。

「総司、いるの…か?」

 その部屋の前まで進み中を覗くと、仰向けになった状態の先程の声の主と目が合った。

「おっかえり~一君。巡察お疲れ様」
「一君じゃん、お疲れ~」

 部屋の中には沖田だけではなく、藤堂ともう一人、

「斎藤さん、隊務お疲れ様です」

 笑顔で迎えてくれる、千鶴がいた。
 彼女の周りには今日も沢山の洗濯物が山積みになっている。
 藤堂の手にも洗濯物が握られている所を見ると、手伝いをしていたのだろう。
 しかし、沖田はただ寝転がっているだけの様に見える。
 見えるというか、事実そうなのだろう。

「洗濯物を、畳んでいたのか」
「はい。今日はとても良いお天気ですから、朝干した物がもう乾いてて」
「そうか。それで総司、お前は何をしている」
「千鶴ちゃん待ち」
「雪村待ち?」
「そっ。この間隊服を引っ掛けて破いちゃってさ。それを繕って貰おうかなと思ってね」

 沖田が指し示す方を見れば、確かに部屋の端に隊服が置いてある。

「それくらい自分でやれ。一々雪村の手を煩わせるな」
「え~。でもこの屯所内で裁縫がうまいのって一君と千鶴ちゃんだし」
「…だからなんだ」
「頼むんだったら、折角だし女の子が良いじゃない」
「自分でやれ」
「やーだ。それに洗濯物が畳み終わったらしてくれるって、もう約束したんだよ」
「だったらお前も手伝えは良いだろう」
「僕が畳むと端が揃ってないって怒るの一君でしょ」
「分かっているのなら気をつければ良いだろう」

 全く、ああ言えばこう言う。
 のらりくらりと逃げるのが得意な男だ。

「良いって、一君。千鶴の手伝いは元々俺が一人で始めてたんだ。そこに総司が来ただけ」
「平助は非番だったな」
「うん」
「僕は夜の巡察。だから体力温存~」
「温存しなくてもこなせる体力はあるだろう」
「も~厳しいなぁ一君は。土方さんみたいだよ」
「そうか」
「や、褒めてないし」

 土方に似ていると言われて満更でもない表情をした斎藤に、沖田がすかさず突っ込む。
 その様子を見て、くすくすと千鶴が笑い出した。

「本当に、仲がよろしいんですね」
「今のを仲が良いって言うのかよ千鶴」
「ふふっ。あの、斎藤さん」
「なんだ」
「本当に大丈夫です。私、お洗濯物畳むの好きなんです。こうして畳んでいるとお日様の匂いに包まれて気持ちが良いですし」
「総司を甘やかす必要はないのだぞ」
「はーじーめーくーん」
「それに、早く乾いたからまだ夕餉の支度まで時間もありますし、余裕です」

 千鶴はにっこりと笑う。
 それに、そうかと斎藤が表情を緩めて答えた。

(一君が笑った)
(千鶴ちゃんに釣られて一君が笑うなんて)

((めっずらし~))

 沖田と藤堂がそう思っていることなど気付く事もなく。
 斎藤もその部屋の中に入ると千鶴の正面に正座した。

「俺も手伝おう。この後はさして用事もない」
「よろしいんですか?」
「ああ。平助、手が止まっている」
「んあ?…よしっ、じゃあさっさと終わらせようぜ」

 洗濯物の山に手を伸ばし、バサッとそれを振った時。
 カシャンと袂の中身のあれが音を鳴らした。
 先程までいつ渡そうかと悩んでいたくせに、すっかりその存在が頭の中から消えていた。

「?」

 その音は千鶴にも聞こえたらしく、小さく首を傾げている。
 斎藤は丁度良いとばかりに袂からそれを取り出し、すっと千鶴に差し出した。

「え?」
「巡察の途中で、買った。あんたに土産だ」
「私に、ですか?」
「ああ」

 持っていた手拭いを膝の上に下ろし、両手で千鶴はそれを受け取った。

((は…一君がお土産??巡察の途中に!?))

 ありがとうございますと、嬉しそうに笑う千鶴。
 その笑顔に、喜んでもらえたのだと、斎藤が優しく微笑んだ。
 それを見た藤堂は畳みかけの手拭を落とし、沖田は思わず起き上がる。

((雪が降る!?))

 先程から沖田と藤堂の心の声は息がぴったりだ。

「開けても良いですか?」
「ああ、もちろん」
「……うわぁ、綺麗」

 紙の上部を結んでいた紐を解くと、中から硝子細工のような飴玉が出てきた。

「手毬飴…というらしい」
「本当に綺麗です、キラキラしてる」
「千鶴、見せて見せて」
「僕にも見せて」
「はい、綺麗ですよ」

 沖田達が手元を覗き込む。

「ねぇ一君。僕も1つ貰って良い?」
「雪村にやったものだ。雪村に聞け」
「千鶴ちゃん、あーん」

 頂戴と言わず、ただ口を大きく開ける沖田に千鶴は苦笑しながら飴玉を1つ、コロンと入れてやる。

「ありがとう。あ、美味しい」
「ずりーぞ総司、千鶴俺も1個~」
「はい、平助君も口開けて…はい」
「ありがと千鶴。あ、マジでうめぇ!」
「雪村にやったというのに、何故お前達が先に食べる」
「まま、良いじゃん。一君も貰いなよ。美味いよ」
「一君が買ってきたんだし、一君もどんな味か気になるでしょ」
「千鶴、一君にも」
「一君あーんしてもらいなよ」
「いや、俺は」
「あ~一君照れてる?」
「あーんくらい良いじゃん、一君」
「て……照れてなど」
「だったら、ほら千鶴ちゃん一君にも」
「ほ~らほら一君も口開けて」

 楽しげな二人に押し切られる様に、斎藤は観念して口を少し開けた。
 千鶴がくすくす笑いながら飴玉を1つ掴むと、斎藤の口元にそれを運ぶ。
 そして、

「はい、一さん」

 飴玉が口に届く前に斎藤と千鶴の両名は…固まった。

((は…はじめさん~~~!?))

 流石の沖田も固まり、思わずガリンっと飴玉を噛み砕く。

「んぐっっ」

 藤堂は大きいままの飴玉を飲み込んでしまったらしく、慌てて部屋を出て行った。
 勝手場に向かったと思われる。

「あ…あ、あのっ。お…沖田さん達がお名前で呼ばれてっ…」
「あ……ああ」
「す、すみませんっ!……釣られちゃいましたっっ」
「あ…ああ」

 千鶴も斎藤も顔が真っ赤だ。
 沖田はなんとなく居心地が悪くなり、

「隊服、急ぎじゃないから…宜しく~」

 そう言い、千鶴の手元の紙の中からもう1つ飴玉を失敬して部屋を出て行った。
 ゴホンと斎藤は咳払いをする。

「と、取り敢えず、それは貰おう」
「あ…はい、どうぞ」

 斎藤は手を差し出しそれを受け取ろうとしたのだが、千鶴はそのまま彼の口元に運び…。
 思わず斎藤も口をあけてしまった。
 飴玉を入れられ、慌てて口を閉ざした時に、千鶴の細い指が唇に触れた。

「あ!」
「っ!」
「す、すみません」

 千鶴は慌てて謝り、そして照れ隠しの様に自分も飴玉を摘み口の中に放る。

「美味しいです」

 そう言って笑った千鶴に斎藤も笑い返そうとしたのだが。
 千鶴が直後に取った行動に対し、もう駄目だとばかりに口元を手で覆い隠し、横を向いてしまった。

「斎藤さん?」

 何だろう?
 また何かしたっけ?
 と、目の前の彼を見つめながら考える。
 耳まで紅くなっている斎藤なんて、新選組の者達だって見た事がないのではないだろうか。
 首を傾げながら、飴玉を摘んでいた為にべた付いていた指先を再度舐める。
 そう、再度。

(お行儀が悪い…とかじゃないよ、ね……?あれ…)

 そう言えばさっき。

(斎藤さんに飴玉を差し上げた時……唇に…)

 思い出した時にはすでに遅く。
 千鶴までも真っ赤になって俯いてしまった。

 


 その後。
 千鶴に茶を頼もうと、その部屋に訪れた土方に声をかけられるまで。
 二人は固まっていたとか。

 


終わり

 

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