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土方さんに引き続き、屯所内でのお話を。
沖田君は動かし易い様で動かし難い…と思いました。

今回の内容、実は土方さんで書きたいと思っていたのですが、ED後ならともかく、屯所内ではまず無理か…と諦めて沖田君へパス。
パスといえば、小説内に横文字が入るのはやっぱり避けようと思っていても中々それに当てはまる日本語が思い浮かばない(涙)

日本人なのにな…。


小説は右下の方からどうぞ。
 






「ねぇ、千鶴ちゃん」

 執務中の土方にお茶を運んだ帰りの、中庭に面した廊下。
 突然、何の予告もなく後ろから抱きつかれ、耳元で楽しげな声がする。
 少し前の自分だったらきっと叫び声を上げていたに違いない。

「千鶴ちゃんってば」

 慣れって恐ろしいな、と軽く息を吐く。
 男の人に抱きつかれて動じなくなってきている自分。
 まぁ、この新選組の屯所で千鶴にそんな事をしてくる人物は限られているのだが。

「ち・づ・る・ちゃん」

 自分の名前をはっきりと区切りながら呼ばれた時点で、返事をしていなかった事に気付いたが少し遅かった。
 右の目尻に暖かいものが触れて、チュッと音を残して離れる。
 一瞬何が起きたか分からなかった。
 僅かな間を置いて我に返ると、出てきたのは名前を呼ばれた事に対しての返事ではなく、

「ひゃあああっ!」

 叫び声だった。
 バタバタと暴れてそこから離れようとしたが、全く持って拘束が解けない。

「僕を無視するなんて、ずいぶんと図太くなったね」

 千鶴を拘束している人物が、拗ねた様な声色で言う。

「なっなっなっ」
「ふふっ、どうしたの?口があるんだからちゃんと言葉を紡ごうよ。それとも、何?本当は口にされたかった?」
「おっ」
「うん?」
「沖田さんっっ!」
「うん」
「何するんですかっっ!!」
「目尻に口付け」
「さらっと言わないで下さい!」
「え~、じゃあ千鶴ちゃんが構ってくれないから気を引きたくてした口付け」
「もうっ沖田さん!」
「別に嘘じゃないし」

 そういうと、沖田はそっと彼女を解放する。
 少し頬を膨らませた状態で千鶴は振り返り、今まで後ろから抱き付いてきていた彼を見上げた。
 怒った様な、戸惑っている様な、それでいて相手を射抜くような真っ直ぐな瞳。
 相変わらず澄んだな瞳だなぁと思う。

(涙なんか溜められると、理性が危なくなるんだよな…上目遣いだし)

 そんな瞳を見る度にそう思いつつも、やっぱり見たくてからかいたくなる。

「今日は身体の調子が良いんだ」

 だから構って?と屈託なく笑う表情は沖田らしいそれで。
 不治の病に侵されている事など微塵も感じさせない。

「お薬は飲まれましたか?」
「飲みました」
「お食事は摂られましたか?」
「…入るだけ」
「今の間は何ですか」
「……食欲ないんだもん。入る時は食べてるって」

 千鶴の心配げな表情に沖田は困ったように首を傾げる。

「そんな目で僕を見ていたら、他の皆に怪しまれちゃうんだけど」
「でも…」

 困ったねぇ、と腰を屈めて沖田が千鶴に顔を近付ける。
 ビクリと身体を震わせた千鶴に、

「いい加減にしないと本当に唇貰っちゃうよ?」

 少し低めの声で告げる。

「かっからかわないで下さい!」
「あれ、以前の君なら固まる所なのに?」
「沖田さん!」
「はいはい、ごめんなさい」
「もう…」

 固まる事は無かったものの、ほんのりと彼女の頬が紅い。
 思わず、可愛いなぁなんて思ってしまうが口には出さなかった。
 言えばまたからかっていると思われてしまうだろうから。

「沖田さん」
「なに?」
「いえ、沖田さん何か私に御用事があったんじゃないんですか?」
「ううん、別に」

 本当にこれといって用事はなかった。
 ただそこに千鶴がいたから近付いただけで。

「あ~、ねぇ千鶴ちゃん」
「はい?」
「用事思い付いた」
「用事って…思い付くものなのですか…?」

 千鶴はなんとなく嫌な予感がして、半歩後ろに足を滑らせた。

「甘えさせて?」
「…………はい?」
「やったぁ」

 にんまりと笑うその表情はいたずらっ子のもの。
 千鶴は慌てて顔の前で両手をパタパタと振る。

「今のは了承したものじゃないですよ!」
「だ~って、はいって言ったじゃない」
「言いましたけど、言ってません!」
「駄目」
「何が駄目なんですかぁ!遊んでないで、もうお部屋で休まれてください」
「嫌」
「……沖田さっ……………沖田さん?」

 ふわりとした風が千鶴を包む。
 それが正面から沖田に抱きしめられたのだと気付くまで、少し時間を要した。
 抱きしめられ方が、なんだかいつもと違う。
 そんな気がして、抗い難い。

「どう…しました?苦しいんですか?」

 千鶴の問いかけに、沖田は答えない。

「沖田さん」

 返事がないと段々不安になってくる。

「おき」
「千鶴ちゃん」

 囁く様な声が、耳に届く。

「甘えさせて」
「……具体的に私に何をさせたいんですか?」

 甘えさせてと言うその声色にからかうような感じがしないので、千鶴は沖田の返答を大人しく彼の腕の中で待つ。
 トクトクと沖田の胸を打つ振動。
 確かに動いている。
 彼の病気を知る千鶴にとって、その音はほっとするものでもあり、反対に切なくさせるものでもある。


 いつか…止まってしまうのだろうか…。
 その時、私は彼の側にいるのだろうか…?


 そう考えた時、なぜか頬が熱くなり出した。

(沖田さんの側にいたいなんて…そんな風に思ってるの私?)

 切なさに占められかけていた思考が、ころりと変わっていく。

「…そうだな、ああ、あれがいい」
「は、はい?」
「どうしたの、千鶴ちゃん」
「な、何がですか?」
「顔が赤いよ?熟れたトマトみたい」
「ふええぇぇ!?」
「なんて声出してるの」

 怪訝そうに顔をしかめ、沖田は自分の腕の中の千鶴を見下ろす。

「あっ熱かったんです!沖田さん熱があるんじゃっ」
「無いよ」
「あの、いえ…ですからね?」
「千鶴ちゃん、変な子になってるよ」
「…スミマセン」
「何で謝るの。ますます変な子だね」
「それで、あれって何ですか?」

 これ以上変な子呼ばわりをされるのも悲しいので、沖田の思いついた用事を尋ねてみる。

「千鶴ちゃん」
「は…い?」
「そんなに警戒しないでよ、傷付くなぁ」
「すみません」
「ま、いいや。ね、膝枕して」
「ひ…ざまくら?」
「うん」
「ここで…ですか?」
「お天気いいし、そうだねここが良いな」

 そう言って千鶴の両肩を下に向けて押さえ、そのまま廊下に座らせる。
 きちんと座った事を確認すると、自分はごろりと横になり、千鶴の膝の上に頭を乗せた。

「羽織か何かお持ちしましょうか?」
「暖かいし、いらない」

 沖田がそう言って目を閉じてしまうと、千鶴もそれ以上は何も言わなかった。
 多分何を言ってもこれ以上状態は変わらないだろう。
 暫くはじっとしていたが、無意識のうちに右手が沖田の身体をぽんぽんと叩き始める。
 それは彼を起こすものではなく、まるで幼子をあやすような仕草。
 まどろみ始めていた沖田はそれで覚醒しかけたが、一定間隔の刺激が思った以上に心地よかったので目を開けることは無く、そのまま睡魔に身を任せる事にした。

(君の真っ直ぐに前を見据える瞳…)

 はっきりしない意識の中で、ぼんやりと思う。

(そんな瞳に実は憧れてるって……言ったら…)

 なんて思うんだろう、そんな言葉が浮かぶ前に。
 沖田の意識は心地の良い空気の中に消えていった。

 


終わり

 

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